4月29日(4) 変態さん再びの巻*7万PV達成記念短編
「とりあえず、バタ脚から始めようか」
「「はーい」」
俺と鎌娘は大人しく四季咲の言う通りにプールの縁を掴むと、バタ脚を始める。
強く蹴れば蹴る程、俺らの脚は沈んでしまった。
「力み過ぎだ、もう少し力を弱く……」
「んなの、できるかよ!頑張らないと沈んでしまうんだぞ!!」
「そうよ!そうよ!私達はね!常に抗い続けなくちゃ沈んでしまう身体なのよ!!」
「力を入れ過ぎたら逆に沈んでしまうと何度言ったら伝わるんだ?」
「無理なもんは無理!お前は知らないだろ!水の冷たさを!息ができなくなる苦しさを!!あれを味わったら、力を入れ過ぎるなとか言えなくなるからな!!」
「そうよそうよ!あんたみたいに泳げる奴には分からないでしょうね!泳げない者の苦しみは!!」
駄々を捏ねる俺達を見て、四季咲は呆れたのか、長い溜息を吐き出す。
「……とりあえず、今日は水に慣れる所から始めよう。泳ぎを教えるのは後日……」
「は?嫌なんだけど。今日中に泳げるようになりたいんだけど」
「それは無理だ」
「何で?あいつらは泳げてんのに」
そう言って、鎌娘は顎で美鈴達を指差す。
美鈴はバタフライで25メートルを踏破しようとしていた。
……数十分前まで犬かきしかできなかったにも関わらず、彼女はバタフライだけだなく、クロールもマスターしていた。
美波も美鈴程に飲み込みは早くないが、とうの昔にクロールをマスターしていた。
現在、彼女は小鳥遊弟にバタフライを教えて貰っている。
「美波さん、バタフライは両足で水を蹴るように……」
「こうですか?」
「そうそう、そんな感じ」
美波の手を引く小鳥遊弟を見た瞬間、俺と鎌娘は焦燥感に駆られる。
このままじゃ年上の威厳とやらを守れそうにない。
さっさとクロール・バタフライ・平泳ぎをマスターしなければ、"え?お兄ちゃん、まだ泳げないの?私、もう背泳ぎもできるんだけど"みたいな煽りを入れられ──
「いや、私、そんな煽りしないから!!」
「ナチュラルに心読んでんじゃねぇよ」
わざわざバタフライの練習を中断してまでツッコミの声を上げる美鈴。
鎌娘といい美鈴といい、元金郷教信者は人の心を読む術に長けているのだろうか。
「いや、考えている事が顔に出ているだけだと思うぞ」
「お前も心を読むんじゃねぇよ」
四季咲にも心を読まれた。
どうやら俺は自分が思っているよりも顔に出やすいらしい。
「こうなったら奥の手だ。鎌娘、泳ぐのは諦めて水上の上を走る方法を考えよう」
「う○こ男にしてはナイスアイデアね。いいわ、乗って上げるわ」
「なあ、頼む。大人しく王道を走ってくれないか?」
プールから上がる俺と鎌娘に呆れた声で語りかけながら、四季咲は顳顬を押さえる。
その時だった。
聞き慣れた声が聞こえてきたのは。
「見ないと思ったら、こんな所にいたのか、エリ」
声の主の方を見る。
そこには私服姿の啓太郎が立っていた。
「げ、啓太郎……」
「なんだ、司、君もいたのか」
「何でお前がここに……また仕事をサボってんのか?」
「今日は非番だ。今は彼女と共に知人を探している」
「知人?」
「……君が知らない人だ」
一瞬だけ間が空いた。
彼が嘘を吐いた事を理解する。
「あ、あと、ついでにこの辺りに出没する変態を捕まえに来た」
「変態ってどんな人だよ?」
「簡単に言ってしまうと、全裸のオカマだ」
「あー、何か、それ、どっかで聞いたような覚えあるんだけど……」
ちょっと前に何とか拳を習得した露出狂と会ったような会っていないような。
うーん、あまり印象に残らなかったので、よく思い出せない。
ただ四季咲達に見せたらいけない代物である事だけは理解している。
「どこで聞いたのか分からないが、現在僕らが追っている変態は現在も逃亡中だ。君達も気をつけた方が良い」
いつもと違って、啓太郎に余裕なんてものは見当たらなかった。
……何か隠している。
それも俺に知られたくない"何か"を。
「なあ、啓太郎、お前何か隠して──」
「ああああああああ!!!!」
俺が聞こうとした瞬間、鎌娘のアホみたいな叫び声が聞こえてきた。
「何を叫んで……なぁっ!」
四季咲の可愛らしい叫び声が聞こえて来る。
俺と啓太郎は釣られるように、彼女達が見ている方に視線を向けた。
彼女達が見ているガラスの天井。
そこに全裸の筋肉モリモリ変態マッチョメン (おっぱい付き)が張り付いていたのだ。
ポコチンの長さと太さを見て、俺は天井に張り付いている変態を思い出す。
「お前は……!えと……半年前に会った快盗23号……いや、1年前に出会ったロパン4世だっけ?いやいや、もしかしたら地元にいた100キロパイパイ……」
いかん、露出狂の変態と遭遇した経験があり過ぎて、上手く思い出せない。
あれ?俺、あいつとどこで会ったんだっけ?
「私よ!森羅林々浄瑠璃拳法の使い手──貴方の好敵手よ!!」
パリンと割れるガラス張りの天井。
全裸の変態はプロの飛び込み選手と見間違うくらい華麗なフォームで着水すると、大人用のプールの中に落っこちてしまう。
その隙に俺は四季咲に美鈴達──まだ変態の存在に気づいていないのかキョロキョロしている──と一緒に避難するようお願いする。
「四季咲、美鈴達を安全な所に連れて行ってくれ」
「あ……あ……あ……」
生まれて初めてポコチンを見たのか、彼女は両手で赤くなった顔を覆いながら、ポコチンを披露する奴の方をチラチラ見ていた。
「大丈夫だ、四季咲。俺の方があいつよりデカいから」
「何の報告だ!?」
四季咲は俺の方に視線を移すと、俺の顔と下半身を交互に見始める。
……どうやら、それなりに興味はあるらしい。
「い、いや!興味あるとか思っていない!君が変な事を言うから意識しているだけだ!!」
「土管尻女、そいつの言っている事は嘘よ。そいつはあのおっぱい付き変態マッチョメンよりもチ○コデカくないわ」
「は?デカいから?俺の膨張力甘く見んじゃねぇぞ」
「はっ、どうせエクスカリバー (笑)の方でしょ。水着越しでも分かるわ、あんたのは粗雑で情けないモノだって事は」
「なら、見せてやるよ!鉄アレイを持ち上げる事ができる俺のエクスカリバーをな!」
「猥褻物露出罪で逮捕する」
水着を脱ごうとした瞬間、啓太郎に手錠をかけられてしまった。
ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方に厚くお礼を申し上げます。
そして、新しくブクマしてくれた方、新しく評価ポイントを送ってくださった方にも厚くお礼を申し上げます。
本当にありがとうございます。
次の更新は6月21日月曜日12時頃に予定しております。
来週の更新で今月の更新は終了しますが、お付き合いよろしくお願い致します。




