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他所の国で火事が起こった時の話

お読み頂き有難うございます。

コレッデモン王国から今は離れて暮らしている、とある崖っぷち令嬢視点です。

結婚したら姫と令嬢達に呼び出されました。

来ないと月一度のお手紙が止まらないんです。

 私、ドリー・モブニカ!

 本当の名前はもうちょっと長いんだけどね!

 この間結婚したばっかなのよきゃーーー!!

 旦那さまはね年下なの!

 ルーロさまって言うのよ!!

 今日はちょっとばかし別行動なの……。寂しいわ。


 で、でね!

 ちょっと国でお世話になってる方々に結婚のご報告に行った訳!!

 ……いらっしゃいな、ってお手紙貰ってた訳だからね!



 結論。

 …………怪我をでっちあげるとか、仮病使うとか……行かなきゃ良かったわああああああ!!




「まぁまぁまぁまぁぁぁぁぁ」

「あらあらあらあらあらあら」

「うふふふふふふふふふふふ」

「よかったわーよかったわー」


 超怖わあああああああ!

 私のバカ!!何でこんな修羅の地に足を踏み入れようとか思ったの!!

 色ボケしすぎてたわ!!

 バカバカドリーのバカアアアアア!!



 私の前には四人の美女。

 ええと、取り合えず上から。

 黒髪の翡翠色の目が印象的な第二騎士団副長の伯爵令嬢ミーリヤ様。

 熟した柿色の髪に緋色の瞳の筆頭侍従長かつ侯爵令嬢ルーニア様

 亜麻色の髪に南国の海色の瞳を持つ激戦区ロッチ辺境伯令嬢レトナ様

 白菫のような髪に夜のような真っ黒い瞳の筆頭公爵令嬢マデル様……。


 うん、我が国が誇る美女だわ。

 この方々は幼馴染なのよね……。

 そして、独身。全員跡取り令嬢でいらっしゃるわ。

 …………通称、御家断絶を断ち切る会の幹部でいらっしゃるわ。

 うん、それ何かって?…………色々有るのよ、ウチの国は。

 よく知らないけど突っ込んじゃ駄目。

 後お歳の話題は駄目。社会的か物理的かで即死んじゃうから。

 いや、私はと言うか、貴族なら知ってるんだけどね……。

 知ってて言っちゃいけないことなのよ。其処は絶対守らなきゃ駄目。

 気になされるお歳でもないと思うし、お若いのは知ってるんだけど、気にされてるの知ってるから絶対言えないわ……。


 で、でもね、美しいだけじゃ無くて、相当なお偉いさん方なの。

 未婚にも関わらず、第一王女であられる姫様と共に国を動かしていらっしゃるのよ。

 賢さも物凄いの。特にルーニア様とマデル様。

 何処がどうとは分かんないけど、凄いのよ。うん、凄いの!


 えーと、王様が国を動かしてないかって?…………やる気無いからって聞いてるけど。

 其処ら辺はあんまりよく分からないの。

 だって社交界行ったらお金掛かるじゃない。行けなかったわよウチの財力じゃ。

 流石に駅馬車で礼服はちょっと他の乗客に迷惑だしね。

 と言うか礼服って家に当時有ったのかしら。其処すら疑問ね。


 ま、まあ本来なら田舎でド貧困に喘いでた貧乏伯爵家の

 私如きがお会いできないレベルの滅茶苦茶お偉いさんなのよ。

 本当に、妖精だか精霊だか女神だか魔族だか…………とにかく色々だかみたいな恐ろしい程の美女なのよ。

 見た目はね。

 あ、アレッキア様も恐ろしい程のお美しさで驚いたわあ……。

 物理的に怖い方も居るけど、中身が物凄く怖い方も居るわ……。

 と言うか美人って皆大体怖いのかしら?


 でもまだマシよ。

 荒武者だの北の魔王だの言われるお方が居ないんだものね。

 今日お忙しいんですって。

 …………超良かったけど、今ですら無茶苦茶怖い……。

 ドレスの下の足ががったがたしてるわ。

 あっ、このドレスはルーロさまと一緒に選んだの!

 そして買って頂いたのよ!既製服買うのって久しぶりよ!

 楽しかったわあ……。滅茶苦茶楽しかったわぁ。

 ……あのドレス買って貰った時に戻りたいわああああ!!!

 ルーロさまのお顔が見たい!!

 抱き着きたい!!

 眉間に皺寄せて嫌がられるだろうけど!!

 でも結局あの方は二人っきりだと甘やかしてくれると思うの!!

 多分!!きっと!!ええ!信じてる!!


「ドートリッシュ、お菓子はぁ如何ぁ?」

「残念ねー、新たな伯爵様がーいらしてなくてー」

「うふふ、年下なのですってね」

「あらあら、やっぱり学生生活っていいのね」


 現実はルーロさま居ないけどね。

 駄目だわ、妄想に浸ってる場合じゃないわ。

 私は決意を持って立ちあがった。


「…………すんませんでしたぁぁぁぁ!!!」



 お辞儀を間髪入れまくったけど、誰も微笑みを崩さない!!

 20回位やったけど動じていらっしゃらないの!!

 お辞儀で見えないけど絶対崩していらっしゃらないのよ!!

 だって似たような現場だったって聞いた事あるもん!!

 前にお茶会に呼ばれたソッテイ男爵家のメルシェだって、おんなじ環境だったって聞いて恐怖だったのよ!!

 でも行かなきゃ来る迄お誘い状が届くのよおおおお!!

 一月に一回、絶対来るの!!

 恐怖の第一水曜日に絶対来るの!!

 恐怖以外の何物でもないわよ!!


「あらあら、素早いわね」

「もうちょっとって思ったのにー」

「レトナちゃんよりぃ素早いのねぇ」

「うふふ、反応出来なかったわ」


 ヒイイイイイ!!

 反応出来てたら一体レトナ様に何されてたの私!?

 助けてルーロさまぁぁぁぁ!!


「勘弁して下さい皆様方ぁぁぁ!!」

「うふふ、示し合わせたように怯えなくても」

「まあまあ別に……何もしませんのにね?」

「ちょぉっとぉ、幸せをぉ、羨んでるだけぇなのにねぇ」

「それとー幸せに浸り過ぎていないかー、現状確認にねー」


 来たぁぁぁ!!!

 マデル様の台詞が本題なのよおおお!!

 分かってます!!分かってます!!

 分かってますからあああああ!!


「絶っ対に色ボケません!!

 気を引き締めて誠心誠意領地を守り、

 国に尽くしますわっ!!」

「でもぉ伯爵様は他国の姫君?に臣従してらっしゃるとかぁ?」


 ぎゃああああああ!!

 何でバレてんの!!

 あんな口調だからミーリヤ様怖あああああ!!


「小さい頃からのーお付き合いなんですってねー」

「うふふ二心持ちは困るわね」

「ドゥッカーノとはぁ、まぁだ争う理由が無いけどねぇ」

「まあまあ、先は何が起こるか分かりませんものねえ」


 ヒイイ!!!ルーニア様の目が全く読めない!!

 いっつも読めたこと無いけど!!


「もしもの場合、国に背かず、夫である伯爵様を討てますか?」

「…………!?」


 ええええええええ!?

 ルーロさまを、討つ!?


 な、何ですって!?嘘。


 やだ、やだ。討てる訳ない……。

 愛するルーロさまに私が危害を加えられる訳ない。



 慌てふためく私に、四対の目が私に集まっている……。



 …………。


 怖い。怖すぎる。でも……ま、間違えられない……。


 しっかりするのよ、ドリー!

 この後の発言は、絶対に間違えられないわ!!

 迂闊な事は言えない。

 ……でも、正直に、言わないと……。

 この方々はノリはいいんだけど、公的な場と真面目な場でのおふざけや嘘が大嫌いなのよ……。

 良くて領地転換か領地没収……。

 悪ければ即座にレトナ様かミーリヤ様に……打ち潰されるか斬り捨てられる……。


「あの」

「どうぞぉ言ってぇ?」

「…………ルーロさま……夫は私を……我が家を我が事のように助けてくれました」

「うふふ、そうらしいわね」

「でも……それ以上に」

「何かしらー」

「自分が酷い目に遭っていたのに」

「まあまあ、それは大変だったのね」


 反応が冷たい!!!凍えそうなんですけどおおお!!!

 ……駄目か!?駄目なのおおおお!?

 この程度では、認めて頂けないの!?

 どうすればいいの!?


「……皆様に認められないのなら、こ、この身で贖います」


 首に、背中に、足に汗が滴るのが分かるわ……。ベッタベタよ……。

 で、でも引けないわ。

 此処で引いたら絶対に…………駄目よドリー!!

 ルーロさま!!ルーロさまは私が守るのよ!!


「この場で朽ちても構いませんわ。あの方が好きなんです」

「「「「…………」」」」



 …………あ、思わず握りこぶしを上げてしまったわ……。

 目が……目が……皆様の表情全く無い!!

 滅茶苦茶怖いいいいいいい……!!!

 な、涙が滲んできたけど、逸らしちゃ駄目!!

 足がっくがっくするけど!!

 腰が抜けそう!!



 反応がない。ないわ。

 ……ああ、ルーロさま……父さまに母さまにサジュ……先立つ不孝をお許しください……。

 ルーロさま愛してるわ……。


 死にたくない…………。




 ……………まだかしら。出来ればレトナ様に潰されたくないなぁ。




「いいんじゃないの?」


 命を捨てる予感しかしなかった私の背後から声がした。

 この声は……この美しい声はて、天の声!!



「まあまあ、姫様じゃありませんの」

「姫様あああああああああ!!」

「うぉっ」


 思わずその御身に抱き着いてしまったわ……。

 ぼっふうって言ったわ……。

 皆様類い稀な美女でいらっしゃるけど、姫様は抜きんでてお美しいのよね……。


「流石暴風雨の令嬢……いや失礼、夫人ですね。抱きつき方まで派手ですね」

「可愛いじゃないの、小熊みたいで」


 よしよし、と撫でて下さるのは我らがユディト姫様……。

 うう、暴虐だの北の魔王だの荒武者だの言われてるけど、お優しいのよ……。

 見た目は本当に、薄青い髪に蜂蜜色の目でまるで妖精の女王様の様なんだけどね……。

 ……ただ、見た目以上にお強いし……魔力とか腕力とかが。

 ……万が一四人の令嬢方から抜け出せたとしても、…………姫様にはとても太刀打ち出来そうにないわ……。


「大丈夫ですか、モブニカ伯爵夫人」

「ノ、ノイエンドーヌ様……有難うございます」


 優しいお言葉を掛けて下さったのは近衛騎士ノイエンドーヌ様。

 淡い茶色の髪と紅茶のような温かみのある赤い目の穏やかなお顔立ちの騎士様なのよ……。

 姫様の幼馴染でいらっしゃるわ。

 この国で数少ない、姫様に対等にモノ申せる方なのよね。

 お歳は……姫様と同い年……だったわよね。うん、お幾つかは知ってるけど知らない。


 ただ、癒し系のイケメンだし、お優しいんだけど……それに甘えてこの方に馴れ馴れしくしたら……首を吹っ飛ばされるのよね。

 姫様に。

 それ聞いた時から怖すぎて……家名じゃないご本人のお名前を覚えられない位恐怖で恐怖で。

 親しみ所か恐怖しか感じなくなってしまったわ。今でも震えが止まらないんだけど。


「…………気のせいか、ご令嬢方と姫様より俺に怯えていませんか?」

「きききき気のせいですわ」


 やだ、それこそ暴風雨の時の扉みたいに、ガタガタ震えが止まらないわ……。


「ジル、ドリーが怖がってるから下がっときなさい」

「…………何なんでしょうこの間から……理不尽です」


 あ、この間も誰かがガタガタ震えてたのね……。私と一緒ね!!凄くよく分かるわ!!


「あらあら、もう怯えなくて宜しくてよ」

「ちょーっとー驚かせすぎちゃったわねー。可哀想にー」

「愛ってぇ、偉大なのねぇ。よぉしよぉし」

「うふふ、怖がらないで?可愛いドートリッシュ」


 代わる代わるご令嬢たちが私を抱きしめに来た……。

 うう、お衣装の手触りは素敵だし、いい香りがする上に滅茶苦茶抱かれ心地が素敵すぎるわ……。

 全員お胸が豊かだなぁ。ぼふっとしてフッカフカするわ。

 何食べたらこんなお胸に…………聞いても食べられてないわね、ウチの当時の財政じゃ無理よね。

 間違いなく凄く豪華なお食事でしょうしね。

 私のは……まあ、無いことは無いけど、もっと大きくなったらルーロ様喜ぶかしら。聞いてみなきゃ。

 あーでも皆様温かくて気持ちいい。和む…………。


「皆様……有難うございます……」


 何か泣けてきちゃった……。

 えぐえぐ泣いてたら四本の手が頭を撫でて下さって……また泣けてきちゃった。

 うう、何が何だかよく分からなかったけど、本当に無茶苦茶怖かったわ……。


「所で何時まで続けるんですか、この茶番を」

「うっさいわね、和むでしょうが」

「脅しじゃないですか」

「心に残るでしょうが」

「心に立派な傷が残るでしょうね」

「何とでも仰い」


 あ、何か向こうで姫様とノイエンドーヌ様がお話しされてるわ……。

 仲がいいのよね……。滅茶苦茶いいのよね。恋人にしか見えないのよね……。

 どうしてご結婚なさらないのかしら。何がいけないのかしら。


「どうしてご結婚なさらないのでしょうか、あのお二人」


 ノイエンドーヌ様も跡取りだけど、其処ら辺は権力の力で何とかなさらないのね……。

 権力って凄そうなのに。私には全く縁が無いけれど。


「うふふ、色々あるのよねえ」

「二人ともー意地っ張りさんでーいらっしゃるからねー」

「傍から見てるとぉ、甘々ぁって感じなのにぃ」

「あらあら私達はあの方々を見守らないとね」


 …………やはり偉い方の考えることはよく分からないわ。



 そして帰ってきたら何故かドゥッカーノが……大火事だったって言うし……。

 何でよ!!昨日まで普通だったのに!!

 火元は王城で、街にはあんまり被害が無かったらしいけどどういう事なの!?

 しかも出火原因が不明ですって!?

 実は天罰が下ったの!?

 私の恨みとか色々が炸裂したのかしら!?やだ、それなら嬉しいんだけど!!



 そして我が夫ルーロさまは……


「嫌あああああ!!怪我!!怪我してるうううう!!」

「ちょっと火の粉が掠っただけだよ煩いなあ」


 その滑らかな頬っぺたと腕に火傷!!

 絆創膏が滅茶苦茶おいたわしいいいいい!!!

 半泣きになる私に本人は滅茶苦茶冷静なんだけど!!


「居たら私が守ったのにいいいいい!!!」

「風属性が火事に何の役に立つんだよ」

「物理的に守るに決まってるじゃない!!

 覆いかぶさってくる瓦礫を蹴っ飛ばしたりとか!!

 火の粉の盾になったりとか!!」

「俺は嫁にそんな事を期待しない」

「何で!?お役に立つわよ!!」

「……いや、火事なんだから普通に一緒に逃げるだろ。

 何で態々危険に飛び込んで立ち向かうんだ?」


 や、やだ優しいルーロさま!!胸がキュンキュンする!!

 やっぱり信じてたわ!!二人きりなら優しいって!!


「いや、それでも有るじゃないきっと色々!!危機が!!」

「残念ながら特に何も無かったよ」

「でも怪我をしちゃってるじゃない!!」

「…………こんな軽傷で大袈裟だよ」

「回復術!!回復術を受けに施術院、若しくはお医者さまへ行きましょう!!」

「重傷者で溢れかえってるからこんなかすり傷で押しかけたら迷惑だよ」

「じゃあコレッデモンへ行きましょう!?ルーニア様が回復術お上手なの!!」

「……あの三軒隣りの魔窟へ借りを作りに行けって?嫌だよ」

「魔窟……」


 言い返せないのが困るわね……。

 て言うか貴方のドリーは其処から帰って来たんだけど其処まで言うの……。

 ……お約束で舐めたら治るとか言ってくれないかしら。


「本当に日にち薬で大丈夫だから。ああ、勿論舐めても治らない」

「……ルーロさま、私の心を読んだの!?」

「顔に出てるよ」


 察しが良すぎるのも素敵よ!!ルーロさま!

 でもちょっとは愛しのドリーに優しくしてくれていいのよ!!


『サポートキャラに~』の方を呼んで下さった方にはおなじみ、崖っぷち令嬢改め夫人ドリーですね。

実は彼女も『悪魔の四騎士』達に脅されていたと言うオチ…。

姉弟揃って結構貧乏くじです。

『荒武者姫』と『悪魔の四騎士』改め姫と令嬢達の見た目はこんな感じです。

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登場人物紹介
多くなって来たので、キャラの確認にどうぞ。
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