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4月30日(1)神宮司と小鳥遊神奈子 *6万PV達成記念短編

 4月30日。

 図書館記念日とか国際ジャズ・デーとか誰かにとって特別な日であるが、俺にとってただの平日でしかないある日の昼休み。

 一時的に授業から解放された俺は、背伸びをしながら背後の席に座る伊紙丸に声をかけた。


「伊紙丸、食堂行こうぜ食堂。今日の日替わり定食はカツ丼らしいぞ」


「あー、先言っててくれんか?ワイ、今、それどころじゃないんや」


 伊紙丸の方を見る。

 彼はスマホと睨めっこしていた。


「どうした?AVでも探してんのか?」


「アホか。流石のワイでも授業中にオカズなんか探さへんわ」


「じゃあ、何しているんだよ」


「ふっ、聞いて驚け」


 そう言って、伊紙丸はドヤ顔を披露すると、俺にスマホ画面を見せつける。


「『ラブ×ラブ』……?なんだ?エロゲか?」


「ちゃうちゃう、出会い系アプリや。ワイ、今、女子大生とチャットしているねん」


 エセ関西弁を口から吐き出しながら、伊紙丸はドヤ気味に胸を張る。


「へぇー」


「へぇー、って何や。ツカサン、あんだけおっぱいおっぱい言ってるのに出会い系は興味ないんか?」


「いや、俺、今、スマホ持ってないし。寮長に没収されたままだし」


「あー、そういや、そうやったな」


「まあ、それを抜きにしても出会い系ってもんに興味はねぇよ。あれだろ?女になり切って、性欲に塗れた雄猿を釣るゲームだろ?中学の時、友達がやってたのを横で見てたわ」


「悪意ある使い方してんな、お前の友人」


「で、お前はどんなネカマに釣られているんだ?」


「沙織さんをネカマ扱いすんなっ!!沙織さんは現役女子大生やぞ!!ほら、このアイコン見てみ!!」


 そう言われて、俺は伊紙丸に急かされるがまま、スマホ画面に映し出された沙織さんの写真を見る。


「あー、可愛いけど、おっぱいねぇな」


「こんな可愛い女の子の中身が男な訳ないやろ!!ほれ、見てみ!このチャット!!今時の女の子らしく絵文字じゃらじゃらや!!」


 伊紙丸がチャットの内容を見せてくれたので、ざっと目を通す。

 画面には伊紙丸と沙織さんの簡単な自己紹介が映し出されていた。


「ほら、女の子しとるやろ!」


「なんだよ、この自己紹介。名前と好きな漫画しか語ってねぇじゃねぇか。こんなんじゃ相手の印象に残らねぇぞ」


「んじゃあ、どうやったら印象に残る自己紹介ができるんや?」


「とりあえず、名前の両端に十字架立てる所から始めようか」


「ちょい待ち、ツカサン」


「†伊紙丸†って名前も地味だな。苗字の前に"堕天使"を付け加えようか」


「一昔前の地雷ネームみたいなので印象残りとうないわ!!」


「じゃあ、"@秘密結社は思想盗聴止めろ"ってのはどうだ?」


「ツカサンはワイをどうしたいんや!?」


「エセ関西弁しかないお前に新たなキャラを付与したいなって」


「余計なお世話や!!」


 伊紙丸から拳骨を貰った俺は、真剣に考える事にする。


「ほら、俺らだって性癖語り合う事で親しくなったじゃん?それと同じで自分を曝け出さないと相手に自分という人間を伝える事できないと思うぞ」


「お、おう、ツカサンが真面目な事を言っている……」


「ほら、俺にスマホを貸してみろ。お前の良い所を友達目線で紹介してやるからさ」


 伊紙丸からスマホを借りた俺は、スマホ世代に相応しい華麗なタップ捌きで彼に相応しい自己紹介文を打ち込む。


「ほら、送信する前に内容確認してみろ」


「あいよ……えーと、『ただの女の子には興味ありません。この中でGカップ・金髪・外国籍を持っている人は僕の所に……』、おい司」


「どうした?」


「これ、お前の好みのタイプやろうが。ワイのアピールはどこ行った?」


「実家に帰省してしまった」


「すぐ呼び戻して来い」


 再びスマホを押しつけられる。

 再び文章を入力した俺は、スマホを伊紙丸に返した。


「『私のチンポコは53万メート……』、おい司」


「絶望感伝わるだろ?」


「んなもん伝えなくていいねん、さっさとやり直せ」


「って、言われてもなぁ……お前、エセ関西弁とチビくらいしか個性ねぇし」


「ツカサン、なんか今日だけワイの当たり強くない?」


「お前が女の子とイチャイチャしていると思うとつい」


「器、致命的に小さ過ぎない?」


「まあ、嫉妬を抜きにしても俺は男の子だから女の子の気持ちなんて分からない。だから、ここは女の子に聞いた方が確実なんじゃねぇか?」


「ああ、それはええな。じゃあ、生徒会長さんを……」


「委員長ー、ちょっとこっちに来てくれ」


「ちょい待ち、ツカサン」


 伊紙丸の幼馴染であるツインテール娘と共に俺の隣の席で購買のパンを食べていた委員長に声を掛ける。


「ふぁふぃふぉ、ふぃんふぅう」


「女の子がキュンと来る文章を考えてくれないか?」


 委員長は頬張っていたパンを飲み込むと、特に感情を込める事なく、淡々と女の子がキュンと来る文章を口に出す。


「ポコチン、53万メートル」


「だってさ、伊紙丸」


「不採用や!!」


「何よ、伊紙丸。私の考えたキュンキュンワードをたった4文字で否定する気?童貞の癖に」


「ツカサンと同レベルやからや!!」


「けど、委員長。チンポコ53万メートルってキュンキュンよりも先に絶望感押し寄せて来ない?」


「おっぱい53万メートルだったら、あんただってキュンキュン来るでしょう?」


「──っ!!」


「ピンと来た顔すんなっ!!胸囲53万メートルの女が現れたら、揉む以前に日本沈没するわっ!!」


「じゃあ、ポコチン53万メートルは日本沈没しないのかよ?」


「するわっ!!おっぱいもポコチンも53万メートル級出てきたら日本は肌色の大質量で崩壊するわっ!!」


「委員長、伊紙丸がめちゃくちゃ不服そうだから、他にキュンキュンワードを創出できるか?」


「ハンバーガー53万個分」


「それのどこにキュンキュンする要素がっ!?」


「そんだけハンバーガー食べられたら、餓死する要素ないかなって」


「53万個なんて食べたらギネスレベルの肉塊になれるわっ!!」


「ギネス級の肉塊ってめちゃくちゃおっぱいデカそうだよな」


「ツカサン、おっぱいデカかったら何でも良いんか!?デブでも良いんか!?」


「おっぱいに貴賎はないからな。ただし貧乳、あいつらの乳に価値はない」


「差別しとるやんけ!!」


「あん?喧嘩売ってるなら、買うわよ、オラ」


「認めろ、委員長。枯れた平野はただの荒地だって事をな」


「私はまだ発展途中だっての!!」


 委員長は自分が日常的に使っている机を両手で持ち上げる。


「ちょ、待っ……委員長、人の身体を貶しめる言い方をした俺もあれだけど、流石に机を投げるのはやりす……」


「せいやああああああ!!!!」


 委員長は遠慮する事なく、俺目掛けて机を投げつける。

 避けたら他の人に迷惑がかかるため、俺は身体をフルに使って、飛んできた机を受け止めた。

 いつも読んでくれている方・ここまで読んでくれた方・ブクマしてくれた方・評価ポイントを送ってくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 そして、新しくブクマしてくれた方・評価ポイントを送ってくれた方に厚く厚くお礼を申し上げます。


 前回告知致しましたが、6万PV達成記念短編は今までのように連日で投稿致しません。

 現在連載している「王子の尻を爆破してお尋ね者になった悪役令嬢(略)」の更新を優先するため、週1〜2のペースで投稿しようと考えております。

 続きを楽しみにしている方には申し訳ございませんが、ご理解のほどよろしくお願い致します。

 

 次の更新は6月4日金曜日12時頃に予定しております。

 まだ出来上がっていないので全何話になるのか分かりませんが、確定次第、最新話の後書き・活動報告・Twitter(雑談垢@norito8989・宣伝垢@Yomogi89892)で告知致しますのでよろしくお願い致します。

 

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