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4月23日(1) VS一匹狼/天使ミカエルの巻

 白銀の魔力を身に纏った爪がアスファルトの地面を切り裂く。

 天使の力を宿した銀色で巨大で憎悪に駆られたオオカミ──天使に身体を乗っ取られた小鳥遊神奈子の一撃を紙一重で躱した俺は、彼女から大きく距離を取った。

 体勢を整えた俺は、息を短く吐き出すと、右の拳を握り締める。


「おい!"一匹狼"!!理性があるなら返事しろ!!」


 小鳥遊弟の姉であり、人狼であり、俺と同じクラスに所属している"一匹狼"──小鳥遊神奈子の渾名を呼ぶ。

 けれど、彼女は唸り声を上げるだけで俺の言葉に反応しなかった。


「おい、小鳥遊!しっかりしろ!!天使の力に呑まれる程、お前は弱っちい……」


『どうして!!』


 くぐもった小鳥遊の声が響き渡る。

 彼女は天使の力で巨大化した身体をフルに活用すると、前脚で俺の身体を叩き潰そうとする。

 全力で地面を蹴った俺は、何とか彼女の攻撃を躱す事に成功した。


「………っ!!」


 地面に彼女の足跡が刻まれる。

 それと同時に衝撃波が生じた。

 周囲の空気が衝撃により振動する。

 衝撃波をモロに受けた俺の身体は、無様に地面の上を転がると、高速道路に設置されている遮音壁に叩きつけられてしまう。

 何とか避け切れたので、痛みはそこまでない。

 が、もし彼女の一撃を喰らってしまったら、間違いなく異世界転生してしまう事実には変わりない。

 それくらい、今の彼女の一撃はヤバイ代物だった。


「……力尽くで止めるしかないって事か」


 憎悪に満ち溢れた視線を投げかける"一匹狼"小鳥遊神奈子の成れの果てを睨みつけながら、ゆっくりと立ち上がる。


 金郷教の時──ガイア神に身体を乗っ取られた美鈴の時と同じシチュだ。

 彼女の身体の中にある天使の力を引き出している核を破壊すれば、彼女は正気に戻る。

 きっと彼女の身体の何処かに、天使の力を宿した核がある筈だ。


 そんな事を考えていると、遠くから車のヘッドライトが俺と天使と化した小鳥遊を照らし上げる。

 遠くから車が迫り来る事を知覚した俺は、急速に危機感を募らせる。

 このままでは民間人に危害が及んでしまう。

 そう判断した俺は、瞬時に遮音壁を乗り越えると、都市高速道路の下にある低い建物の屋上目掛けて、飛び降りた。


 俺の後に続いて、天使と化した小鳥遊も飛び降りる。

 高さ15メートルから落下した俺は、3階建の古びたオフィスビルの屋上に着地すると、そのままの勢いで屋上から地上目掛けて飛び降りた。

 俺の後を追ってきた小鳥遊は、両前脚を屋上の地面に減り込ませると、再び飛び降りた俺を追うためだけに地面に墜落する。

 そして、地面に着地したばかりの俺目掛けて、膨大な魔力を纏った太く逞しい尻尾を振り下ろした。

 五点着地したばかりの俺は瞬時に起き上がると、空から降り落ちる重量級の一撃を紙一重で回避する。

 尾による一撃により、アスファルトの地面はまた抉れてしまった。

 飛び散ったアスファルトの破片は、俺の身体に当たる事なく、周囲の建物の壁や窓に突き刺さる。

 静寂に包まれた町から人々の悲鳴が聞こえ始めた。


(さっさと人気のない所まで、こいつを誘導しないと……!!)


 人気のない所を目で探す。

 周囲はマンションやオフィスビルが立ち並んでおり、パッと見、人気のない場所は見当たらなかった。


(海の方に行けば、何とか……!)


 小鳥遊に背を向け、俺は海の方へ走り出す。

 が、小鳥遊は一足飛びで俺の頭上を飛び越えると、俺の行手を阻むかのように、立ちはだかった。


「やっぱ天使に乗っ取られても、しつこい奴だな、お前は……!!」


 人気のない所で喧嘩するのではなく、瞬殺する方針で駆け始める。

 全速力で小鳥遊との間合いを詰めようとした矢先、彼女は尻尾を12本に分割すると、その尻尾の先から細い光線を放ち始めた。


「くそっ!」


 近隣の住民に被害が出ないように、右の籠手の力で細い光線を引き寄せる。

 光線は軌道を変えると、俺が着けている右の籠手に直撃すると、一瞬で白雷に変わってしまった。

 もう1度、間合いを詰めようと動き出すが、今度は両脚を使った攻撃により、避けざるを得ない状況に追い込まれた俺は、バックジャンプをする事で何とか回避する。


「くそ……!近づけねぇ!」


 否、近隣の住民に被害が出ないような形で勝負を決める事ができない。

 今の攻撃も周囲の状況を省みる事なく、闇雲に突っ込めば、小鳥遊の中にある天使の核を破壊する事ができただろう。

 しかし、彼女の細かい動きや視線、呼吸の仕方から察するに、俺が彼女の攻撃を避けながら間合いに入り込んだとしても、彼女は広範囲の攻撃を繰り出して、周囲に危害を加えるに違いない。

 加えて、俺は4足歩行の相手と喧嘩した経験が少ない。

 そのため、彼女の動きを先読みし辛い状況に陥っているのだ。

 今、彼女の攻撃を何とか避けられているのは、先日、魔女と喧嘩した経験があるからであり、もしその経験がなかったら、俺はとうの昔にやられていただろう。

 "情けは人の為ならず"とは良く言ったものだ。

 日頃の行いは大切なのだという事を改めて理解させられる。


「なら、これはどうだ!」


 右の籠手の力を最大限に引き出し、小鳥遊の巨体を俺の方に引き寄せようとする。

 魔力を持つものにのみ作用する不思議な電磁力で、小鳥遊を間合いに引き込もうとするが、彼女の抵抗力は凄まじく、彼女はピクリとも動かなかった。

 どうやら抵抗する力がない程に追い詰めないと、意志ある対象を引き寄せる事はできないらしい。


「クソ……!」


 手詰まりだ。

 周囲の人を守りながら、天使の力を宿した小鳥遊を無力化する。

 それは右の籠手を使ってもかなり難しいものだと改めて認識した。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、そして、ブクマしてくださった方や評価ポイントを送ってくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 そして、新しくブクマしてくださった方に厚くお礼を申し上げます。

 これから先、本編はずっとアクションシーンだらけなので、アクションシーン大好きな方は楽しみにしてください。

 また、4万PV達成記念短編と5万PV達成記念PVは「人狼騒動編」が終わった後、投稿致しますので、よろしくお願い致します。

 次の更新は明日の12時頃を予定しております。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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