4月22日(14)VS怪しい魔導士/VS銀色オオカミ
6階の大広間に入った俺が目にしたのは、血だらけのオオカミ十数匹と返り血を浴びた魔導士5人の姿だった。
「──っ!?」
素人目でも分かる程に重傷を負ったオオカミを見た瞬間、カッとなってしまう。
魔導士達は今まで闘ってきた奴等とは違う雰囲気を見に纏っていた。
着ている服もスーツではなく、藍色のローブを見に纏っており、頬には赤い紋章が刻まれている。
……見るからにヤバイ奴らだった。
魔導士達は俺を視認するや否や火・水・風・土の魔弾を俺に向かって撃ち始めた。
先程と同じように魔弾を紙一重で躱した俺は、奴等の魔力でできた盾を掻い潜り、彼等の顔面に全力の拳と蹴りを叩き込む。
たったそれだけの攻撃で、彼等は意識を失ってしまった。
「大丈夫かっ!?意識はあるかっ!?」
右の後脚から血を大量に溢しているオオカミ──オオカミ博士じゃないから性別はどっちか分からん──の下に駆け寄った俺は、急いでジャージを脱ぎ捨てると、破いたジャージを用いて、オオカミの右脚の付け根付近を縛り上げる。
気休め程度にしかならないが、何もやらないよりかはマシだろう。
他のオオカミ達の傷を見る。
彼等は頭から出血していたり、胸に火傷の痕を負っていたりなど、とてもじゃないが、今の俺の装備では対処できない傷を負っていた。
特に頭から血を流しているオオカミは、今すぐにでも清潔な布で押さえないと失血死してしまうくらいの勢いで血を流している。
動揺した俺は、藁にも縋る思いで比較的に傷が浅い人狼と思わしきオオカミ達に声を掛けた。
「おい!誰か清潔な布を持っていないか!?消毒的でも何でも良い!」
彼等は俺の言葉を理解したらしく、首を横に振った。
このまま放置していたら、目の前にいる人狼達は死んでしまう。
何か良い方法がないか、必死になって考えていると、先程応急処置の道具を買った四季咲の顔を思い出した。
「この中で動ける奴はこのビルの下にいる小鳥遊弟……小鳥遊神奈子の弟を連れて来てくれ!!彼と一緒にいる女の子が応急処置の道具を持っている!!だから……」
軽傷の人狼達に悪いと思いながら、俺は指示を飛ばす。
着ていたジャージを更に裂き、前脚から血を流している人狼の血を止めるため、前脚の付け根を縛り上げようとする。
その時だった。
──部屋の隅に倒れていた銀色のオオカミが立ち上がったのは。
人狼だ。
奴は筋肉を膨張させたかと思いきや、辛うじて残っていた窓を粉砕するくらいの声量で雄叫びを上げ始めた。
部屋全体が激しく揺れる。
ひび割れた壁は更に崩れ、部屋に残っていた机は風に吹かれた紙のように飛んでいってしまう。
幸いな事に怪我をした人狼達の方に机や椅子は飛んで来なかった。
(咆哮だけで椅子や机を吹っ飛ばすのかよ……!?)
咆哮を上げた──大きな体躯をしたオオカミを視界に入れる。
そいつを見ていると、何故かガイア神と魔女を思い出した。
本能で悟る。
奴の身体の中に天使の一部が入っている事を。
理性で悟る。
奴は怒りによって天使の力を引き出したのだと。
奴は咆哮するのを止めると、俺達の方に顔を向ける。
その時、初めて俺は奴の目を見た。
──奴の目には理性の光が灯っていなかった。
「くそっ!!」
奴が暴走する事を直感した俺は、天使の力の一部を引き出したであろうオオカミとの距離を詰める。
奴は俺の存在に気づくや否や右前脚の爪で俺を引き裂こうとした。
落ちていた机だったものを利用して、高さを稼いだ俺は、なんとか奴の頭上を飛び越える事に成功する。
窓際の方へ移動した俺を脅威と認識した奴は、傷ついた人狼に目をくれる事なく、先程倒した魔導士達の方に行ってしまった。
「しまった……!」
慌てて暴走状態のオオカミの背を追う。
しかし、たかが人間並みの脚力しか持っていない俺では奴の暴行を止められそうになかった。
奴は気絶した魔導士達との距離を文字通り一瞬で埋めてしまう。
そして、転がっている男の首筋目掛けて、牙を立てようとした。
足を懸命に動かす。
しかし、人間如きの脚力では極限にまで強化された獣に追いつく事は敵わなかった。
このままでは人が死んでしまう。
原因は至って明瞭。
俺が考えなしに奴の攻撃を避けたから。
俺が奴の憎悪の矛先を見誤ったから。
俺が魔導士達を気絶させてしまったから。──俺のやらかしが人の命を奪う原因を作ってしまった。
「や、やめ……」
牙を剥き出しにした獣が人の命を刈り取ろうとする。
それを止めようとするが、俺の手は届かない。
血の気が引くのを自覚する。
自分の無力さと愚かさを再認識してしまう。
死なずに済んだ筈の命が、眼前で失われるのを、ただ見る事しかできない自分の無力さを痛感してしまう。
「──悪い、ジェントルマン。今、この人達が死んだら、とても困るんでね」
暴走するオオカミを止めたのは、狼男だった。
二本足で立つオオカミと化した彼は自分の右腕を犠牲にして、魔導士達の命を守る。
右腕で奴の牙を受け止めた所為で、狼男の右腕は千切れてしまった。
食い千切られた狼男の右腕から夥しい程の血が噴出し始める。
彼は苦痛により顔を歪ませると、未だ健在であるオオカミの腹を蹴り上げた。
狼男の蹴りにより、銀色のオオカミは窓際まで吹き飛ばされてしまう。
俺は飛んできたオオカミを紙一重で避けると、重傷を負った狼男の名を呼んだ。
「狼男っ!!」
「油断するなっ!まだ、そいつは止まっていないぞ!!」
狼男は千切れた右腕の付け根を押さえながら、俺に注意を呼びかける。
彼の言った通り、銀色オオカミは動きを止めていなかった。
奴は自分に危害を加えた狼男と魔導士を血走った目で見つめる。
俺なんか眼中に入っていなかった。
「おい、銀色オオカミ」
自分の声がドスの効いたものに変貌している事を否応なしに自覚させられる。
「お前の相手は俺だ」
いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方に厚くお礼を申し上げます。
皆様のお陰で「価値あるものに花束を」のブクマ件数が120件になりました(3月30日12時時点)。
本当にありがとうございます。
これからも文芸アクション部門ランキング1位を獲る事を目標に頑張って更新致しますので、応援よろしくお願い致します。
明日の更新の件について、もう1度この場を借りて告知致します。
3月31日の『価値あるものに花束を』本編の更新は8時・10時・12時・14時・16時・18時・20時・22時に予定しております。
また、ブクマ100件記念用の短編「価値あるものに花束を3月31日編」は以下URL(https://ncode.syosetu.com/n5024gw/)にて、3月31日10時・11時・12時・13時・14時・15時・16時・17時・18時に更新する予定です。
短編の方は3月31日10時頃から4月7日23時59分までの限定公開を予定しております。
もしよろしければ、明日の10時から更新致しますので、よろしくお願い致します。
また、「価値あるものに花束を」と繋がりのある新連載も、この場を借りて告知致します。
『王子の尻を爆破して指名手配犯になった悪役令嬢とコスパが悪過ぎるという理由で追放された魔導士と自由を求めて奴隷になった王女様と浮島に呼び出された俺。〜頼むからお家に返して…え?んな事言ってももう遅い?〜』は、明日11時から連載を予定しております。
王子のケツをロケット花火で爆破して指名手配犯になった令嬢が、下界から召喚した主人公と共に浮島『アルカディア大陸』を冒険する感じの物語です。
毎日更新の『価値あるものに花束を』と違い、新連載の方は不定期更新を予定しておりますが、こちらも読んでくださると嬉しいです。
明日は沢山更新致しますので、よろしくお願い致します。




