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4月22日(9) 「デメリット?」の巻

「ほう、どういう心変わりだ、副団長。君達『magica』の魔導士は、"魔族に人権は必要ない"と豪語していたような気がするが」


 不機嫌そうにレイリーはテリヤキ君を睨みつける。

 テリヤキ君はニヤリと微笑むと、偉そうな態度を取り始めた。


「私は出世したいのですよ。私は凡人であるため、"神十魔導士"という神に近い魔導士になる事はできない。また、魔導士としての才能がない以上、『magica』という組織の重鎮にもなる事も難しいのだろう。あのガキ(だんちょう)よりも魔導士としての才能はないが故に、私はこれ以上出世できないのだ」


「で、テリヤキ君は何が言いたいんだよ」


「ここまで言って、まだ分からないのか。出世のためなら、私は何だってやるって事を言いたいのだ。生まれながらにして悪である魔族のために一肌脱ぐのは、あまり気乗りしないが、まあ、出世に繋がるなら……あひぃん♡」


 鉄のオムツが小刻みに震えると同時に、テリヤキ君の口から気持ち悪い声が漏れ出る。


「司くぅん、流石に人選ミスじゃない?こんなあからさまに魔族を見下している人間を英雄に仕立て上げるってのは、無理があると思うよ」


 半ば呆れながらバイトリーダーはリモコンを弄ぶ。


「確かにバイトリーダーの言う通りだな。こいつが正義感に駆られて、人狼達を救ったっていうストーリーラインは無理があり過ぎる。多分、こんな奴ってのは他の人にも知れ渡っているだろうし」


「それなら他のストーリーを用意すれば良い。たとえば、暴走する"絶対善"を止めるために仕方なく人狼達と協力したとか」


「要は"絶対善"を悪に仕立て上げなければいけないって事か……魔族イコール悪という前提がある以上、余程の理由がない限り難しいと思うぞ」


「一旦、差別撤廃は諦めたらどう?ほら、二兎を追う者は一兎をも得ずって言うじゃない?とりあえず、今は"絶対善"を倒す事に集中するべきだとお姉さんは思うよ」


「それだと第2、第3の刺客が現れる事になるだろう。仮にジングウツカサが"絶対善"を倒したとしても、今度は"絶対善"以上の戦力が、この地に投入されるかもしれない」


「じゃあ、"絶対善"を悪に仕立て上げた上でテリヤキ君が得する方法を考えなきゃいけないって事か……」


「あひぃん♡あひぃん♡」


「バイトリーダー、今すぐリモコンのスイッチ止めろ」


 俺とバイトリーダー、そして、レイリーは喘ぎ声を漏らすテリヤキ君を尻目に話し合う。美鈴達は話に割り込む事なく傍観していた。


「まあ、仕方ない。愛する司くぅんのために、私が一肌脱い……」


「なあ、美鈴、小鳥遊弟、ついでに四季咲。何か良いアイデアはないか?」


 バイトリーダーが何か言いかけていたが無視。

 今までの経験上、この前振りでまともな意見出た事ないし。


「メリットはまだ思いついていないが、デメリットだけは幾つか思いついた」


 先ず口を開いたのは四季咲だった。


「ん?デメリット?」


「ああ。先ず前提として聞きたいのだが、……テリヤキ君とやら人狼は民間人に危害を及ぼしていないのだろう?」


 股間の刺激が収まった事で冷静さを取り戻したテリヤキ君は、火照った顔のまま、四季咲の質問に答える。


「ああ、今のところそのような報告は受けていない」


「民間人に危害を及ぼしていないにも関わらず、『magica』の魔導士百数人が何日もかけて人狼を追う理由は?」


「"絶対善"の独断だ。第3師団の決定権は団長である奴にあるからな。奴は魔族という種に深い憎しみを抱いており、それ故に他に重大な事件が起きたとしても、魔族狩りの方に注力するという悪癖がある。現に今もイギリス王室から緊急招集受けているにも関わらず、あのガキは人狼狩りに熱を………」


「『magica』の魔導士達にとって、この地にいる人狼は客観的にどう判断しているのだ?」


 四季咲はテリヤキ君の嘆きに耳を貸す事なく、単刀直入に質問だけを投げかける。

 ちょっとくらい彼の嘆きを聞いてあげてよ。

 彼、トラックに撥ねられたり、見知らぬ女の子にマゾ調教されたりして、悲惨な目に遭ってんだぞ。


「それ、全部お兄ちゃんの所為だよね」

 

 美鈴、ナチュラルに俺の心を読んで存在感出すんじゃねぇ。


「この地にいる人狼だけでなく、危険度が低い魔族は何かしらの事件を起こさない限り、敢えて放置している。捕縛するにしても殲滅するにしても金や時間を浪費してしまうからな。『magica』の魔導士達は世界中で起きている魔法絡みの事件を対処しなければならない。そのため、余程の事情がない限り、基本的に魔族を放置している」


「あんたらの主張って訳分からないな。魔族は生まれながらにして悪なんだろ?余程の事情がないからって悪を放置していいのかよ」


 頭がこんがらがってきたので、素朴な質問をテリヤキ君に打つける。


「貴様は優先順位をつけられない程、愚かなの……あひぃん♡」


 馬鹿にされたと思った俺はバイトリーダーからリモコンを奪い取り、テリヤキ君の敏感な所を責めまくる。

 四季咲は事情を察する事なく、テリヤキ君に若干引きながら質問を続けた。


「なるほど。つまり、魔族に強い憎しみを抱く"絶対善"が私怨により『magica』第3支部を動かしているという事だな。大体事情は分かった」


「い、……一応補足しておこう。確かに私怨ではあるのには間違いないが、"絶対善"の活動は『magica』から公的な活動として認められている」


「神十魔導士であるから認められているのか?それとも団長だから認められているのか?」


「両方だ。神十魔導士であるから私怨で動いても許されている。団長だから第3師団を動かす事を許されている。元々、神十魔導士という肩書きは『magica』という組織が権威を保つため、無理矢理作り出したものだ。そのため、自分達の組織の権威である神十魔導士達を無碍にする事はできない」


「最後にもう1つだけ質問させて貰いたい。何故、"絶対善"は『magica』第3支部の団長になったのだ?」


「"絶対善"の要求だ。神十魔導士の肩書を貰う際、師団を1つ動かす権利を要求した。『magica』は自分達の指示に従う事を条件にその要求を呑んだのだが……」


「今回のように殆ど指示に従わない事が多いと」


「ああ。だが、奴は危険度が高い魔族を優先的に狩っているので、『magica』も奴に口出しする事はできていない」


「が、不必要な行動をしているのは事実と」


「ああ。今回のように緊急の任務が入ったとしても、魔族絡みでなければ、魔族狩りの方を優先する」


「なるほど。情報提供ありがとう、テリヤキ君。君のお陰で幾つかデメリットを見出す事ができた」


「……?」


 俺と小鳥遊弟は同時に首を傾げる。

 ブルータス、お前も (話についていけていないの) か。

「ああ、このまま"絶対善"に第3師団の団長をやらせていた際に生じるデメリットをな。そして、そのデメリットの解消案を」




 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくれた方、本当にありがとうございます。

 本日12時時点、ブクマが増え、そして、総合評価ポイントも300ptを超える事ができました。

 新しくブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方に厚くお礼を申し上げます。

 ブクマや評価ポイントは執筆の励みになりますので、感謝してもし足りません。

 本当にありがとうございます。

 

 次の更新は13時頃に予定しております。

 また、本日の14時頃に3万PV達成記念短編を投稿致します。

 ショートストーリー集なので薄口ですが、よろしくお願い致します。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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