4月29日(5)「あの……さっさとかかって来いよ」の巻*7万PV達成記念短編
「あの、すみません。調子に乗った事、2度と言わないんで手錠を外してください。お願い致します」
手錠をかけられて冷静になった俺は、啓太郎に懇願する。
彼は何も言わずに俺の手錠を外した。
……何かおかしい。
いつもなら小言の1つ2つ言う筈なのに。
今の彼は心ここに在らずというか何というか。
今は啓太郎の事を考えている暇はないと思った俺は四季咲に再度美鈴達を連れて逃げるようお願いしようとする。
彼女は俺のポコチンを見れなくて、安堵半分がっかり半分といった表情を浮かべて──
「私を変態扱いするな!」
「だから、心を病むなっ」
"エロい事は良い事なのになぁ"と思いながら、俺は彼女に話しかける。
「四季咲、大人しく美鈴達を安全な所に連れて行ってくれ。あいつの事はよく覚えていないけど、美鈴達の教育に悪い事だけは確かだから」
「あ、ああ、分かった」
そう言って、四季咲は顔を真っ赤にしたまま、美鈴達の下に向かう。
未だ事態を把握できていないのか、美鈴達はポカンとした表情で大人用のプールを見ていた。
それを見送った俺は、啓太郎に手錠を外して貰うようにお願いする。
そんな事を考えていると、野太い高笑いが辺り一面に木霊する。
案の定、変態マッチョメンおっぱい付きだった。
右の拳を握り締めながら、彼 (多分)の方を見る。
「ここで会ったのが100年目……あの時の雪辱を晴らしに来たわよ!」
「だってさ、鎌娘」
「いや、私、あんな変態と面識ないんだけど」
「だってよ、啓太郎」
「彼、君の方を見て言っているぞ」
啓太郎の言う通り、変態さんはプールの中に入ったまま、俺の方を睨んでいた。
「2週間前、貴方にやられた森羅林々浄瑠璃拳法継承者──なな……」
「ごめん、あんたの事、よく覚えていない」
変態さんの言葉を遮りながら、俺は後頭部を掻きつつ、欠伸を浮かべる。
「全裸の変態とは何度も喧嘩した事あるけど、みんな、顔も名前も覚えてねぇよ。そいつら相手に苦戦した思い出もないし」
「キイイイイイイイイイ!!!!」
変態さん、金切り声を上げる。
四季咲達の方を見る。
彼女達は更衣室に避難しようとしていた。
「けど、まあ、あんたが美鈴達の教育に悪い存在ってのは確かだ。──かかって来いよ、変態さん。瞬殺してやるから」
いつもの決め台詞を敢えて言う事なく、俺はやる気なさそうに呟く。
変態さんの身体から殺意は感じられない。
多分、俺と喧嘩する事が目的なんだろう。
……あまり暴力を振るう必要性を感じられないので、全然やる気になれなかった。
「その減らず口、2度と叩けない身体にしてやるわ!森羅林々浄瑠璃拳法12代目継承者名波菜々郎、来ませい……!!」
水の中で身構える変態さん。
俺はいつ来ても良いように右の拳を握り締める。
……が、幾ら待っても、変態さんはかかって来ない。
「あの……さっさとかかって来いよ」
プールの中に入れない俺は変態さんに催促する。
「攻と防の奥義──浄瑠璃三千世界を展開中なのよ。そっちこそ、かかって来なさい」
変態さんは動く気がなかった。
俺は右の拳を緩めると、隣にいた啓太郎の肩を叩く。
「じゃ、お巡りさん、後は頼んだ。あいつ、動く気ないらしいから」
そう言って、俺はこの場を後にした。
「お、おい!司!あれを僕に任せるのか!?」
「あいつ、動く気ないらしいし、大丈夫だろ。あとは鎌娘に任せろよ。多分、こいつでも勝てるだろ」
「はあ!?私にあんな変態の相手をさせるつもり!?すっごく嫌なんだけ……って、あんた、どこに行っている訳!?」
「更衣室。喉渇いたからジュース買って来る」
「コラ!逃げるな!待ちなさい!……いや、待てや!クソガキ!!」
呼び止める啓太郎・鎌娘・変態さんを無視して、俺は更衣室に戻る。
誰も俺の後を追いかけて来なかった。
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