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4月29日(8) 「ごめんなさい、悪気はなかったんです」巻*7万PV達成記念短編

後日談というのは名ばかりの蛇足話。

 気絶した変態さんは、今度警察に捕まった。

 駆けつけた寮長の弟さんに連行させる変態さんを見送った俺は、ようやく厄介事から解放された事を悟る。

 ちなみに啓太郎も鎌娘も連行された。

 全裸だったので。

 面倒臭かったので、俺は特に彼等のフォローをしなかった。

 パトカーを見送った後、俺達は再びプールを利用した。

 その結果、美鈴と美波はクロール・平泳ぎ・バタフライを習得する事に成功した。

 俺はというと、潜水や犬かきさえできない身体になってしまった。


「あー、変に疲れた」


 何度も溺死しかけて、訳の分からない騒動に巻き込まれ、挙げ句の果てには自分よりも小さい子どもに先を越されて。

 本当、今日はアンラッキーデーだ。

 そう思いながら、俺は自分のロッカーを探す。

 が、どこにも見当たらなかった。


「なあ、四季咲。俺のロッカー、どこだっけ?」


 隣で着替えていた四季咲に疑問を呈する。

 彼女はビキニトップスを脱ぎながら、俺の質問に答えてくれた。


「記憶にないな。多分、私の近くじゃなか──」


「ん?どうした?四季咲?」


 突然、四季咲が黙り込んだので、俺は彼女の方を見る。

 彼女は上半身だけスッポンポンだった。

 ここが女子更衣室である事を即座に悟る。

 ヤベ、変に疲れていた所為で間違って女子更衣室に入っちまった。

 ……え、間違って女子更衣室って、そんな事あり得るん?

 幸か不幸か、現在、女子更衣室には俺と上半身だけスッポンポンの四季咲だけ。

 美鈴と美波が外にあるシャワーを浴びているのか、キャッキャ言っていた。

 四季咲は曝け出された胸を隠す事なく、女子更衣室にいる俺を驚いた様子で見続ける。

 そのまま、俺は四季咲の生乳を見続ける。

 不思議とエッチい気持ちになれなかった。

 深呼吸する。

 そして、俺は観念した様子で両手を挙げると、素直に謝罪の言葉を口にする事にした。


「お前、結構胸、あんのな (ごめんなさい、悪気はなかったんです)」


 しまった、本音と建前が逆転してしまった。

 俺の失言がきっかけで、四季咲は再びビキニトップスを着用すると、俺の方に近寄る。

 そして、俺に強烈なアイアンクローを喰らわせた。


「あ、すまん!ついお前の生乳が見えてしまって、つい素直な感想が……!これは意図的なものじゃなくて事故だから!あ、ちょっ、無言で俺を引っ張らないで!怖いから!ちょ、プールの方に連呼するのは、……!え!?俺をプールの中に投げ込もうとしてんの!?落ち着け!!俺が悪かった!!だから、話を聞いてくれ!話せば分かる!人は対話できる素晴らしい生き物だ……がぼぼぼぼぼ」


 俺は再び水の底に沈められた。


























「ってのが確か一昨日の話だっけ」


 美鈴と共に()()()()()()()()桑原神社の境内で体操座りをしながら、俺は空を仰ぐ。

 空は厚い雲に覆われており、鉛色の空から()()が降り落ちる。


「いや、俺も女子更衣室に入る気はなかったんだよ。あの時は精神的に疲労しててさ。気がついたら女子更衣室にいたんだ、うん」


「お兄ちゃん、現実逃避している場合じゃないでしょう」


 先程立ち去った()()()()()()()から貰った白い着物で暖を取りながら、美鈴は雪が降り積もった世界を見渡す。


「早く()()()()に帰る方法を模索しないと、何も状況は進展しないよ」


「まあ、そうなんだけど……」


「とりあえず、今は啓太郎さんを探そう。あのフクロウの獣人さんが言っている事が本当なら、この世界にいる筈だし」


 そう言って、美鈴は羽織っている着物を引き摺りながら、前に向かって前進する。俺はその後に続いた。

 もう1度だけ空を仰ぐ。

 入道雲はどこにも見当たらない。

 すぐ側まで迫っていた夏の気配は綺麗さっぱりなくなっていた。


(そりゃそうか)

 

 白い息を吐き出しながら、先程出会ったフクロウの獣人の言葉を思い出す。


(ここはもう終わった世界なのだから)


 4月30日に滅亡した()()()()を見渡しながら、俺は複雑な気持ちに陥る。

 過ぎた時は戻らない。

 それと同じように俺達人間は、もしもの可能性なんて知る事はできない。

 にも関わらず、俺達は本来知る事ができない可能性を知ってしまった。

 4月4日に『神堕し』が成功した場合の可能性を知ってしまった。

 体外に排出された溜息が白く染まる。

 真っ白に染まる大地に足跡を残しながら、俺は桑原神社を後にした。


 ──4月31日。映画とか漫画とかフィクションの世界でしか見られない架空の日であるが、俺にとってただの現実でしかないある日の■。

 俺──神宮司と美鈴は永遠に夏を迎える事ができない世界に迷い込んでいた。

 


 ここまで読んでくれた方、過去にブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方に感謝の言葉を申し上げます。

 これにて7万PV記念短編は終了です。最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 4〜7万PV記念達成短編は本編と少し毛色が違う実験的な試みをさせて貰いましたが、8万PV記念達成短編以降のお話は本編みたいな雰囲気に戻ります。

 今までの記念短編のように本編でやり残した事をやっていきますのでお付き合いよろしくお願い致します。

 8万PV達成記念短編は7月上旬に投稿する予定です。

 具体的な日時が決まり次第、活動報告・Twitter(雑談垢:@norito8989・宣伝垢:@Yomogi89892)で告知致します。

 また、8万PV達成記念短編は現在毎日更新している『願望が叶うとしたら』と少しだけ繋がっているので、もしよろしければそちらの方も読んでくれると嬉しいです。

 これからも更新していきますので、最後までお付き合いよろしくお願い致します。

 

 

 

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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