宮野双葉は前を向く
今回は視点が変わって、宮野さん視点になります。あと第一話で、宮野さんの名前が時折「星野」になっていたのは誤表記です。その点につきまして申しわけないと思いつつ、ご理解の程よろしくお願い致します。
「うう……今日も星宮君怒らせちゃったなぁ……」
星宮君が人間が嫌いということは知っていたけどまさかあそこまで邪険にされてしまうとは思わなかった。きっと今彼の胸中では私の事を蛆虫か何かと思っているに違いない。
そう思うと目じりから自然と涙が……
「あう……どうすればいいんだろう……」
「お姉? 今い……お姉なんでなんで泣いているの!? 何かされた!?」
「三葉ぁ……お姉ちゃんもうダメかも……」
「この感覚……もしかしてまたあの人の事?」
「あの人じゃないよ‼ 星宮君だよ‼」
「あ、うん。そうそう星宮君ね」
「わかればよろしい」
「それで今回はどうしたの?」
「ええとね。実は今日星宮君を怒らせちゃって……」
「ふ~ん。なんで星宮君は怒ったの?」
「それは私がうるさくしたから……」
「は? そんだけ?」
「そんだけじゃないよ‼ 私にとっては重大な問題なの‼」
「いや、今のはお姉に言ったわけじゃなくて、その星なんたらに言ったの」
「星宮君だよ‼」
どうも三葉は星野君の事が好きではないらしく、反応もどこかいい加減だ。それも仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。星野君の評判は学校外にもいろいろ轟いているから。
なんでも星野君は中学の頃、他校の生徒を病院送りにしたことがあるらしい。しかもその人数は一人や二人ではないらしい。そのせいで彼は多くの人間から恐れるのと同時に、嫌われている。今の彼の周りにいないのはそのせいだ。本当はとても優しくて、いい人なのに。
「ああ、もう。わかったから。一旦落ち着いて」
「私は至って冷静なのに……」
「嘘。お姉いつも星宮君の事になると暴走するじゃん」
「そ、そそそそんな事ないよ?」
「なら何故目が泳ぐ……」
どうにも私は星宮君の事になると冷静ではいられないらしい。恋の魔力とは恐ろしい物で、人間恋をするとどこまでも変われるというのを私は身に染みて理解している。
「まあいいや」
「三葉?」
三葉の表情……いつになく真剣だ。一体どうしたのだろう……もしかして何かいい案でも思いついたのかな? だとしたら早く教えて欲しいなぁ……それで……むふふ。
「お姉。なんで笑っているの? もしかして私の事馬鹿にしている?」
「え? 星宮君を落とすいい考え思いついたんじゃないの?」
「違うよ。むしろそれとは逆」
「逆?」
「うん。逆。お姉が星宮君の何処が好きなのかは知らないけど私から言わせてもらえばとんでも屑野郎だと思うよ。だって普通会話した程度で怒らないもん」
私は三葉のその物言いに少しムッとしてしまった。星宮君の事を詳しくも知らない癖に彼を罵倒するような言葉を言うのはあまりいい気分でない。まして相手が妹なら猶更だ。
「大体お姉は美人なんだからさ。星宮君なんかにこだわらなくても選び放題じゃん。だから星宮君の事は諦め……」
「絶対嫌」
三葉が私の事を思って言ってくれているのはわかっている。でも星宮君を諦めるのだけは絶対に嫌だ。私には彼しかいない。彼の隣に並び立つためにここまで頑張ってきたのだ。今更引くことなんて絶対にありえない。
「はぁ……お姉ってどうして星宮君の事になるとこうも頑固になるかなぁ……他の事は意志ゆるゆるなのに」
「う、うるさいなぁ……そういう三葉だってそうじゃん」
「私? 私はいいの。だって私は可愛いから」
「可愛いから何でも許されるっていう考えの女。私嫌い」
「嘘‼ 嘘だから‼ そんな事いわないで‼」
「それならどうやったら星宮君を落とせるか一緒に考えて」
「ええ……めんどくさ……」
「ちなみにもし上手くいったら私お手製のクッキーをあげます」
「やる‼」
三葉は甘い物に目がない。特に私のクッキーを気にいってくれている。私的には市販のものの方が美味しいと思うのだけれどどうやら三葉は違うらしい。
「それじゃあ作りながら一緒に考えようか」
「うん‼ あ、私も何か手伝おうか?」
「ああ……うん。三葉は大丈夫」
三葉は不器用だからまだ料理させるのは怖いし、何より今日作るクッキーは明日星宮君にお詫びとしてあげるつもりの物だから自分一人で作りたい。
「さて。頑張りますか」
とびきり美味しいもの作って、絶対に星宮君の舌をうならせちゃうんだから‼ 覚悟しててよね‼
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