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4月17日(6) 決着!の巻/オオカミの雄叫び……?の巻

 思いっきり地面を蹴り、変態さんとの距離を詰めていく。


「お見通しよ!」


 奴は右拳を俺目掛けて放つ。

 俺は残り一歩の所で態勢を変える事なく、バックステップした。

 奴が放ったカウンターは俺に当たる事なく宙を切る。

 その隙に俺はもう一度奴との間合いを詰めるために、前方目掛けてステップを踏んだ。


「お見通しって言ったでしょ!」


 俺の重心が前のめりになった瞬間、奴は放った右拳を思いっきり引く事で身を捻り、反動をつけると、左拳で全力の正拳突きを俺の腹目掛けて放つ。


「構えってのは次の攻撃の予備動作だ」


 前方に出した足とは逆の足を軸に俺は一回転する。

 スピンする事で奴の左拳を完全に躱し切った。


「あんたが両拳を引いた時点でカウンターが二撃ある事くらい予測できていたよ。そして、二撃目こそが必殺の一撃だって事もな」


 後の後を取ろうとした奴の動きは硬直する。

 その隙に俺は奴の顎に右アッパーを叩き込んだ。

 直撃の寸前、奴は少しでもダメージを和らげようと首を思いっきり上に上げた。

 それにより、奴は気絶する事を何とか避けた。


「だから、俺は敢えてあんたの技を真似した。わざわざ応用すると言った。あんたの油断を誘うためにな」


 まだ気絶していなかったので、奴のがら空きだった脇腹に足刀を浴びせ、拳底を叩き込む。

 それでも、まだ意識があったので俺は両拳の連撃、右の拳底、両手の手刀、膝蹴り、裏拳、回し蹴り、突進、両張り手、アッパー、踵落とし、貫手、そして、右ストレートを一気に奴の身体に浴びせる。


「ぷげらっ!?」


 全裸の変態は情けない断末魔を上げると、その場に倒れ込んだ。

 全身青痣だらけになった露出狂を見て、俺は背伸びをする。

 俺の連撃をモロに喰らった奴は白目を剥いた。






 後日談という名のただの蛇足。

 あの後、変態さんは会長が召喚した雫さんに捕縛された後、署に連行されてしまった。

 気絶したクラスメイトも露出狂が捕まって暫く経った後、みんな意識を取り戻すと、何事もなかったかのような身軽さで各自自分の家もしくは寮の自室に帰ってしまった。

 とりあえず、一件落着という事だろう。

 桑原に住む他の両性具有及び性適合手術を受けた人の評判や桑原の治安、そして、聖十字女子学園生徒を守れたから良しとしよう。

 寮に帰るや否や、俺はすぐに自室に戻る事なく、寮の裏で奴から教わった足捌きの練習をし始める。

 この『縮地背面取り』という名の足捌きは結構使えそうだ。

 あとは真横の動きさえどうにかすれば、先読みできない技へと昇華させる事ができる。


「……真横の動きは反復横跳びくらいしかねえよな」


 高速で反復横跳びしながら、前後に動くチャンスを見計らう。

 しかし、幾らやっても、横の動きから前後の動きに切り替える際、どうしても無駄が生じてしまう。


「真横に移動しながら、前後ろに移動すんのは難しいから……とりあえず、真横じゃなくて斜め前後ろに移動して……」


 ブツブツ言いながら、改善案を練り上げる。

 だが、幾ら改善しようとしても上手くいかなかった。


「……そういや、あいつの足捌き、凄かったな」


 以前、屋上で"一匹狼"──小鳥遊神奈子と喧嘩した事を思い出す。

 あの動きを取り入れる事ができたら──彼女に教えて貰う事ができたら、真横の動きも取り入れる事ができるかもしれない。


「教えて貰いたいけど、……あいつ、今週学校に来てないんだよなぁ……」


 溜息を吐き出しながら、今週1度も学校に来なかった小鳥遊に想いを馳せる。

 あいつ、俺にあの足捌きを教えて──くれないだろうな。

 溜息を吐き出しながら、真横に動く練習をし始める。

 だが、幾ら練習しても、小鳥遊の動きを真似たとしても、上手くいく事はなかった。


「……とりあえず、来週、ダメ元で小鳥遊に聞いてみるか」


 頭を掻きながら、俺は寮の自室に戻ろうとする。


 その瞬間、どこか遠くから動物の雄叫びが聞こえてきた。


「……ん?」


 犬の雄叫びよりも数倍逞しく凛々しい鳴き声に思わず俺の足は止まってしまう。

 この鳴き声は映画とかで聞いた事がある。

 オオカミだ。

 オオカミの雄叫びだ。

 本物の声を聞いた事はないから断言はできないが、多分オオカミのものだ。


「でも、……日本にオオカミっていない、よな?」


 本当にオオカミのものかどうか確かめるため、俺は耳を澄ませる。

 が、幾ら待ってもオオカミらしきものの雄叫びは聞こえなかった。


「……何だったんだ?今の……?」


 首を傾げながら俺は寮に戻る。




 ──この時の俺は気づかなかった。

 もう騒動はとうの昔に始まっていた事を。

 

 

 4月20日。郵政記念日とか女子大の日とかコーヒー牛乳の日とか、誰かにとって特別な日であるが、俺にとってただの平日でしかないある日の事。

 俺──神宮司は世界一の魔術師"絶対善"と喧嘩する事になる。









 いつも読んでくれてありがとうございます。

 作者の"あけのぼのりと"です。

 本日はPV1万突破記念短編『司の1日』に付き合ってくれてありがとうございます。

 1週間とちょっと前まではPV1万突破で喜んでいましたが、もうそろそろPV2万突破しそうでビックリしています。

 これも皆さんが読んでくれているお陰です。

 本当にありがとうございます。

 読者の皆さんには頭が上がりません。

 幾ら感謝しても足りない程、感謝しています。

 本当に本当にありがとうございます。


 27日0時から投稿する予定の人狼騒動編も毎日更新しますので、引き続きよろしくお願い致します。

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