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4月28日(3)土管にハマった四季咲の巻 ※5万PV達成記念短編

 委員長達が立ち去ってから数分後。

 四季咲がハマって出られなくなった土管に寄りかかりながら、俺は夕空を仰いでいた。


「なあ、四季咲」


 電線の上に佇むカラスを眺めながら、俺は四季咲に話しかける。


「俺、トイレ行きたいんだけど」


「お願いだ、神宮。一生のお願いだ。私から離れないでくれ」


 現在、四季咲は委員長の所為でノーパン状態に陥っている。

 多分、さっき委員長が指でくるくる回していたヒモみたいな布が彼女の下着だったんだろう。

 俺には布にしか見えなかったんだけど。

 

「なあ、こんな事になるならさ。さっさと委員長から下着取り返しに行った方が良かったんじゃねぇの?」


「ば、馬鹿言うな!君がいない時にスカート捲れたらどうするんだ!?ありのままの姿を見せる事になるんだぞ!?というか、下着を取り返した所でどうする気だ!?私に履かせるつもりか!?」


「委員長にやらせるに決まっているだろ。何言ってんだ、お前」

 

 俺はというと、委員長(バカ)がバカやった所為で、こう着状態を強いられていた。

 四季咲から離れられない。

 かと言って、足を持って引っ張り出したら、彼女のありのままの下半身(すがた)を見てしまう恐れがある。

 正直、八方塞がりだ。

 もうここまで来たら、土管を壊してしまった方が早いような気がする。

 

「雫さんを呼びに行って貰った美鈴達には悪いが、土管壊すか」


「神宮、それは最終手段だ。やれる事をやっていないのに、公共のものを壊すのは良くないと思うぞ」


「もう最終手段を取らざるを得ない状況に追い込まれているんだよ」


 溜息を吐き出しながら、俺は四季咲の言う事に従う。

 彼女がハマっている土管に全体重を預けながら、俺は美鈴達が来るのを待つ事にした。

 

(美鈴を行かせるべきじゃなかったなぁ)


 美鈴がいたら、四季咲の替えの下着を買えた上、買った下着を履かせる事ができただろう,

 つい溜息を吐き出してしまう。

 もう早くこの状況を何とかしたかった。

 そんな事を考えていると、公園の前を通り過ぎようとする集団を目にしてしまう。

 その集団の顔には見覚えがあった。

 桑原学園生徒会メンバーと聖十字女子学園生徒会メンバーだ。 

 このままだとヤバいと思ったので、急いで隠れようとする。

 

「神宮、何をしているのですか?」


 が、時既に遅し。

 桑原学園会長は即座に俺を見つけてしまった。

 その所為で他の人達も気づいてしまう。


「おや?なんで貴方がここにいますの?」と蛇女。


「おいおい、お前の背後にいるケツだけ星人は誰だよ」と桑原学園生徒会副会長。


「お主、見る度に何かしらの事件に巻き込まれているのぉ」と馬女。


「………?」と喋る事が苦手な桑原学園生徒会会計は上半身土管の中に詰まった四季咲を見て、首を傾げる。


「ねぇ、この土管にハマっている人、私達の所の生徒よね……」と蜘蛛女。


「あっはっはっは!土管にハマってやんの!こんなの僕でもやらないって!!」と鳥女。


「へぇ、壁尻女ならぬ土管女ねぇ……何かそそりますねぇ」と桑原学園生徒会書記。


 ……彼等が来る前に土管を破壊すべきだった。

 心底後悔してしまう。

 俺はいつもこうだ。

 肝心な所で、答えを後回しにしてしまう。

 その所為で窮地に追い込まれてしまう。

 四季咲の反対を押し切って、壊してしまえば良かったと心の底から後悔する。

 もしこの土管尻だけ女の正体が四季咲だとバレたら、彼女の威厳も社会的信用もなくなってしまう。

 彼女の名誉を守らなければ。 

 そう思った俺は、庇うように四季咲の尻の前に立つ。

 彼女の尻は小刻みに震えていた。

 多分、知り合いにバレるかどうかのスリリングを楽しんでいるのだろう。


「神宮、その人は……その、誰ですか?」


 気まずそうに質問を投げかける会長。

 俺は額から汗を流すと、顔に動揺が出ないように表情筋をガッチガチに固めながら答えた。


「……………………デリヘル嬢です。聖十字女子学園の制服にそそられて、野外プレイしようとしていました」


 会長以外のメンバーは心の底からドン引きしたような表情を浮かべる。

 もう汚物でも見るかのような目で俺を見つめていた。


「うわ……流石にドン引きですわ」


「ねぇ、でりへるじょうってなに?」


「お主……デリヘル嬢に儂等の制服を着させるって……うわぁ」


「…………バッッッカじゃないの」


 聖十字女子学園生徒会メンバーは俺を詰る。

 本気でドン引きしているのか、言葉にキレがなかった。


「お前……童貞拗らせているからって、それはねぇだろ」


「……………」


 桑原学園副会長と会計はゴミを見る目で俺から距離を置く。

 だがしかし、会長だけは俺を怪しむような目で見つめていた。


「神宮、正直に答えなさい。貴方、嘘を吐いているでしょう」


「い、いや、会長、これが俺の、せ、性癖なんです……」


「私の目を見て、同じ事を言いなさい。そしたら、信じてあげますよ」


 会長はじっと俺の顔を見続ける。

 俺は会長の飛行機雲みたいな目をじっと見つめると、彼女の言う事に従った。


「こ、この土管尻は俺の性癖なんです……!」


「嘘ですね。目、泳いでいますよ」


 どうやら俺には嘘を吐く才能を持ち合わせていないらしい。

 

「何故そのような嘘を吐いてまで、その人の正体を隠そうとしているのですか?まさか私達に言えないような………あ」


 頭のおかしい奴が集う桑原学園の中でも秀才かつ優秀な会長は、真実に気づいたのか、冷や汗を垂れ流す。


「……神宮、今日は四季咲会長と一緒じゃないんですか?」


 蜘蛛女・馬女・蛇女・会計の顔から血の気が引く。

 副会長と鳥女は気づいていないのか、首を傾げていた。


「まあ、別に良いんじゃないですか、んな事」


 俺が答えるよりも先に書記は動く。

 彼の手には男性器を模した夜の玩具が握られていた。


「あの土管女が誰だろうが、いい尻をしている事には変わりねぇ。この人なら俺のパパになってくれそうです」


「おい、書記。それを何に使うつもりなんだ?」


「そりゃあ、前のあ……」


 俺は四季咲の方に向かう書記を背負い投げする。

 そして、会長達の方を見た。

 会長達は暴力で書記の意識を刈り取った俺にドン引きしていた。

 俺は気絶した書記の身体を放り投げると、咳払いする。

 そして、穏便に引き取って貰うため、こう言った。


「人の子達よ……我らの神はこう言っている。"さっさとこの地から立ち去れ"と」


「おい、こいつ、何か神の使いみたいな事を言い出したぞ」


「ねえ、師匠。もしかして、そこの土管尻女が神なの?」


「この土管尻女は神からの信託を受信する巫女です」


「どんな巫女ですの」


「というか、それ、私達のか……」


「蜘蛛女。それ以上、口を開いてみろ。巫女の尻から神の息吹が炸裂するぞ」


「それ、ただの屁じゃろう!?」


「馬女、女の子は屁なんかしません」


「昭和のアイドルでも屁くらい普通にやっていますよ」


「流宮会長、女の子は屁もう○こもおし○こもゲロもしません。女の子の口からは毒ガスが、おっぱいからはロケットが、股からはスペ○ウム光線が、そして、お尻の穴からは神の息吹が出るのです」


「「「「「女の子を何だと思ってんだ」」」」」


 会長・蛇女・馬女・鳥女・蜘蛛女から総ツッコミを受けてしまった。

 会計は憐れみの視線を俺に送りつける。

 

「まあ、彼氏いない歴イコール年齢の貴女達には分からないでしょう。結婚した女の人は須くおっぱいからミサイルが出るようになるのです。俺の親父もよく俺を出産した直後のお袋からおっぱいミサイル喰らってたって言ってたし」


「貴方の母親が頭おかしいだけでしょう!」


「普通の女子(おなご)は、んな事せんわ!」


「ねぇ、師匠。おっぱいミサイルってどれだけの破壊力持ってんの?」


「ちょ、この子に変な事を教えないでください!この子、とんでもない冗談でも信じるんですから!!」


「ナチュラルに流しているけど、須く誤用してるよな?」


「てか、私達はさっきから何を聞かされている訳!?」


「………!」


 一言俺が喋れば、みんな喋り出す。

 その所為で、誰が何を喋っているのかよく分からない。

 ていうか、俺は聖徳太子じゃねぇんだぞ、1人ずつ話せ。


「というか、こんな事をしている場合じゃありません。神宮、四……その人を土管から引っ張り出しましょう。幸い、今は人が沢山います。この人数なら容易く引っ張り出せる筈」


 会長は制服の袖を捲りながら、やる気を示す。


「というか、会長、何でお嬢様学校の生徒会メンバーと一緒にいるんですか」


「普通に親交を深めるためですが……あ、もし良かったら、この後、私達と一緒にカラオケ行きませんか?」


 こいつらもこいつらでカラオケに行く最中だった。


「別に良いですけど……四季咲は誘わなかったんですか?」


「誘いましたが、用事があると言われて断られました。一応、チャットでカラオケに行く事は伝えましたが……」


 俺と会長は四季咲の方を見る。

 彼女の尻はピクリとも動かなかった。

 

「……用事とはこの事だったんですね」


「会長、あれは四季咲ではありません。ガイア神の信託を受信する尻巫女様です」


「そんな事を言ったら、全世界のガイア教信者に殺されますよ」


「大丈夫です、神は死んだ。というか、今月頭に俺が殺した」


「戯言はそこまでにしておきなさい」


 会長は溜息を吐き出しながら袖を捲る。

 ……本当に俺、ガイア神を殺したんだけどなぁ。


「とりあえず、土管にハマった彼女を助けましょう。この人数なら、強引に引っ張ったら何とかなる筈……」


「あ、会長、足を引っ張ろうとしないでください。こいつ、パンツ奪われてノーパンだから」


「何があったら、パンツを奪われる事態に陥るんですか!?」


「あんたん所の馬鹿生徒が馬鹿やった結果ですよ」


「神宮!!貴方って人は!!」


「俺は馬鹿じゃねぇよ!!」


「いや、馬鹿だろ」


「誰だ、俺の事を馬鹿って言ったやつ!出て来い!しばき倒してやるから!!」


 こうして、何も進展する事なく、ただ時間だけが無駄に過ぎていくのであった。



 ここまで読んでくれた方、過去にブクマ・評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマ・評価ポイントを送ってくれた方に感謝の言葉を申し上げます。

 本当にいつもいつもありがとうございます。

 これからも皆さんが楽しめる物語を書けるような頑張りますのでお付き合いよろしくお願い致します。

 

 また、雑談垢(@norito8989)で告知致しましたが、200ブクマ記念中編よりも先に6〜10万PV達成記念短編を上げる事にしました。

 特に8〜10万PV達成記念短編「4月31日」は実質中編の3部作になっております。

 「4月31日」では、本編でやり残した天使ガブリエルの決着や褐色の青年、神域、そして、司の右の籠手の正体について深く掘り下げる予定なのでお付き合いよろしくお願い致します。


 次の更新は明日の20時頃に予定しております。

 あと、明日の13時頃に「爆破令嬢(略)」(https://ncode.syosetu.com/n5562gw/)の最新話を更新しますので、よろしくお願い致します。


 

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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