4月27日(3) 野生に帰った鳥女の巻*4万PV達成記念短編
「グルルル……!!」
とりあえず、野生化した鳥女を拘束する事に成功した俺達は、拘束した鳥女を連れて、聖十字女子学園の学生寮の一室──四季咲の部屋で作戦会議を開く。
四季咲の部屋は学生寮であるにも関わらず、かなり豪華でピカピカしていた。
"一応、男の子なんだけどな"と思いながらも、当たり前のように女子の部屋に上がる事を許可された俺は、彼女達に男として認識されていない事実を知り、軽くショックを受けふ。
もしかして、俺、こいつらの女友達扱いされているの?
俺、男だぞ?
いつオオカミになってもおかしくないんだぞ?
てか、普通、付き合っていない男を部屋に上げるか?
もしかして、俺の考えが古いだけで今の時代だと当たり前なのか?
なあ、誰か教えてくれよ。
「さて、どうしようか」
四季咲も蜘蛛女も馬女も蛇女も顳顬を抑えながら、人として生きて来た過去さえ忘れてしまった鳥女をチラ見する。
「……あ、そういや、用事あったんだった。これにて失敬するでござる」
「「「「勝手に失敬するな」」」」
「いや、確かに軽い気持ちで山籠りすれば?みたいな事を言った俺も悪いけどさ。まさか1週間程度で野生化してしまうなんて想像できる訳ないじゃん。なあ、俺はどうすりゃ良いんだ?責任とって、野生化したこいつと一緒に野生に還れば良いのか?」
「彼女を人間に戻してやってくれ」
「漫画でよく聞くフレーズ」
ない頭を振り絞って、対処方法を考える。
誰かに頼る手段は……うん、使えない。
だって、誰に相談したら良いのか分からないし。
多分、本当にどうしようもなくなったら、病院に連れて行くと思うけど、それは最終手段として取っておきたいのだろう。
医者も頭抱えるの間違いないだろうし。
それ以外の方法を考える事にする。
「……殴れば、治るか?」
「一昔前の家電じゃないから無理じゃろ」
「俺、殴る以外の解決方法持っていないんだけど」
「さっき窓の外に投げられる際、人は対話できる素晴らしい生き物云々言ってましたよね?」
「あれは咄嗟に出た綺麗事だ。現実はそう甘くはない。それを四季咲が身をもって俺に教えてくれた」
「被害者面しないで貰えるか?」
「ウガアア!!!!」
俺の殴る発言を聞いた途端、鳥女は威嚇の声を上げ始める。
どうやら日本語はちゃんと理解できているらしい。
「ちょ、あんたが殴るって言ったから悠希興奮し始めたじゃない!」
「ちっ、こうなったら!風の谷作戦だ!!誰か青い衣を見に纏い、金色の野原駆け回って来い!その間、俺は鳥女に怖くないって言い聞かせるから!!」
「前半、何か意味があります?」
「ダメじゃ!悠希に近づこうとすると、噛みつかれてしまう!指1本2本じゃ済まんぞ!!」
「こうなったら、鳥女に新しい顔をぶつけるしかねぇ!!蜘蛛女、アンパンを用意しろ!!」
「それ、アンパン顔面に叩きつけているだけじゃないの!?」
「運が良ければ、鳥女の頭が新しくなるからノー問題だ!!」
「それ、事実上の斬首刑じゃないの!!」
「ウガアアア!!!!」
鳥女は今にも縄を引き千切る勢いで俺らに噛みつこうとする。
危ないので部屋の隅に避難した俺達は、これからの対策を練るために円陣を組んだ。
「さて、どうします?もう人間だった記憶、喪失してそうですけど」
「野生に還そう。本来いた所に返すのが妥当だと俺は思う」
「いや、本来いた所、ここなんですけど」
「最低限の文明的な生活を送らせれば、自然に戻りそうじゃがな」
「んな時間が解決してくれるだろう的な考えは好きじゃない。てか、それで良いなら、さっさと病院に連れて行けよ。そっちの方が効率的だろ」
「病院に連れて行ったとして、どう説明すれば良いのだ?この状況を」
「ちょ、呑気に話している場合じゃないですわよ!!ほら、見てください!!悠希、縄を噛み千切ろうとしていますの!!」
「とりあえず、グダグダ言っても何も始まらねぇ。先ずは日本語を教えよう。意思疎通取るところから始めようじゃねぇか」
そう言って、俺は円陣から抜け出すと、縄を噛み千切ろうとする鳥女に話しかける。
「鳥女、俺が言った事をリピートてしてくれ」
俺の声に反応した鳥女は、縄を噛むのを止め、俺の声に耳を傾け始める。
「"おで、人間滅ぼす。人間、環境破壊する悪い生き物。人間、存在したらいけない生き物。りぴーとあふたみー」
「「「「させんな!!」」」
俺の後頭部から小気味良いハリセンの音が聞こえてきた。
どうやら、彼女達がハリセンで俺の頭を叩いたらしい。
どこに隠し持っていたんだ、そのハリセン。
「んだよ、まだ何もやらかしてねぇぞ」
「十分やらかしているわよ!ほら、見て!あの子を!」
蜘蛛女に急かされるがまま、俺は鳥女の方を見る。
「おで、にんげん、ほろぼす。にんげん、おでのてき」
「人間への憎悪抱いちゃってるじゃない!!??」
「クソ……!これが環境破壊をしてきた人間への罰だと言うのか……!?」
「あんたの洗脳の賜物よ!!」
パカンと再び蜘蛛女にハリセンで頭を叩かれてしまう。
「にしても、こいつ、学習能力非常に高いよな。もしかしたら、ボノボみたいに文字も覚える事できるんじゃねぇの?」
「お主、悠希が人間である事をナチュラルに忘れているじゃろ?」
「でも、言葉を交わすのは良いアイデアかもしれませんわね。ここは私にお任せを」
この中で唯一まともそうな蛇女は華麗な足取りで鳥女に急接近する。
そして、こんな事を言い始めた。
「夜道、全裸、走るの、気持ち良い。リピートアフタミー」
「「「「特殊な性癖を植えつけようとするな!!」」」」
俺達は変な思想を植えつけようとする蛇女の頭をハリセンで叩く。
「はっ!つい先走って欲望が!!」
「性癖植えつけようとするお前の方が悪質だわ!見ろ、鳥女を!あいつ、服脱ぎ始めたぞ!!」
「良い傾向ですね。ウェルカム、痴女ワールド」
「やっぱ、四季咲といい蜘蛛女といい、お嬢様って変な奴しかいねぇな!!」
「ちょ、私も変な奴扱いしないでくれる!?私、普通の女子高生だから!!」
「縄を持ち歩いている女子高生は普通の女子高生名乗れねぇよ!!」
「では、この中で儂が1番まともって事になるようじゃな」
「ロリババアみたいな口調で無理矢理個性保っているような奴が、血迷った事言ってんじゃねぇよ!!」
「おい、神宮!私のどこが変なのだ!?別に私は変ではないだろう!?」
「思春期真っ只中の男子高校生を無理矢理ベッドに連れ込んだりするような淫乱無知が、常識人面してんじゃねぇ!!」
「淫乱無知!?」
「ちょ!会長、どういう事!?こいつをベッドに連れ込んだってガチな訳!?」
「会長、性知識に乏しい割には随分やる事、過激なのですね」
「無知じゃからじゃろ。無知じゃから、過激なスキンシップができるんじゃろう。汚れてしまった儂等にはできない所業じゃな」
「私が無自覚で男を誘惑しているみたいな空気を作り出さないで欲しい!私は無実だ!決して神宮を誘惑した訳では……」
「四季咲、俺の事、下の名前で呼んでいいぞ」
「何故、今のタイミングでそれを言った!?そんなに私を困らせたいのか!?」
四季咲を揶揄って遊んでいると、縄が千切れる音が聞こえてきた。
俺達は反射的に鳥女の方を見る。
俺らが予想した通り、彼女は縄を噛み千切っていた。
彼女は窓の外へと逃げようと身体を激しく動かし始める。
俺は鳥女を捕まえようと、蛇女から縄を強奪する。
そして、よく西部劇とかでカウボーイがよくやっている縄投げの要領で蛇女を捕まえようとした。
が。
「グヘッ!?」
「どうやったら、自分で投げた縄で自分を拘束できるのですか!?」
色々あって、自分で投げた縄が俺の身体に絡まってしまった。
その隙を鳥女は見逃す事なく、彼女は窓の外へと飛び降りてしまう。
「ちょ、悠希!!」
慌てて窓から飛び降りた鳥女の安否を確認するため、
窓枠に駆け寄る聖十字女子学園生徒会メンバー。
その隙に俺は絡まった縄から抜け出そうとする。が、幾ら腕を動かしても解けそうにない。
「なんと、あいつ、五点着地しおった……!」
「どうやら完璧に衝撃を押し殺したようですねえ。ほら、見てください、ピンピンした様子で山に戻ろうとしていますよ」
「いや、待て!山ではなく、建物の中に入ってしまったぞ!!」
「ちょ、今の悠希が他の人と会ったら大変な事が起きるわよ!早く追いかけないと!!」
「おーい、とりあえず、誰か俺を助けてくれ!」
俺の助けを求める声が聞こえなかったのか、彼女達は青い顔をしたまま、部屋から飛び出した。
残された俺は彼女達の背後姿を黙って見守る事しかできなかった。
「いや、俺助けてから行けよ!!」
ここまで読んでくれた方、過去にブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方、本当にありがとうございます。
これからも不定期ではありますが、〜万PV達成記念短編を上げていくので、もう暫くお付き合い頂けると嬉しいです。
あと、この場を借りて告知致します。
近日中に2月に期間限定公開していた「バレンタインデー前日編」をここに掲載する予定です。
一度読んでくれた方にも2度楽しめるように加筆修正致しますので、よろしくお願い致します。
加筆修正が終わり次第、告知致します。
また、次の更新は明日の12時頃に予定しております。
次の更新も時間通りに投稿しますので、お付き合いよろしくお願い致します。




