『無宿人』あらすじ
江戸にすむ独り者の主人公。
ある日、絶世の美少年な陰間を見かけ、仲間に囃し立てられるように客として二人きりになる。
しかしその陰間の暗い表情から、どうしたのかと聞くと、自分は親に売られて陰間をしている。
こんなことは気持ち悪いだけ、不快感しかない、毎日死にたいと思ってる、と話す。
主人公は衝撃を受け、ただ少年と何もせずに帰る。
世を儚みながら家で春画を読んで自慰をしていると、隣家が火事になり火消しに家を壊されて主人公は無宿人になる。
夜の江戸で途方にくれていると捕まり、佐渡金山に強制連行されることが決定する。
唐丸駕籠で連行されている途中で、山賊の襲撃を受け解放される。
しかし山賊は凶悪な人食い集団と化していて、主人公にも幕府の役人を殺してその肉を食うことを強要するが、断ったのでまた囚われる。
山賊の頭は安藤昌益に影響を受けたアナーキストで、幕府打倒の演説を行う。
山賊は越後で一揆を画策して主人公も戦場に駆り出すが負けて敗走。
主人公はボロボロになった山賊の頭と、もう一人の仲間と共に山中に逃げ込む。
そこに小屋があるのを見つけ、入ると若く美しい女が一人で住んでいた。
その女からはなにやら妖しい雰囲気が漂っており、一同は警戒する。
一緒に寝ているとそれぞれの過去のトラウマの幻覚が見え始める。
もう一人の仲間は実は農民だった頃に飢饉で自分の子を隣人に殺させ、その復讐だとしてその隣人を殺し、二人の肉を食べていた。
仲間は頭を唆して女を犯させようとする。
朦朧な状態でそうしようとすると女の呪いで頭は半死半生の状態になる。
主人公はこの女は自分を犯そうとする相手を狂い死にさせられるのだと分かり、仲間が頭を殺して食おうとけしかけたのだと教える。
怒った頭は仲間を殺すが、自身ももう限界に近く、主人公に担がれながら小屋から逃げる途中で死ぬ。
主人公は一人になると女が側にいるのに気付いて取り憑かれたのだと思う。
主人公は女と共にさ迷っていると、役人に捕まり改めて佐渡に連行される。
女は主人公以外には見えないらしい。
佐渡金山の暗く底知れない地獄のような闇の中に女と共に入っていく。