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4月21日(9) ネカフェに行こうの巻

 4月22日火曜日早朝。

 結局、夜明けまでに"一匹狼"──小鳥遊姉を見つける事も"絶対善"という世界で1番強い魔術師と対面する事もできなかった。

 この状況を放置して、学校に行けそうになかったので、俺は学校をサボって小鳥遊一家と"絶対善"を探し続ける。


 天牌山で会った人狼達の多額の寄付により、何とか電車代とその他諸々のお金を獲得する事ができた俺・美鈴・小鳥遊弟は、小鳥遊姉と"絶対善"がいると噂されている東雲市──九州の中で1番栄えている市街地──に到着する事ができた。


「……お兄ちゃん、あんな目に遭ったのにめちゃくちゃ元気だね」


 妙に疲れ切った美鈴が、現在進行形で鉄道橋の上で炎上している電車を眺めながら呟く。


「ん?あんな目って?」


「さっきまで電車の中で『magica』の魔導士達とバトってただろうが、お前は!!鶏の方が記憶力あるぞ!!」


 近くで白目を剥いている『magica』の魔導士15人を指差しながら、小鳥遊弟は俺に抗議の意を示す。


「ああ、その事か」


 先程の──始発の電車に乗っていたら、『magica』の魔導士15人に喧嘩を売られた──事を思い出す。

 結果は言うまでもなく、俺の圧勝。

 全ての魔を退ける籠手の力を使う事なく、特に苦戦する事なく、楽々と勝利を収めてしまった。


「あんなの喧嘩の内にも入らねぇよ。あいつら、全然歯応えなかったからな」


「その歯応えない喧嘩の所為で電車1台廃車になってるんだけど!!」


「動ずるな、小鳥遊弟。電車が炎上した程度、1回経験してしまえば否応なしに慣れてしまう」


「いや、私、電車炎上2度目だけど、全く慣れていないよ!!」


 電車はものの見事に大破してしまった。

 が、幸いな事に『magica』の魔導士達が、予め"人払い"という魔術を使っていたらしく、俺ら以外の乗客に被害はなかった。

(運転手さんは巻き込まれてしまった。現在、彼は電車から少し離れた所で気絶している)

 もし他の人が俺らの喧嘩に巻き込まれていたと思うと背筋が凍る。

 本当、喧嘩売って来た魔導士達が、一般の方に配慮できる人で良かった。


「とにかく、ここから離れるぞ。下手したら警察の人達に捕まってしまうからな」


 俺は美鈴と小鳥遊弟を脇に抱えると、そのまま鉄道橋の下に広がる川の中に落下する。


「あ、しまった」


 落下しながら、俺は重大な事を思い出した。


──俺、泳げないんだった。


「がぼぼぼぼぼ………!!」


 俺は美鈴と小鳥遊弟を水の中で放り出しながら、そのまま川の奥底にまで沈んでしまう。

 気がついたら、俺は河原の上で寝そべっていた。


「あ!お兄ちゃん目覚めた!!」


「何でお前は泳げない癖に川の中に飛び込むんだ、このバカ!!バカ!バカ!バカ!!」


「……す、すまん。すっかり泳げない事を忘れていた……」


 まだ肌寒い春風が俺達の身体から体温を剥奪する。

 このままじゃ風邪を引いてしまうと判断した俺は、口の中に入った川の水を吐き出しながら、川原から立ち去ろうとした。


「お兄ちゃんにも弱点があるんだね。なんか少しだけ安心しちゃった」


「『magica』の魔導士達もこいつを水の中に沈めれば、楽勝で勝てたんじゃないの?」


「い、いや!泳げない訳じゃねぇんだぞ!!去年の夏、バイトリーダーに泳ぎ方教えてもらったし!けど、何故かバタ足すると身体が沈んでしまうんだよ!!バタ足せずに潜水すれば余裕で100メートル泳げるから!!」


「得意な泳法は?」


「潜水、犬かき」


「それは泳げる人の泳ぎ方じゃない」


 冷酷無慈悲に小鳥遊弟は世界の真理を俺に教える。


「とりあえず、ネカフェにでも行って、シャワー浴びるか。幸い小鳥遊姉が目撃された大箸駅のネカフェ、この辺りにあるみたいだし」


 布留川から貰ったメモ(ずぶ濡れだったが)をポケットから取り出しながら強引に話を切り替える。


「そこに小鳥遊君の姉はいるの?」


「いないだろうな。あいつが1つの所に留まるなんてリスクの高い方法を取るとは思えない」


 人気の少ない裏道を通りながら、ネカフェに向かう。

 例のネカフェは大箸駅のすぐ近くにあった。

 ずぶ濡れの格好のまま、ネカフェの中に入る。

 店員は濡れ濡れの俺らを気にかける事なく、淡々と受付業務を遂行した。

 ワイドルーム(多人数で使える部屋)を借りた俺達は、真っ先にシャワー室へ向かう。

 他の利用客はずぶ濡れの俺らを見て、目を丸くした。

 美鈴がシャワーを浴びている間、俺はドライヤーで美鈴の衣服を乾かそうと試みる。


「なあ、女の子の衣服を乾かす行為に抵抗感感じねぇのか?」


 衣服を脱いだ小鳥遊弟は、タオルを腰に巻きながら、俺に質問を呈する。


「美鈴は俺の妹みたいなものだしな。あと、幼女に興奮する程、俺の性癖ゾーンは広くない」


 淡々と美鈴の衣服をドライヤーで乾かす。

 彼女の衣服は、彼女が上がる頃には乾いていた。

 今度は小鳥遊弟の衣服をドライヤーで乾かす。


「ねぇねぇ、お兄ちゃん、これからどうするの?」


「ここで仮眠を取れるだけ取る。その後、ここら辺で聴き込み調査。めぼしい情報が得られなかったら、"絶対善"と小鳥遊姉が目撃されたと言われている新神に行こうか」


「今回は私達が追う側だね。金郷教(あの)時は逃げる側だったけど」


「逃げるのは楽だけど、探すのは大変なんだよなぁ。特に今回みたいな手掛かりが殆どない場合だと、時間だけがかかっちまう」


「早く見つけないとね。何もかも手遅れになってしまう前に」


「ああ、そうだな」


 小鳥遊弟がシャワーを浴び終わった後、俺はシャワーを浴びる。

 濡れていた衣服は美鈴が乾かしてくれた。


「サンキュー、美鈴」


「こっちこそ、ありがとうだよ」


 身体を温めた俺達は、ネカフェに設置されているドリンクバーに向かう。

 そして、みんなそれぞれミックスジュース──ファミレスでよくやるオリジナルジュース作り──を一通りにやった後、俺らは鍵付きのワイドルームに移動する。

 ワイドルームはワイドという名前に恥じる事なく、そこそこ広かった。

 カウンターで借りて来た毛布を部屋の隅に寄せた俺は、天牌山で会った人狼さん達から貰ったお金を使って、ちょっと大きめのピザを頼む。


「な、……なんかでっかいパンモドキみたいなのが出て来た!!」


「お前、ピザを知らないのか?」


 俺らは朝飯代わりにピザを食べた後、仮眠を取る事にした。

 新しくブクマしてくれた方、変わらずブクマをしてくれた方、ここまで一気読みしてくれた方、いつも読んでくれている方に感謝の言葉を述べさせて貰います。

 皆様のおかげでブクマ80台突破しました。

 手と足の指を使えばカウントダウンできる数です。 

 投稿し始めた今年1月の時は「ブクマ100なんて無理だわ〜」みたいな事を思っていましたが、現実のものとなった今、毎日変な汗掻いています。

 心臓バクバクで落ち着きません。

 PVの方も順調に伸びており、来週辺りには4万PV達成しそうです。


 まだ2万PV3万PV用の短編、完成していないにも関わらず。


 まだ記念用の短編、投稿できなくて申し訳ありません。

 新連載の準備と公募用の準備に追われているため、中々執筆が進んでいません。

 4万PV達成する前までに投稿しますので、もう少しだけ待ってください。

 これからもよろしくお願い致します。

 次の更新は明日の12時頃です。

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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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