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4月21日(14) 「それ、ベンチにいる奴にかける言葉!!」の巻

「頑張るって……魔術とかで手がかりを掴むのか?」


「いや、魔術よりも便利かつ誰でも使える技術がある」


 俺はホテルの部屋に設置されたパソコンを指差す。


「そうか……!SNSで姉ちゃん達の写真を拡散すれば……!」


「いや、そのやり方じゃお前らの顔写真が半永久的に電子の海に漂う事になる。デジタルタトゥーって奴だ。後々厄介な事になりかねん。それよりも確かなやり方がある」


「ネットの検索エンジンのリアルタイムで"人狼"って調べるつもりか?」


「いや、さっきネカフェにいた時、それをやったが、人狼の"じ"の字さえ出なかった。だから、やり方を変える」


「え、そんなアホみたいな方法、ガチでとったの?」


 俺はパソコンでSNSのサイトを開くと、検索欄の所に『新神 外国人』というワードを入れる。


「な、もしかして……兄ちゃん」


「今、日本を含めたアジア圏の国の人は長期に渡る冷戦の影響で入国制限をしているらしい。現在、日本にいる外国人は政府高官か貿易商、その他諸々の立場ある人達。そして、人狼を捕獲するために東雲市にやって来た『magcia』の魔導士達だ。観光客が殆どいないかつガンマ民族(にほんじん)しかいない国じゃ、ほぼアルファ民族で構成されている魔導士達の集団は否応なしに目立ってしまう」


「いやいや、そんな方法で探せる訳ないって。わざわざ外国人を見かけたからって、わざわざSNSで報告する奴なんていると思うか?」


「いる。SNSは手軽に自己承認欲求を満たせる場でもあるからな。バズり人になるためなら、たとえ嘘を吐いてでも注目を集めようとする人が少なからずいる。そんなバズりたくて仕方ない人達が滅多に対面する事ができない外国人と会ってみろ。被写体に断りを入れる事なく、写真を取るに違いない」


「な、……なるほど……!!兄ちゃんって思っていたより頭が良いんだな……!!」


 ドヤ顔を披露しながら、俺は電子の海を泳ぎ始める。

 しかし、幾ら探しても有益な情報は殆ど得られなかった。


「くそ……!!偽外国人が多過ぎる……!!」


「ダメじゃん!!」


 今の時代、金さえ払えば髪の色も顔の形も挙げ句の果てにはカラーコンタクトで瞳の色も変えられる。

 なので、SNS上には似非外国人が沢山生息していた。

 お陰でどれが本物の外国人か判別つかない。


「今まで意識してなかったけど、日本人だと顔の造形は、アルファ民族の人とベータ民族の人とちょっと違うんだな。よくよく見ると、あっちの人の方がちょっと鼻高くて彫りが深い」


「よくよく見ればの話だけどね。外国人……特にアルファ民族の女性の人は肉付き良いらしいし」


 大雑把に──個人差という点から目を背ける──民族毎に分けると、アルファ民族は少しだけ横に大きく、ベータ民族は筋肉質で、ガンマ民族は中肉中背の体型をしている。

 そのため、アルファ民族やベータ民族の振りをするガンマ民族(にほんじん)は中肉中背であるため、本物の外国人と見比べると何か物足りない。


「あ!兄ちゃん、さっきのページ戻って!!」


 流れ作業のように画像を見ていると、急に小鳥遊弟は俺に制止を呼びかけた。

 彼の言う通り、前のページに戻る。


「これ!あいつじゃねえの!?」


 すると、見た事のある顔が映っていた。


「あ、テリヤキ君じゃん」


 先週の日曜日にSNS上で投稿された写真を見る。

 写真の中の彼等がいる場所は見た事あった。

 新神駅近くにある地下通路──新神駅と地下鉄を繋いでいる通路。地下通路の中には商業用の店が並んでいる──だ。


「テリヤキ君の近くにいるこいつらは……天牌山で殴り飛ばした奴らだな。……あ、こいつはまだ殴り飛ばしていない」


 俺はテリヤキ君の少し前を歩く金髪緑瞳の少年──顔の彫りは深いが中肉中背、目つきが悪いのが特徴──を指差す。


「歳は俺と同じくらい……身長は大体160センチ後半。筋肉はほとんどなく、猫背気味。一見、雑魚のように見えるが……」


「どうしたんだよ、兄ちゃん。この外国人の事がそんなに気になるのか?」


「ああ、なんとなくな。こんな曇ったガラスみたいな目を見てしまうと、否応なしに意識してしまう」


 写真を上げた人の電子的呟きにざっと目を通す。

 どうやらこの画像の投稿主はスーツを着た外国人が、束になって歩いているのを物珍しいと思って投稿したらしい。


「……もしかして、これが"絶対善"なのか……?僕の家族を襲った……」


「いや、今の情報量で断言するのはまだ早い。これが"絶対善"とは限らないし」


 結局、ロクな情報は掴めなかった。


「ん?何をしているんだ?」


 バスローブを着た四季咲は不思議そうな顔をして、ネットサーフィンしている俺達を見る。


「あ、この人、テリヤキさんじゃん」


 バスローブを着た美鈴はパソコンの画面に映った写真を見る。


「なるほど。SNSを活用して行方を探っていたのか」


「手掛かりは全くなかったけどな、残念なことに」


 昼間と夕方にやった聞き込み調査でも小鳥遊一家はおろか『magica』の魔導士らしき外国人の目撃情報はなかった。

 多分、人狼も魔導士も他の所にいるのだろう。

 もしかした。人目のつかない所にいるのかもしれない。


「くそ……また振り出しに戻ったか」


「いや、振り出しにまでは戻っていないよ」


 美鈴は俺の言葉をやんわり否定すると、小鳥遊弟と四季咲を指差す。


「小鳥遊君の嗅覚と四季咲さんの魔術による魔力探知を組み合わせれば、魔導士と人狼さん達を特定する事ができる。ちょっとだけど、ちゃんと前に進んでいるよ」


「あ、あの、美鈴さん、その前進に俺は何も貢献できていないような気がするんだけど……」


「大丈夫だよ、お兄ちゃん。貢献できていないのは事実だから!!」


「着実にバイトリーダー(おねえちゃん)の影響受けているな、お前!!」


 美鈴の辛辣な物言いにバイトリーダーの面影を見出してしまう。


「神宮、君は私達の秘密兵器だ。来るべき時まで力を蓄えていて欲しい」


「それ、ベンチにいる奴にかける言葉!!」


「兄ちゃん、ファイト!!」


「シンプルな応援が何故か胸に突き刺さる!」


「とりあえず、今は明日に備えて寝よう。……あ、美鈴ちゃん、寝る前に魔術の事を口頭で良いから教えてくれないか?」


「いいよ、何が聞きたい?」


「さっき言ってた基本属性……炎・水・土・風・木・雷の件なんだが……」


 美鈴と四季咲は話しながら、ベッドルームに移動する。

 俺は彼女達がベッドルームに入るのを見届けた後、高そうなソファーの上に寝転んだ。


「ん?ベッドで寝ないのか?」


「ああ、四季咲が寝れなくなるからな」


 まだ二次性徴を迎えていない小鳥遊弟は、俺の言っている意味が分からず、首を傾げる、


「あ、毛布持って来ようか?」


「気持ちだけありがたく受け取っておく」


「ん、分かった。おやすみ」


 そう言って、小鳥遊弟はベッドルームに入って行く。

 俺はソファーの上から飛び起きると、再びパソコンと向かい合った。

 

 いつも読んでくれている方、追っかけでここまで読んでくれた方、変わらずブクマしてくれている方、そして、新しくブクマしてくれた方、本当にありがとうございます。

 みなさんのお陰でブクマ100件達成まで残り7件になりました(3月19日12時現在)。

 恐らくこれからも増えたり減ったりして、中々ブクマ100件突破できないと思いますが、ブクマ100件達成できるよう、これからも毎日更新しつつ、1話毎の質を高めていきたいと思います。


 あと、皆さんが読んでくれているお陰で、今日か明日に4万人PV達成しそうです。

 まだ3万PV達成記念短編はできていませんが、必ず3万PV達成記念短編と4万PV達成記念短編をあげますので、少々お待ちください。

 

 あと、この場を借りて今日の更新についてお知らせ致します。

 先日、本編は12時頃更新のみと言いましたが、文量の都合上、13時更新分も本編になります。

 誤った情報を告知して申し訳ありません。

 2万PV達成記念短編は18時・19時・21時・22時に更新する予定です。

 見切り発車で進んでいるため、いい加減な時間の告知で申し訳ありません。

 これからも誤情報を告知するかもしれませんが、完結まで毎日更新だけは続けていきますので、よろしくお願い致します。

 

 


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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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