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4月23日(2)VS小鳥遊神奈子/開戦の狼煙の巻



(何か突破口を掴まないと……!!)


 ない頭を振り絞って、目の前の小鳥遊を無力化する方法を模索する。

 そんな俺の思惑を嘲笑するかのように、彼女は再び動き始めた。

 前脚と尻尾を使った打撃攻撃。

 流星の如く降り注ぐ超重量級の攻撃を紙一重で躱しながら、徐々に後退する。

 背後に向かってジャンプした途端、小鳥遊は口から銀色の光線を俺に向かって放つ。

 飛んできた光線を右の籠手で受け流しつつ、右足を軸にして回転する。

 そして、右の籠手の力で光線を磁石みたいに引き寄せると、俺は一回転しながら、引き寄せた光線を小鳥遊に直撃するように受け流した。

 小鳥遊に光線が直撃する寸前、彼女は目にも止まらない速さで夜空に向かって跳び上がる。

 そして、跳び上がった彼女は休む暇なく、魔弾を十数発吐き出すと、俺にそれらを浴びせよとした。

 流星群のように降り注ぐ魔弾を全て捌くため、俺は人気のない十字路真ん中まで後退する。

 そして、魔弾を磁石みたいに引き寄せながら、次々に右の籠手の力で打ち消した。

 彼女が吐き出した魔弾を全て白雷に変換したのを見届けた俺は、安堵の溜息を漏らす──と、同時に背後から人の気配を察知する。

 振り返る。

 スーツを着た女性とお菓子を持った小さい子どもが電柱の陰に隠れていた。

 母親と思わしき女性は、自分の子どもを守るためなのか、子どもを庇うように抱きついた状態で蹲っていた。

 子どもの方も破壊の限りを尽くす小鳥遊が怖いのか、ガン泣きしていた。

 小鳥遊は親子が逃げ遅れたのに気付く事なく、俺目掛けて半径十数メートル級の魔弾を吐き出す。

 俺は親子を守るため、小鳥遊を人殺しにさせないため、飛んで来た魔弾を右の籠手で受け止めた。

 瞬時に魔弾が白雷に変換されると同時に、俺は電柱の陰に隠れていた親子の下へ駆け寄る。


「早くここから逃げてください!!退路は俺が守りますから!!」


 俺の言葉に急かされるがまま、母親と思わしき女性は、子どもを抱き抱えると、その場から逃げ出す。

 ふと、女の人に抱えられている子どもと目が合った。

 子どもは人目を憚る事なく、号泣していた。

 なので、子どもを安心させようと、俺は笑顔とVサインを子どもに送る。

 子どもは俺の姿を見てくれたのか、泣くのを一旦止めてくれた。

 どんどん小さくなる女性の背後姿と不思議そうに俺の方を見る子どもの顔を見届けた俺は、振り向くついでに飛んできた魔弾に右の裏拳を喰らわす。

 瞬く間に白雷と化してしまった魔弾を横目で見ながら、俺は彼女の渾名を呼んだ。


「おい、"一匹狼"」


 無駄だと悟りながら、理性がない彼女に言葉を浴びせる。


「お前の相手は俺だ、忘れんなよ」


『なんで……どうして……!あんたは……!あんたは……!!』


 天使の力を宿した小鳥遊は、悔しそうに呟くと、忌々しげに俺を見つめ、憎悪に満ちた唸り声を上げる。

 本能に身を任せるがまま、俺との間合いを詰め始めた。

 彼女のの繰り出す殴打を無駄のない動きで躱し切る。

 彼女が広範囲の攻撃を繰り出せないように懐に入り込んだ俺は、天使の核があるであろう場所目掛けて、右の拳を振り下ろす。

 しかし、直撃したにも関わらず、衝撃と共に白雷を流し込んだにも関わらず、天使の核は破壊できなかった。

 瞬時に把握する。

 直撃寸前の所で、天使の核は安全地帯に避難した事を。

 小鳥遊の意思とは別に天使の核そのものに意思がある事を。

 その事実を拳の感触と彼女の筋肉の動きで理解する。


(天使の核を破壊するには、大量の白雷を流し込むしかないって事か……!)


 いや、そのやり方は小鳥遊の身体にかなりの負担を強いる事になるかもしれない。

 今の彼女の呼吸の仕方から察するに、多分、肉体にかなりのダメージを負っている。

 それならば、予め天使の核の動きを予知して、拳を放った方が負担を少なくできるだろう。

 だが、体内にある天使の核の動きを瞬時に見破る事は、周囲を守りながら喧嘩しているので、かなり難しい。

 ここにいる限り、俺は小鳥遊を無力化する事ができない。

 もっと集中できる場所──人気のない場所に行かなければ。

 しかし、だがしかし、人気のない所に行こうとすれば、小鳥遊からの邪魔が入る。

 どうしようもない。

 八方塞がりだ。

 今の俺では決着を長引かせる事はできても、この膠着状態の突破口を切り開く事はできない。


(考えろ……!考えろ……!!何か方法がある筈だ……!!)


 再びない頭を振り絞りながら、小鳥遊の猛攻を掻い潜る。どうしようもなくなったその時だった。


 空から赤・青・黄・緑・紫・水色の矢6本が、俺と小鳥遊の間に降り注ぐ。

 矢が放たれた方を反射的に見た。

 4階建てのマンションの上には啓太郎と美鈴、そして、魔術で矢を放ったであろう四季咲がいた。


「ジングウ。私が君を人気のない所に連れて行ってやる。だから、私に身を委ねてくれ」


 背後から半狼半人姿の狼男が現れる。

 彼の言う事に大人しく従った俺は、先程の子ども同様、左肩に担がられてしまう。


「え、この格好で移動すんの?」


「すまない、片手だと君をお姫様抱っこする事はできないんだ」


「何で俺がお姫様抱っこされたがっている風に捉えるんだ!?米俵みたいに担がられるのが嫌だって言ってんだよ!!」


「我儘言うな。ほら、天使がまた動き始めたぞ……!!」


 狼男の言う通り、四季咲が放った魔術の矢の所為で怯んでいた小鳥遊が、再び動き始めた。

 狼男は人間ではあり得ない脚力で走り出す。

 が、狼男のスピードを上回る速さで小鳥遊は、一瞬で俺らとの距離を詰めてしまう。


「くそ……!速すぎるっての……!!」


 狼男の肩から降りて、追って来る小鳥遊を対処しようとした矢先、美鈴の声が機械によって拡散される。


『お兄ちゃん!!』


 拡声器を使っているのだろう。

 彼女は俺に呼びかけると、この状況の突破口を提示してくれた。


『その籠手が本当に磁石みたいに魔力を引き寄せる事ができるなら、魔力を反発させる事ができるかもしれない!!』


 美鈴のアイデアは俺にとって目から鱗だった。

 跳び上がった小鳥遊の身体に向けて、右の籠手を向ける。

 そして、美鈴の言う通り、手元に引き寄せるイメージではなく、反発させるイメージを右の籠手に送り込む。

 すると、小鳥遊と俺達の間に何か強い力が割り込んで来た。


「うおっ!?」


 俺を背負いながら走り続ける狼男は何か強い力に背中を押されたみたいに、身体ごと吹き飛んでしまう。

 天使の力を宿した小鳥遊も同様、地面に足がついていない状態のまま、強い力に押された所為で背中から落下してしまった。


「うがぁ……!?」


 籠手の力により吹き飛ばされた俺と狼男の身体は、砂浜に落下してしまう。


(相手の魔力が大きければ大きい程、反発の力も大きくなるって事か……!?)


 周囲を見渡す。

 海開きしていない影響なのか、砂浜には人っ子1人見当たらなかった。


「ありがとう、狼男っ!お前は今すぐここから離れてくれ!あとは俺が何とかする!!」 


「あ、……ああ。死ぬなよ!」


 彼がこの場から離脱すると同時に俺らの後を追って来た小鳥遊が現れる。

 渇いた砂浜の上では走り辛いと判断した俺は、波打ち際まで走った。

 水に濡れてそれなりの固さを保っている足場まで移動した俺は、右の拳を握り締め、迫り来る巨大オオカミと化した小鳥遊と向かい合う。 


「……本気の喧嘩するのは、これで2度目、だよな」


 初めて小鳥遊と会った時の事を思い出す。

 あの時も彼女に手加減を加える事ができなかった。

 いや、あの時だけではない。

 彼女に喧嘩を売られる度に、俺は彼女から逃げていた。

 理由は至って簡単。

 彼女の喧嘩を買ってしまったら、無事で済まないからだ。  

 俺も彼女も。

 だから、初めて会った時以降、俺は彼女から売られた喧嘩を買わなかった。

 逃亡や不意打ちなどでお茶を濁した。


 ──だが、今回は逃亡も不意打ちもお茶を濁す事もできない。

 小鳥遊の喧嘩を買わなければ、民間人に危害が及ぶ。

 小鳥遊の喧嘩を買わなければ、彼女は天使の力に支配され続ける。

 美鈴の時と同じように、天使の力の所為で小鳥遊本体にかなりの負担がかかるようになるかもしれない。

 だから、今回は逃げられないのだ。

 いや、逃げる気もない。

 真正面から彼女を打ち負かす。


「来いよ、"一匹狼"」


 覚悟を決めた俺は、棒立ちの状態で決意の言葉を口にする。


「お前じゃ俺には勝てねぇよ」



 ──それが開戦の狼煙だった。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれている方、そして、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、本当にありがとうございます。 

 次の更新は明日の12時頃を予定しております。

 これからも皆様が楽しめる物語を書いていきますので、完結までお付き合いよろしくお願い致します。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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