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4月27日(5) 野生に帰った鳥女の巻*4万PV達成記念短編

「ウガアア!!」


 鳥女は威嚇の声を上げると、獣の如き動きで俺との距離を詰める。 

 俺は目を瞑ると、ついこないだガラスの竜と喧嘩した時に会得した奥の手──モノクロな世界──を発動する。

 この奥の手は右の籠手と違い、俺の意思1つで発動できるらしく、一瞬で世界は白と黒に染まってしまった。

 俺と白黒に染まった鳥女との間に赤い亀裂が走る。

 赤い亀裂の濃さが最大限に達すると同時に、鳥女は強烈な蹴りを繰り出してきた。

 俺は右手で彼女の爪先を受け止めると、そのまま彼女の身体を空中目掛けて投げ飛ばす。

 鳥女は空中で体勢を整えると、華麗な動作で着地した。

 鳥女の額に青い点が生じる。

 あの点を突けば、彼女が気絶する事を本能的に知覚した。

 深呼吸した俺は、無駄な力が入らないように力を抜くと、必要最低限の箇所に力を込める。

 俺が地面を蹴ると同時に俺と鳥女の距離が文字通り一瞬で埋まった。

 人間の限界を超える速さで間合いを詰めた俺は、彼女の額に優しくデコピンする。

 たったそれだけの攻撃で鳥女は眠るように意識を失った。


(……もしかして、この力なら相手を痛めつけなくても無力化できるようになるかもしれな……)


 そんな事を思いながら、俺は気絶した鳥女を優しく寝かすと、奥の手を使うのを止める。

 視界が正常な状態になった瞬間、俺の身体に激痛が走った。


「あいたっ!?」


 限界以上に身体を酷使した代償なのか、俺は筋肉痛に似た激痛により、一歩も動けなくなる。

 どうやら超身体能力は身体にかなりの負担がかかるらしい。

 足を攣った時に走る痛みが身体全体に襲いかかる。

 

(これ、……使いこなすのに相当時間かかるタイプの奴じゃ……?)


 そんな事を考えていると、食堂の中から四季咲達が出てきた。


「お、おう、四季咲。ちょっと全身攣ったから、手足伸ばしてくれない、……え、何でお前らそんな殺気放ってんの」


 蛇女&鳥女以外の生徒会メンバーは、何かみんな血走った目で俺を睨んでいた。


「そりゃあ、公衆の面前で着用している下着大声でバラされましたのですから。普通の乙女なら怒って当然でしょう」


 特に気にしていないのか、蛇女(ばんそうこ)はのほほんとした表情を浮かべていた。


「それ、お前が普通の乙女じゃないように聞こえるんだけど」


「普通の乙女は絆創膏を下着代わりにしません」


 どうやら自分が普通でない事を自覚しているらしい。

 こないだ会った変態露出狂殺人拳の使い手と違って、常識を持ち合わせている変態なようだ。

 

「……神宮」


 エロパン1号──四季咲は今まで聞いた事のないドスの効いた声で俺の名前を呼ぶ。

 エロパン2号も殺意を込めた目で俺を睨んでいた。

 お子ちゃまパンツV3は、棒状のものを振り回していた。

 

「……何か言い残す事があるか?」


 四季咲の掌が七色に発光する。

 人狼騒動の時に覚えた魔術を行使するつもりなんだろう。

 殺意と恥辱が四季咲の身体から溢れ出ていた。

 モノクロな世界と超身体能力を行使した影響で動けなくなった俺はしどろもどろになりながら、弁明し始める。


「お、俺、暴走する鳥女を鎮圧したんだけど……事件解決の功労者にそんな殺気放つの良くないと思う、うん」


「実質お主が起こした事件じゃろ?」


「てか、俺はお前らのパンツなんかに興味ない!あと、モロパン状態に追い込まれたお前らが悪いと思う!!」


「その追い込まれた状況を作ったあんたが悪い。ていうか、何でわざわざ私達が履いているパンツを声を大に言いやがった?言う必要なかっただろ」


「その場のノリ」


「「お前を殺す」」


 殺害予告されてしまいました。

 四季咲の方を見る。

 

「彼女は怒りなのか恥辱に塗れているのか分からないくらいに顔を真っ赤にさせていた。どうやら俺の制裁は避けられないものらしい。何で下着如きでそんなに恥ずかしいと思うんだよ。下着と水着ってそんなに大差ねぇじゃねぇか。海やプールでは布1枚であるのに抵抗感抱かない癖に何で陸の上では布見られて恥ずかしがるんだよ。訳が分からねぇよ。まあ、こんな事を言ったら、余計火に油を注ぎそうなので大人しく沈黙を貫く」

 

「全部、声に出ているぞ」


「あ、やべ」


 俺の失言により、場の雰囲気がより一層ピリピリしたものになる。

 自分の制裁が避けられない事を理解させられた。

 彼女達の説得を諦めた俺は溜息を漏らす。


「──なあ、お前ら」


 そして、"どうせ制裁されるなら、これだけは言っとこう精神"で失言に失言を重ねてみた。


「そんなパンツ、学校に履いてきて恥ずかしくないんですか?」


 


 ──その日、俺は地獄を見た。









 後日談という名の蛇足話。

 あの後、お嬢様達にフルボッコされた俺は、『鳥女に変な事を教えない』という趣旨の誓約書を書かされた。

 俺がこの約束を破った際、彼女達は裁判を起こすつもりらしい。

 下着の件が有耶無耶になって、ラッキーだと思った。

 あれで裁判を起こされたら、俺に勝ち目ないだろうし。

 ちなみに鳥女は気絶から立ち直った後、元に戻っていた。

 "昔の家電みたいな女"と思ったのは、多分、俺だけじゃない筈。

 で、俺はというと、まだ罰を受けており、現在、聖十字女子学園寮近くにある木に逆さ吊りにされている。

 鳥女を暴走させた罪と彼女達の下着を公にした罪で。

 見張りは四季咲1人。

 彼女はまだ恥ずかしさで顔を真っ赤に染めていた。

 手足に巻きついた縄を振り解こうとする。

 が、縄は硬くて解けそうになかった。


「なあ、エロパン1号。俺はいつになったら解放されるんだ?」


「君が私の事をエロパン1号と呼ばなくなるまで」


 顔を真っ赤にした状態で逆さ吊りにした俺を睨む四季咲。


「大体承知。エロパン1号の呼び名は永遠に口に出さないから、俺を解放してくれ無自覚淫乱」


「…………」


 顔を真っ赤に染めたまま、四季咲は近くにあった木の枝や木の葉をかき集める。

 そして、目に涙を溜めながら、こないだ覚えたばかりの魔術で集めた枝や葉に火を点け始めた。


「ちょ、焚き火しようとするな!この状態じゃ、煙モロに吸っちゃうから!げほ、ごほ、げほぉ!!ちょ、頭頂部が熱くなるから!!おい、木に火をつけるな!!うおっ!?一瞬で火が大きくなった!?うわ!?髪の毛の先に火の粉が!!ごめん!調子に乗ったの謝るから、とりあえず、俺を降ろして、あんぎゃあああああ!!!!」


 俺の醜い断末魔がお嬢様しかいない空間に響き渡る。

 その後の事は……………語りたくない。

 強いて言うならば、異世界に転生したいなぁと思いました。




         (完)


 ここまで読んでくれた方、過去にブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方に厚く厚くお礼を申し上げます。

 4万PV達成記念短編、これにて完結です。

 今回は本編でやり残した「鳥女との決着」と「聖十字生徒会メンバーの掘り下げ」をメインに行いました。

 本編は神宮司の掘り下げが本筋だったため、本筋に関係ない事はなるべくやらないようにしていましたが、これからの記念短編は本編でできなかった事を中心に書いていきたいと思います。

 次の更新は5月14日金曜日18時頃に限定公開していた短編「バレンタインデー前日」を載せていきたいと思います。

 一度読んでくださった方にも楽しめるように加筆修正致しますので、よろしくお願い致します。

 また、5万PV達成記念短編は来週の月曜日辺りに投稿を予定しております。

 これからも不定期ながら更新していくので、もしよろしければお付き合いよろしくお願い致します。

 

 

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