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4月22日(7)カラオケ店にて奴を待つの巻

 水曜日の午前12時。

 俺、美鈴、小鳥遊弟、四季咲、そして、狼男レイリーはカラオケに来ていた。


「なあ、何で僕らはここにいるんだ?」


 誰もが1度聞いた事ある民謡を熱唱する美鈴のリズムに合わせてマラカスを振りながら、俺は右隣に座っている小鳥遊弟の質問に答える。


「ここで待ち合わせしているから」


「何でここなんだ?」


「久しぶりにカラオケ行きたかったから」


「兄ちゃんの私利私欲かよ!?」


「ああ、それの何が悪い!?」


「開き直った!」


「良いじゃん、空き時間に遊んだって。ほら、ここ数日息抜きしてなかったし」


「かなりの頻度で息抜きしてたと思うんだけど!?」


「タカナシ君、息抜きの時間は必要だ。いや、むしろ息抜きこそ人生と言っても過言ではない」


 そう言いながら、狼男であるレイリーは大人の笑みを浮かべながら、タンバリンを叩いていた。


「……いや、何でお前、呑気にタンバリン叩いてんだよ」


 小鳥遊弟は左隣に座っているレイリーを眺めながら、頭を抱える。


「場の空気を盛り上げるためだ。もしや、鳴り過ぎて彼女の声を掻き消してしまったか?」


「だから、言っただろ。タンバリンは煩過ぎるって。ほら、俺のマラカス貸すから」


「ああ、ありがとう」


「いや、そうじゃなくて……てか、何でお前ら仲良さそうなんだよ!?さっきまで命の駆け引きしてただろ!?なのに、何でそんな和気藹々できるんだ!?」


 マラカスを持った俺とレイリーは同時に首を傾げた。


「別にこれくらい普通だろ。もう喧嘩する理由ねぇんだし」


「タカナシ君、私はスペシャリストだ。公私混合なんて2流の真似はしない」


「そうそう、終わった喧嘩を引き摺るのは雑魚がやる事だぞ」


「……そういうもんなのか?」


「「そういうもんだ」」


 歌い終わった美鈴は四季咲にマイクを手渡した。

 四季咲は困ったような表情を浮かべると、俺とテレビ画面を交互に見始めた。


「ん?どうした、四季咲」


「い、いや、呑気に歌を歌っていいものなのかと……ほら、私達がカラオケに興じている間にも事態は進んでいるのだろう?」


「その点は安心したまえ、シキサギ君。この地にいる『magica』第3支部の魔導士達は、今現在人狼ではなく、行方を眩ました第3支部副団長を探している。魔導士達に指示を飛ばしている副団長が見つからない限り、人狼捕獲作戦は再開されない」


「その副団長とやらは何故行方を眩ましたのだ?」


 四季咲は不思議そうな顔をして疑問を口にする。

 何故か美鈴と小鳥遊弟だけはこっちを見ていた。


「それは行方を眩ました本人にしか分からない。一昨日の晩、部下108人を引き連れて天牌山に行って、行方を眩ました事だけは確かだ」


「天牌山か……もしかしたら、冬眠明けの熊に襲われたかもな。ほら、最近暖かくなってきたし」


 俺の言葉を聞いた途端、美鈴と小鳥遊弟は物凄い勢いで頭の上に"!?"の文字を表示した。


「熊かどうかは定かでないが、天牌山に副団長のような実力者をのせる者が潜んでいる事は確かだ」


「その副団長とやらはどんだけ強いんだ?神十なんとかと同じくらい?」


「副団長は国1つ滅ぼす事ができる神十魔導士よりも弱い。上級魔導士……と、言っても分からんか。たった1人で数万人の軍人を倒せる猛者……と、言ったら伝わるだろうか」


「たった1人で数万人倒せんのか。その副団長とやらはめちゃくちゃ強いんだな。もし喧嘩する事になったら、かなり苦戦を強いられそうだ」


 またもや美鈴と小鳥遊弟が信じられないようなものを見るような目で俺を見て来る。


「加えて、"絶対善"はこの地にいる人狼全591名を『magica』本部に連行するための乗り物を手配していて、身動きが取れない状況に陥っている」


「つまり、『magica』の魔導士達は、今現在、指揮系統を取る人間が不在であるため、身勝手な行動を取れない、と」


「そういう訳だ。故に今現在、人狼達が魔導士達に追いかけられている可能性は限りなく低いと考えて貰った方が良い。……まあ、魔導士達の目の前に人狼達がいたら話は別だと思うが」


「あー、なるほど。だから、そんなに魔導士達と遭遇できていなかったのか」


 魔導士達のエンカウントの低さに納得していると、四季咲は難しそうな顔をして、レイリーに質問を投げかけた。


「で、その情報は本当に正しいものなのか?」


「ん?四季咲、どういう意味だ?」


「彼の発言の裏を取ろうと思ってな。もしかしたら、彼は『magica』側の刺客で私達を騙しているかもしれない。『magica』側と繋がりがある以上、石橋を叩いて渡るくらい警戒した方が私達のためだ」


「なるほど、確かにシキサギ君の言う通りだ。だが、私は『magica』側の人間と繋がりを絶った証拠を君達に提示できそうにない。加えて、私が君達に提供した情報も文章や映像などで残していない。ので、君達に信用に値する証拠を与える事はできそうにない」


 狼男は右手首から血を流し始めると、その血を剣に変形させる。

 それを見た瞬間、美鈴と四季咲、そして、小鳥遊弟は緊迫した表情を浮かべ始めた。

 彼から殺意や悪意を感じなかったので、俺はぼんやりと血の剣を眺める。


「なので、信用を獲得するために私の左腕を斬り落とそう。それで少し信用してくれるか?」


 平然とした様子で腕を斬り落とそうとするレイリーを見て、俺以外の奴らは顔を痙攣らせる。

 これ以上、静観したら美鈴達のトラウマになってしまうと判断したので、俺は口を挟ませて貰う事にした。


「こいつらの教育に悪いから、腕を斬り落とすのは止めてくれ。んな事しなくても、俺はお前の事を信じているから」


「信用に値する証拠がないのにか?」


「信じなきゃ何も始まらねぇだろ。大丈夫だ、裏切った時はお前をボコボコにするから」


 カラオケルームに何とも言えない空気が漂う。

 この空気をぶち壊したのは、四季咲が持っていたスマホだった。

 スマホはワンコール分だけ震えると、何事もなかったかのように停止してしまう。


「神宮、どうやら君が呼んだ人……サディスト透子とやらが、到着したようだぞ」


「大体承知、今から迎えに行って来る。お前らは続きでも歌って……」


「──いや、その必要はないよ」


 聞き覚えしかない声が、ここにいる筈のない声が、カラオケルームの出入り口から聞こえてきた。

 心臓を鷲掴みにされたような感覚が俺の脳裏に走る。

 額に滲み出る冷や汗。

 俺は慌てて席から立ち上がると、急いで出入り口から1番遠いソファーの上へ跳んだ。

 豪快に開かれる扉。

 狭い個室に侵入する黒い影。

 カラオケルームに入って来た何者かは、俺の名前を呼びながら、瞬く間に俺との距離を詰める。

 美鈴達に危害が及ばないように気をつけながら、俺は侵入者目掛けて全力の拳を振るった。

 絶対に避けられないであろうタイミングで放った筈の一撃。

 並大抵の相手ならこれで倒せるような攻撃。

 にも関わらず、侵入者は俺の会心の一撃を難なく避けると、俺の胸倉を掴んだ。

 慌てて次の攻撃を放とうとする。

 が、侵入者は俺が攻撃を仕掛けるよりも速く、俺に寝技をかけた。 


「ぎゃああああああ!!!!」


 俺の断末魔が狭い個室に響き渡る。


「司くぅん!いやー、会えて嬉しいよー!!最近、金郷教のアレコレとか天使の何コレとかやってたら、全然時間取れなくてさ!!あ、さっきの攻撃、中々いい線突いてたと思うよ!まあ、お姉さんにはあんなの (笑)通じないけどね!!」


「ちょ、ギブギブ!もう負けたから!負けたから!!さっさと解放しろ!!って、力強めるな、ぎゃああああ!!!!」


 身動きが取れない俺は、部屋に入って来た侵入者──バイトリーダーに降伏宣言する。

 にも関わらず、彼女は手を緩める事なく、俺の身体を痛めつけた。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、過去にブクマ・評価ポイント送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方にお礼を申し上げます。

 

 3万PV達成記念短編の件ですが、3月26日き金曜日13時頃に投稿する予定です。

 ショートストーリー集なので、本編とはあまり関係ありませんが、読んでくれると嬉しいです。

 これからもよろしくお願い致します。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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