賀正門
こちら正月を迎える、門でござい。
この門をくぐらねば、年は明けまいて。
さあさあ、心して、通るが良し。
正月を迎えるにあたり。
祝えるものかどうかの判断すべし。
祝えるものは通って、良し。
理屈をこねて通らざるもの。
恐れ通らざるもの。
通らねば年は越せぬよ。
ほれ見たことか。
通らぬものが、通るものを阻んでおるて。
お前に越せるわけがない。
お前が越せるはずがない。
お前がいたら越せぬのだ。
お前のせいで、越せぬのだ。
いとわろしや擦り付け。
己が咎を人に押し付け。
わが身可愛いというなれば。
今一度己の姿見てみよと。
お前に新年が迎えられよか。
過去に縋るお前にここは通られぬ。
だがあいつは己より。
だが己はこいつより。
他人を巻き込む恥を知れ。
お前に新しき年はやれぬ。
ここは通らず、過去に沈め。
賀正門の番人に掣肘されよ。
もちは食えぬぞ。
酒は飲めぬぞ。
もちはいらぬ。
酒は己で用意する。
新年などなくてもかまわぬ。
そこをどけ。
そこをどけ。
そこをどけ。
人をどかして渡った先に。
己の醜い過去があり。
お前の過去はお前を離さぬ。
お前は新年を祝えぬままで。
過去に囚われ過去に生きよ。
過去を見据えて未来を見つけよ。
祝うのはそれからじゃ。
祝えぬものに新しい年はやれぬ。
新年めでたしという声に。
騙され過去に囚われよ。
己は過去に、囚われたまま。
囚われの身を呪って人を見つめよ。
新年を祝う人の波を。
己は指を銜えて過去から見て居れ。
己の過去に囚われて。
己の新年迎えられず。
我が身を嘆き人に中り。
前に進めず一人留まれ。
抜け出したいか。
抜け出せぬか。
抜け出して見せよ。
ここは賀正門。
新年を、祝う砦。
祝う心を用意せよ。
捨てよとは言わぬ。
醜い咎を持ち、祝えと申す。
己の過去を認めよ。
己の咎を認めよ。
己の祝いたいと願う心を認めよ。
ただ、それだけじゃ。
ただ、それだけじゃ。