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4月21日(6) vs樹木の魔導士

空き倉庫は自動販売機から数分歩いた所にあった。


「ここが例の倉庫か」


 倉庫の中から敵意がビンビン飛んでいるのを感じ取る。

 多分、魔導士達が言っていたテリなんとか……テリヤキ君がいるのだろう。

 対面せずとも気配だけで敵の力量を察知する。


(敵意の他に……20人くらいの呼吸音が聞こえるな。テリヤキと20人くらいの距離は大体40メートル。テリヤキも俺らの気配を察知しているのか、ピクリとも動かない。手も足も出ない程に強いという訳ではなさそうだが、正面突破しても余裕で勝てる相手じゃない。……と、なると奇襲するしかない、……な)


「お兄ちゃん、何しているの?」


 倉庫の近くに停めてあったトラックに乗り込む俺を見て、美鈴は引き気味に質問を投げかける。


「倉庫に乗り込むための準備」


 トラックの扉を開いた途端、座席の上に置かれたエンジンキーの姿が目に入った。

 エンジンキーを鍵穴の中に突っ込んだ俺は、窓を開きながら運転席に座る。

 そして、トラックをバックさせながら、自分の持論を美鈴達に言い聞かせた。


「いいか?美鈴、小鳥遊弟。魔法や魔術の力がなくても、人は闘える。たとえ無知でも無力でも、知能なき獣と違って人は科学の力が扱えるんだ」


「お兄ちゃん、普通にトラックをバックさせているけど、運転免許、持っていたっけ?」


「たとえ免許がなくても、人は科学の叡知を自在に扱える事ができる」


「おい!お前の兄ちゃん、ヤベえ事言い出してるぞ!!」


「お兄ちゃん!すぐトラックから降りて!!これ以上、罪を重ねる前に!!」 


「いいか?見とけよ、これが──」


 アクセルペダルを思いっきり踏み込んだ俺は、倉庫の扉をトラックの爆走で打ち破る。

 そして、不敵な笑みを浮かべるスーツ姿の中年男性目掛けて、トラックを走らせた。


「これが、科学の力だぁああああ!!!!」


「「科学関係なくない!!??」」


「ぎゃあああああああ!!!!」


 俺の運転しているトラックは、倉庫の中にいるテリヤキ君らしき男に殺人タックルを仕掛けた。

 テリヤキ君(多分)は咄嗟に出した大樹の枝みたいな形をした盾で、トラック進撃を止めようとする。

 が、大樹の枝が生え伸びる前に彼は呆気なく跳ね飛ばされてしまった。

 トラックに跳ね飛ばされた結果、倉庫の壁にぶち当たったテリヤキ君らしき魔導士。

 それを眺めながら、俺はトラックから降りる。


「やったか……!?」


「「やったか、じゃないでしょ/ないだろ!!??」」


 俺の後頭部に小鳥遊弟のドロップキックが突き刺さる。

 敵意も悪意も感じなかったため、俺は彼の攻撃をモロに喰らってしまった。


「アホじゃないの!!??お兄ちゃん、アホじゃないの!!??」


 美鈴は俺の足をポカポカ殴りながら、乏しい語彙力で俺を詰る。


「大丈夫だ、美鈴」


「大丈夫ってなにが!?」


「──エンジン音に気づかない程、あいつは愚かじゃないから」


 テリヤキ君の身体から夥しい程の樹木の枝が生い茂る。

 奴が動くよりも先に俺は地面を蹴り上げた。

 奴の身体から生じた樹木の枝は、この場にいる全ての者を拘束するために伸び始める。

 俺に向けられている敵意と悪意が分散した。

 恐らく美鈴や人狼達を人質に使う事で優位に立とうとしているのだろう。

 巨大な人の手と化した樹木を掻い潜りながら、テリヤキ君(恐らく)との距離を瞬く間に詰めていく。

 そして、未だ壁に埋まっている彼の顔面目掛けて飛び蹴りを放った。


「──甘いっ!」


 俺の飛び蹴りは奴の身体から生え出た木の枝によって弾かれてしまう。

 空中で一回転した俺は地面に着地すると、迫り来る木の枝を避けるため、距離を取った。


「んな攻撃、通じるわ……」


 ジャージのポケットからビー玉を取り出す。

 俺はビー玉を奴の顳顬目掛けて投げると同時に前に向かって走り始めた。


「んぐっ……!?」


 奴の顳顬にビー玉が突き刺さる。

 奴は顳顬を手で押さえると同時に注意を俺から逸らしてしまう。

 それが奴の敗因だった。

 奴が痛みに悶えている間に、俺は拳が届く距離まで近寄る。

 そして、奴が俺の姿を視認すると同時に、俺は奴の顔面目掛けて右の拳を叩き込んだ。

 

「が、あっ……」


 テリヤキ君(多分)が白目を剥いた途端、奴の身体から生え出た樹木は尋常じゃないスピードで枯れ果ててしまう。

 それを見た俺は拳を緩めると、自己嫌悪──弱いもの虐めしてしまった時に生じる類の気持ち──に陥ってしまった。



 

 いつも読んでくれている方、この話まで読んでくれた方、そして、ブックマークしてくれた方、ありがとうございます。

 今朝、皆様のお陰で3万PV &ブクマ70件突破していました。

 本当にありがとうございます。

 心よりお礼を申し上げます。

 2ヶ月前に投稿し始めた時は『流行りものじゃないからブクマ100件なんて無理だろうな〜』みたいな事を思っていましたが、ブクマ100件が現実味を帯び始め、少々興奮しています。

 ブクマ100件まで残り30件、恐らくこれから先伸び悩む事があると思いますが、腐る事なく毎日更新し続けたいと思います。

 そして、これからも皆さんが『読んで良かった』と思えるようなものをお出しできるよう、これからも頑張りますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 明日の更新も12時頃に更新予定です。



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 厚かましいと自覚しておりますが、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。 小説家になろう 勝手にランキング
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