4月23日(8) VS絶対善/コンテナと踵落としの巻
「どうした?1分で終わらせるんじゃなかったのか?」
"絶対善"から冷静な思考を奪うため、彼がブチギレるまで煽り続ける。
「もしかして、世界一の魔術師ってのは、"世界一魔術ができる魔術師"ってなだけで、世界一強い訳じゃないのか?」
「……お前が強い事はよく分かった」
"絶対善"は悔しそうに鼻から出た血を拭うと、憎悪に満ちた眼差しで俺を見つめる。
「そして、お前が魔法や魔術を使えないって事もな……!舐めるんじゃねえぞ、クソガキ……!人間だからっていう理由で手加減していたが、お前なんか全力でやれば瞬殺だって事を忘れるんじゃねぇぞ……!!!!」
「1分ノックアウト宣言の次は手加減か。あんた、"言わぬがハナ"って諺を知っているか?」
"言わぬが鼻"とは、嘘吐き続けたらめちゃくちゃ鼻が伸びるようになるという意味の諺である。
まあ、日本童謡のピノっキオ由来の言葉だから、外人である"絶対善"は知らないだろう。
身体中から夥しい程の赤雷を放つ"絶対善"を眺めながら呟く。
「御託はいい、全力でかかって来いよ」
歯軋りの音が遠くから聞こえる波の音に紛れて響き渡る。
どうやら俺の挑発は想像以上に効いている……いや、もしかしたら、挑発に乗った振りかもしれない。
"絶対善"の瞳はまだ冷静さを保っていた。
やはり彼は並大抵の相手ではない。
挑発に乗った振りという可能性を十分留意しながら、俺は魔術の力で宙に飛んだ彼を睨みつける。
「なら、見せてやるよ!!全力の駆除って奴をなっ!!!!」
魔術の力で宙に浮いた"絶対善"は空中に無数の魔法陣を展開する。
次の攻撃が放たれるよりも早く、俺はコンテナの影に避難しようと走り始めた。
「逃げんじゃねぇよ!!!!」
背後から爆発音が響き渡る。
多分、飛び道具で俺を射抜こうとしているのだろう。
俺はコンテナとコンテナの間を走りながら、中空から降ってくる攻撃を避け続ける。
空から降り続ける音速の雷槍は、走り続ける俺に当たるどころか触れる事さえもできなかった。
彼の魔力も無尽蔵じゃないようで、砲撃はたった数十秒程度で終わってしまう。
俺はコンテナの陰に隠れると、気配を完全に断ち切った。
「隠れても無駄だっての!!!!」
空から聞こえた"絶対善"の怒声。
それが俺の鼓膜に響いた途端、周囲のコンテナは独りでに浮かび始めた。
コンテナが地上から離れた所為で、俺は宙に浮かぶ"絶対善"に見つかってしまう。
「五体満足で帰さねぇからなぁ!!!!」
"絶対善"は浮かび上がったコンテナ十数個を俺目掛けて投げつける。
魔女騒動の時に同じような攻撃を喰らったのを思い出す。
あの時、俺は宙に浮かんだ瓦礫と土塊により、重傷を負ってしまった。
だから、俺はあの攻撃を喰らったあの日から対策を考え続けた。
もう2度とあの攻撃を喰らわないように。
息を短く吸い込んだ俺は、流星群のように降り注ぐコンテナ達がぶつかり合う事で生じた僅かな安全地帯に身体を転がす。
安全地帯に避難する事で直撃を躱した俺は、墜落したコンテナとコンテナの間にある僅かな隙間を潜り抜ける事で回避し続ける。
そして、紙一重で飛んできたコンテナを回避した俺は、再びコンテナ同士の間に潜りながら、宙にいる"絶対善"に近づく事を模索する。
彼は俺が無傷である事に気づいていないのか、コンテナを執拗に地面目掛けて投げ飛ばしていた。
どうやら、俺を見失っているらしい。
避け続けていると、コンテナの山から激しい音が聞こえて来た。
音源を見渡す。
俺が避けたコンテナ達が、再び宙に浮かぼうとしていた。
多分、俺が下敷きになっているのを確認するために、再度コンテナを浮かしたのだろう。
宙に浮かび始めた近くのコンテナにしがみついた俺は、"絶対善"に見つからないように、気配を断つとコンテナの影に隠れる。
彼はまだ俺を見つけられていないようで、投げ飛ばした全てのコンテナを再度魔術の力で浮上させた。
見つからないように、息を殺しながら他のコンテナの上に飛び乗る。
すると、乗っていたコンテナは勢いよく浮き上がると、"絶対善"の頭より高い位置に浮上した。
彼に奇襲をかけるために、俺は次々と近くにあったコンテナに飛び乗ると、彼との距離を確実に着実に縮めていく。
そして、"絶対善"の頭上にあるコンテナに飛び乗った俺は、まだ彼が俺の存在に気づいていない事を把握すると、すぐさまコンテナから飛び降りる。
──そして、真下にいる彼の左肩目掛けて、踵落としを浴びせた。
"絶対善"は自分の左肩の骨が折れる音を聞くと同時に俺の存在を認知する。
彼の意識を刈り取らないように手加減しながら──ここで意識を刈り取ったら、気絶した彼は高い確率で死んでしまう──、俺は右足を振り抜くと、彼を地面に突き落とした。
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