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4月30日(5)神宮司と小鳥遊神奈子 *6万PV達成記念短編

 四季咲と小鳥遊は買ったばかりのメンコを勢い良く開封すると、それを力強く地面に叩きつけた。


「先に10枚裏返した方が勝ちで良いな?」


「ええ、良いわよ」


 俺はベンチに座りつつ、買ったばかりの駄菓子を食べながら、彼女達の勝負を見守る事にする。


「では、先ずは私からだ」


 そう言って、四季咲は手に持ったメンコを地面に叩きつける。

 が、彼女の拙い技術ではメンコは裏返らなかった。


「へたくそ!メンコはね、こうやるのよ!」


 そう言って、小鳥遊はメンコを地面に叩きつける。

 が、彼女の拙い投げ方ではメンコはひっくり返らなかった。


「これはかなり長引きそうだな」


 俺の一言にカチンとしたのか、四季咲と小鳥遊は同じタイミングで俺を睨みつける。

 どうやら、どっちも勝負に熱が入るタイプらしい。

 

(……何か似てんだよな、この2人)


 欠伸をしながら、中々メンコをひっくり返す事ができない彼女達の姿を眺める。


「ああ、もう!ひっくり返らないんだけど!?どうやったらひっくり返んの!?これ!!??」


「くっ……!手本さえあれば上手くやれるのに……!!」


「俺が手本見せてやるよ」


 そういや、子どもの頃、よく亡くなった恩師とメンコをやっていたな。

 そんな事を思い出しながら、俺は四季咲が持っていたメンコを奪い取る。

 そして、軽く地面に叩きつける事で落ちていたメンコを風圧でひっくり返した。


「なるほど。そうやってやるのか」


 一眼見ただけで要領を掴んだ四季咲は、俺の動きを1発でトレースすると、先程まで苦戦していたのが嘘だったかのように、メンコを裏返す事に成功する。

 

「さあ、次は君の番だ」


「くっ……!」


 小鳥遊は俺の動き(せいこうれい)を真似ようとする。

 が、四季咲程の器用さを持ち合わせていない彼女は、俺の動きをトレースする事ができず、1枚もひっくり返す事ができなかった。


「次は私の番だな」


 悔しそうに歯を食いしばる小鳥遊を眺めながら、四季咲は2枚一気にひっくり返す。

 ……って、あれ?メンコって先攻後攻あったっけ?


「これで残り7枚ひっくり返せば私の勝ちだ。──降参するなら今の内だぞ」


 連続でメンコをひっくり返したのがめちゃくちゃ嬉しいのか、四季咲はメチャクチャ調子に乗っていた。

 

「はっ!降参するなんて誰がするもんか!……でりゃあ!」


 小鳥遊の口から掛け声が出ると同時に、彼女を中心に嵐が巻き起こる。


「なんだ、これ……!?屁か!?」


「んな訳ないでしょうが!!本当、あんたってデリカシーないわね!!」


 小鳥遊の姿は少しだけ変わっていた。

 具体的にどのように変わっているかというと、彼女の頭にオオカミの耳が、そして、お尻にはオオカミの尻尾が生えていた。


「おいおい、どうしたんだよ、小鳥遊。オタク受けしそうな見た目になっちゃって。獣耳を生やした所で暴力系ヒロインのままじゃ、人気ヒロインになれないぞ」


「何の心配をしてんのよ、あんたは!?」


「ならば、神宮、私は人気ヒロインになれる器なのか?」


「ノーパン土管女は色物枠だな。ヒロインレースの舞台に立つ事さえできない」


「い、イロモノ……!?」


「ええい!本筋から逸れるからあんたは黙ってろ!待たせたわね、成金お嬢様!これが私の切り札よ!!」


 小鳥遊は力任せにメンコを地面に叩きつける。

 獣耳と尻尾を生やしたお陰で身体能力が急激に上昇したらしく、彼女は地面に落ちていたメンコを4枚ひっくり返す事に成功した。


「はっ!どんなもんよ!!」


「神宮!あれは反則じゃないのか!?」


「難しい所だな。俺もあれぐらいできるし」


「くっ……!かくなる上は!!」


 四季咲は悔しそうに指を鳴らすと、右掌に緑色の風を纏い始めた。


「お、おい、四季咲それって……」


「う、嘘……!?あんた、魔法使いな訳!?」


「そっちが先に人狼の力を使ったんだ!これでイーブンだろう!?」


 投げやり気味に叫ぶや否や、彼女は風の砲弾を地面にぶつける。

 風の砲弾──本家の鎌娘には劣る出来栄え──は地面に直撃した途端、爆ぜると、メンコを5〜6枚程、ひっくり返した。


「よし!」


「よしじゃないわよ!ねえ、審判!流石に魔法使うのは反則よね!?」


「魔法ではない、魔術だ」


「はあ!?あれ魔術!?それが本当なら、あんた、無詠唱かつ魔法陣使わずに魔術を使ったって事!?しかもあんな一瞬で……!あんた、"絶対善"とほぼ同レベル……いや、神十大魔導士級じゃん!!」


 どうやらさっきやった四季咲の魔術は凄い事らしい。

 "絶対善"を含めて、あまり魔法使いを凄いと思った事がない俺にとっては、あまり凄さがピンと来なかった。


「くっ……こうなったら……!」


 小鳥遊の鼻が犬みたいなマズルになる。

 制服の下の彼女の素肌は白い毛で覆われたかと思いきや、彼女の姿は人の形をした白銀のオオカミになってしまった。


「うお、今度はケモナーに媚び始めた」


「媚びてなんかないわよ!」


「でも、そんなレベルじゃ浅いケモナーしか釣れないぞ。せめて骨格もオオカミにしなきゃ」

 

「あんたはいい加減黙っとけ!!……成金お嬢様!待たせたわね!!これが私の奥の手よ!!」


 人型のオオカミと化した小鳥遊は、渾身の力でメンコを地面に叩きつける。

 その所為でちょっとしたソニックブームが起きた。

 近くにあった駄菓子屋の建物も周囲に生えていた木々の葉も小鳥遊の人外染みた力により大きく揺れてしまう。


「よしっ!勝った……!!」


「いや、まだだ……!」


 不敵な笑みを浮かべた四季咲が地面を指差す。

 小鳥遊が地面目掛けて叩きつけたメンコは宙に浮いていた。

 いや、よくよく見たら宙に浮いているのではなく、薄く発行している半透明なドーム状のガラス──ガラスは小鳥遊の放ったメンコによりヒビが入っていた──の上に乗っかっている。

 多分、これは四季咲が魔術で作った盾なのだろう。

 四季咲が頑張った甲斐もあって、地面に置かれているメンコは1枚足りとも裏返っていなかった。


「なっ……!防がれ……!?」


「切り札は最後の最後まで取っておくものだ」


 得意げな様子で四季咲はこの勝負の幕を下ろすべく、緑色の風を纏ったメンコを地面に投げつけようとする。


「させるかっ!」


 小鳥遊の背後から白銀の尾が飛び出す。

 彼女の尾はメンコに纏わり付いていた緑の風を瞬く間に剥がすと、四季咲が投げたメンコを弾き飛ばした。

 

「審判!あれは反則じゃないのか!!??あれは手で弾くのとそんなに変わらないのでは!?」


「だったら、あんたの魔術も反則よ!」


「君が先に人狼の力を使ったのだろう!?」


「自分の力を最大限に引き出して何が悪い!?」


「なら、私の魔術も自分の力を最大限に引き出した結果だ!!受け入れろ!!」


「だったら、私の尻尾を反則扱いしないでよ!!」


「それとこれとは話が違うだろ!?」


「何よ!?」


「なんだと!?」

 

 四季咲と小鳥遊は今にも殴りそうな勢いで睨み合う。

 水と油みたいな関係……いや、この言葉は適切じゃないと思う。

 水と油というよりも、どちらかと言えば──


「同族嫌悪?」


「な訳ないでしょ」/「な訳ないだろ」


「すげ、同じタイミングで同じ事言ってら」


「「言ってない」」


 今度は綺麗に声が揃った上、一言一句同じ事を告げていた。

 彼女達は不機嫌そうな顔をすると、睨み合いを更に苛烈なものに仕立て上げる。

 そして、声を張りながら、こう言った。


「「真似するな!!」」


 やっぱり似た者同士らしい。


 それからというもの、四季咲と小鳥遊のメンコ勝負はヒートアップしていった。

 魔術・人狼の力を使うのは当たり前。

 彼女達がメンコを地面に叩きつける度、周囲の木々は激しく揺れ、駄菓子屋の窓は彼女達が巻き起こす風圧に脅かされ、近くにある川の水面は小刻みに振動していた。

これ以上、ヒートアップしたら不味いと判断した俺は、彼女達にストップを呼びかける。


「はいはい!ストップ!ストップ!!これ以上やったら周りに被害が出るから!!引き分け!!」


「神宮、止めてくれるな!まだ決着は着いていない……!」


「そうよ!!あと1枚なのよ!ここまで来て引き下がれるもんですか!!」


「ていうか、お前らが争っている間に最後の1つ売り切れたぞ」


 駄菓子屋前から出てきた少年──たけのこチョコを持っている──を指差しながら、これ以上争っても無駄である事を告げる。

 だが、彼女達は引き下がらなかった。


「たとえ賞品がなかったとしても、このヤンキー女と白黒つける必要がある。これは私のアイデンティティの問題なのだ」


「いい事言った、成金お嬢様!ここまで来て引き分けなんてあり得ないっての!!」


 四季咲と小鳥遊は再び火花を散らし合う。

 何が彼女達を駆り立てるんだろう。

 ……俺には理解し難かった。


「さあ、ラストバトルよ!!あんたの息の根、ここで止めてやる!!」


「上等だ。後で泣面晒しても私は責任を取らないからな」


 彼女達の身体から膨大な魔力が噴き出る。

 魔法使いでもない俺でも分かる。

 たかがメンコで最大火力をぶっ放すつもりだ、こいつら。


「いくぞ!これが私の全力全霊!」/「いくわ!これが私の全力全霊!」


 四季咲が持っているメンコが7色に、小鳥遊が持っているメンコが銀色に輝く。

 ヤバいと思った俺は慌てて右の籠手を装着する。


「レインボー・ミラクルバレット!!」


「シルバー・ウルフバレット!!」


「どっちも技名、クソだせえ!!」


 膨大な魔力を秘めた彼女達のメンコが宙でぶつかり合った。

 それにより生じる爆風と爆炎。

 最小限の被害に抑えるため、俺は右の籠手の力を久し振りに使った。





 いつも読んでくれている方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方に感謝の言葉を申し上げます。

 

 7万PV達成記念短編ですが、まだ完成していないので断言できませんが、来週の月曜日辺りから投稿しようと考えております。

 具体的な事が決まり次第、活動報告や最新話の後書きやTwitter(雑談垢:@norito8989・宣伝垢:@Yomogi89892)にて告知致します。

 

 明日の更新は19時頃に更新致します。

 これからもよろしくお願い致します。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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