4月23日(18)VS絶対善/一進一退の攻防の巻
俺が体制を崩すと同時に、奴は武器を無造作に振り回し始める。
"絶対善"の攻撃を鉤爪で弾く度に、奴の武器に白雷を流し込む。
奴の武器が交差し合う度に、俺の鉤爪も奴の武器も刃毀れしていく。
このまま打ち合っても武器を消耗するだけで意味がない事を把握。
俺は即座に籠手を元の形に戻すと、奴と距離を取りつつ、反発の力で奴の身体を弾き飛ばす。
反発の力をモロに食らった"絶対善"の身体は、ボーリングの球のように砂浜の上を転がると、そのまま、波打ち際まで転がり落ちてしまった。
俺は引力の力で"絶対善"を手元に引き寄せる──のではなく、自分から引き寄せられる事で、奴との距離を瞬く間に縮める。
引力の力により立ち上がろとする"絶対善"の目の前まで引き寄せられた俺は、奴が立ち上がる前に右の拳を叩き込む。
俺の予想通り、奴の身に纏っている赤黒い稲妻の鎧は非常に硬く、1回殴った程度では、罅を入れる事だけしかできなかった。
奴の防御力が上がっている事を把握する。
これなら連続的に攻撃を叩き込んでも死ぬような目に遭わないだろう。
「うおりゃあ!!」
1回殴った程度ではビクともしなかったので、もう1回右の拳で奴の身体を殴りつける。
白雷を纏った右の拳を2発叩き込んで、ようやく赤黒い鎧の一部が粉々に砕け散った。
俺の拳を受けた"絶対善"は数歩だけ後退ると、再生させた翼で遥か上空に飛び上がろうとした。
「逃すかよ」
ゴムのように右の籠手を引き伸ばす。
伸ばした籠手で飛び上がった"絶対善"の足を掴む。
そして、伸びた籠手を鞭のように振るう事で、宙に浮いた奴の身体を海面に叩きつけた。
「どんどん行くぜ……!!」
引き伸ばした籠手を元の状態に戻した俺は、海面に浮いていた奴の身体を引力の力で引き寄せる。
そして、無防備だった奴の身体に全力の拳を叩き込むと、再び奴の身体を引き寄せて、右の拳を再度叩き込む。
「■■■■■……!!」
"絶対善"の形状し難い武器が赤黒く輝くと同時に、奴の身体を引き寄せられなくなってしまう。
俺は右の籠手を再びゴムみたいに引き伸ばすと、そのまま奴の身体に伸ばした籠手を巻きつけた。
「■っ!?」
"絶対善"の身体に巻きつけた籠手を強引に引っ張る事で、俺は奴の身体を引き寄せる。
そして、伸びた籠手の部分──奴の肺がある部分に左掌底を叩き込んだ。
籠手越しに奴の身体に触った事で感電はしなかった。
俺の掌底の衝撃は籠手を貫通すると、奴の両肺に到達する。
肺に衝撃を受けた"絶対善"は苦しそうに息を吐き出した。
が、苦しそうに息をしていたのも束の間。
奴はすぐに息を整えると、握っていた神造兵器で巻きついていた籠手を衝撃波で吹き飛ばす。
その衝撃により、俺の身体は強制的に後退させられてしまった。
体勢を整えながら、"絶対善"の回復速度が常軌を逸している事を理解する。
だが、俺の連撃は全く無意味でもないらしく、奴の身に纏っている赤黒い稲妻も翼も、最初見た時と比べて弱々しいものに変貌していた。
(やっぱり、理性を失くしてから弱くなっている)
"絶対善"が神造兵器を造り出す直前まで、俺と奴の力の差はそこまでなかった。
あのまま順調に成長していれば、理性的にあの神造兵器を扱っていれば、五分五分だっただろう。
武器同士に大差はない。
俺が圧倒できているのは、奴の理性が怒りに呑まれているから。
たとえ怒りに呑まれた事で神造兵器を造り出す事に成功したとしても、俺に届かなければ意味は殆どない。
もう後十数分もしない内に決着は着いてしまうだろう。
右の拳を握り締め、"絶対善"の体力を少しずつ削ろうと試みる。
──その時だった。
背後から人の気配がしたのは。
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