4月23日(18)VS絶対善/最終ラウンド開幕の巻
俺の右の籠手と"絶対善"の武器がぶつかり合う。
金属音と火花が生じると共に、白雷と赤雷が競り合い始めた。
砂浜という空間を膨大な量の雷がぶつかり合う。
俺は右の拳を引くと、"絶対善"は剣を振り上げ直すと、再び攻撃をぶつけ合った。
不壊の盾と最強の矛。
2つの神造兵器がぶつかり合う事で大気は激しく振動した。
矛盾を訴えるかのように。
「くっ……!」
白雷と赤雷が再度競り合う。
衝撃に耐えられなかった俺達の身体は、強制的に後方に吹き飛ばされてしまう。
俺はバク宙する事で体勢を、"絶対善"は背後にある禍々しい翼で体勢を立て直すと、再び向かい合う。
理性を失った影響なのか、奴の攻撃が単調なものになっている。
一撃の破壊力は増しているが、ただ闇雲に攻撃を放っているだけなので、攻撃自体は避けやすくなっていた。
"絶対善"は進化の仕方を誤った。
もしあのまま諦める事なく、俺の動きを先読みし、攻撃の精度を高めていったら、奴は俺に決定的な一撃を与える事ができただろう。
しかし、"絶対善"は先読みする事を諦めて、神造兵器を造ってしまった。
その時点で奴が俺に決定的な一撃を与える可能性は消え失せてしまったのだ。
どれだけ火力を高めようとも、どれだけ攻撃範囲を広げようとも、右の籠手がある限り、俺は奴の攻撃を全て凌ぐ事ができる。
本当は右の籠手がなくても、全ての攻撃を凌げるようになるのが理想的だが、今の俺の実力では右の籠手に頼らざるを得ない。
右の籠手に頼らなければ、"絶対善"の高火力を凌ぐ事ができない。
その事実に歯痒さを感じながら、俺は次々に飛んで来る雷槍を籠手を使う事なく躱し続ける。
神造兵器を装備する前とは違い、奴が放つ雷槍は、火力だけは上がっているが、速さと精度は著しく低下しており、右の籠手を使わなくても凌げるレベルに落ちていた。
「■■■■■■■っ!!」
"絶対善"の口から圧縮された言語が漏れ出る。
その言葉を聞いた途端、あまりの情報量により耳鳴りが生じてしまった。
「■■■■■っ!!」
"絶対善"の握っていた剣の刀身が、9つに分裂し始める。
9つに分裂した刀身は、瞬く間に巨大化してしまうと、分裂した刀身は龍と化した。
赤黒い稲妻で構成されて龍は、咆哮だけで大気を振動させる。
周囲に誰もいない事を確認した俺は、全速力で"絶対善"目掛けて走り出した。
再度咆哮を上げた龍は、全速力で砂浜を駆ける俺を噛み砕くため、首を伸ばし始める。
あの龍の頭を右の籠手で受け止めたら、他の頭に捕食されてしまう。
その事実を本能で悟った俺は、右の籠手を手甲剣に変形させると、迫り来る龍の頭部の集団を紙一重で避ける。
龍の牙が俺の横を通り過ぎる。
俺は剣に変貌した籠手を用いて、すれ違い様に龍の身体を斬り裂いた。
変形した籠手により斬り裂かれた雷の龍の身体は、血を流すかのように白雷を噴出させると、活動を停止してしまう。
まだ龍を完全に壊す事ができていない事実に危機感を覚えた俺は、龍の身体を剣の形に変形した籠手で斬り裂き続けながら、"絶対善"との距離を確実に詰めていく。
「■■■■■■っ!!」
圧縮された詠唱を唱えた"絶対善"は、背中の翼を肥大化させた。
かと思いきや、無数の羽根を回転式機関銃のように撃ち始める。
俺は右の籠手を元の形に戻すと、飛んできた無数の羽根を全て右の籠手に引き寄せる。
そして、1つの塊になるまで羽根を圧縮させると、圧縮した羽根を反発の力で押し返した。
巨大な魔力の塊と化した"絶対善"の攻撃は、奴の元へと走り始める。
「──■■っ!?」
"絶対善"は俺が弾き飛ばした羽根の塊を赤黒い翼で弾き飛ばす。
俺と"絶対善"に弾き飛ばされた羽根の塊は海面に直撃すると、水柱を立てた。
即座に右の籠手を鉤爪の形に変形させた俺は、奴の赤黒い翼を豆腐みたいに引き裂く。
右の籠手で奴の翼を切り裂いた俺は、鉤爪を奴の赤黒い鎧目掛けて振り下ろした。
「■■■■っ……!」
"絶対善"は手に持っていた形状し難い棒状の何か──神造兵器で俺の鉤爪を受け止める。
鉤爪を通して奴の武器に白雷を流し込もうとした瞬間、奴は俺の鉤爪を弾き飛ばした。
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