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御家断絶を断ち切る会

お読み頂き有難うございます。

ユディトの幼馴染令嬢が四人が新たに出て来ます。

『サポートキャラに~』の方には二人出てますね。

……キャラ濃いですかね。

 とある日。

 適齢期の男共が寄ってこないので、私は同世代の幼馴染み令嬢と今後の事を憂い、話し合うことになった。


「毎度何時もの事じゃないですか」

「ジル、うっさい」


 私がジルを引き連れて会場に行くと、其処には幼馴染たちがにこやかに待っていた。

 私を含めて何処に出しても申し分ない美女だらけだ。

 気性も基本穏やかだしね。基本な。

 まあ、若干手荒にならざるをえない事が有るときは、この現状にちょっと鬱屈してるだけよ。

 ただ、それを誤解されることもあり、変な渾名を付けられたな。

 付けた奴らは残らず相応しい地獄を見せてやったが、定着したのが頂けない。

 今度は他国に広めてるアホ共を如何に炙り出して殲滅するかを考えないとな。汚名は灌がねば。


 まあそれは今度の議題でいっか。

 今回は婚活の話よ。


「やっぱりー、国内ではー期待できませんわねー」

「あーある程度の身分差を越えてみるとか?ウチのバカ両親みたいに」

「えぇー、ウチの親がぁ……普段無能なくせにぃ、家格がぁってぇ煩いですよぉ」

「うむむ……何処も一緒ですわね…………」

「あっ、すると外国ですかしら…………」

「留学?でも言葉がねえ…………」

「あんまりー生活習慣がーかけ離れた殿方だとー、こっちの生活習慣を仕込むのが大変ー…………」

「あらあら、ある程度妥協して、家の格と性格が合うなら子供なら良いのでは?」

「うふふ、うちには子供の候補すらいないものね…………忌々しいことに」

「ああ、最早物凄く年上を得るとかー……えー、それなら凄く年上より凄く年下がいいかもー?うーんー」

「私はぁは別にどっちでもぉ。但し、好みは譲らなぁい!」


 ううむ、白熱するな……。

 真剣で議論が行われている神聖な場に、通りがかった見知らぬ色の悪いガキ共…………いや得体の知れんどこぞの派手な少女達がクスクス笑っていた。


 …………新鮮だわ。こういう反応。

 大概どの世代でも私達に遠慮するからな。

 まあ、イラつくことには代わり無いけどな。嘲笑でウケる趣味は無いのよ。

 全員の笑顔が戦闘仕様だし。

 人の事は言えないが、相変わらず変わり身早い。

 でもガキ共……少女たちは気付いていない。

 空気を読めないって愚かだな。


「あれってー、呪われた世代のあぶれた精鋭じゃなーい?」

「人さらいの相談みたあい」


 成程。

 おあつらえ向きに、喧嘩を売ってくる世間知らず発見ー。

 決めた、捕獲しよう。

 そして遊んでやろう。

 よくぞ来たよ、この場に。門番も褒めてやろう。

 話し合いも楽しいけど、議題が普通だから退屈していたのよね。


 私は幼馴染達に負けず劣らずにっこりと微笑んだ。

 まだ優位に立とうとしてるのか、勝ち誇った顔してんな。


「よーし、面貸せガキ共。その戯言、高額で買ってやる」

「…………は?」


 私には権力があるので、必要があれば偉そうにするし男女差別はしない。

 勿論ちゃんと見た目で判断するし、基本暴力には訴えないが、手加減はしない。

 私の信条は専守防衛だからな。

 おいジル、過剰防衛の間違いじゃないかって聞こえたぞ。


「あらあら、あのお二人には婚約者が居るんですよ、姫様」


 筆頭侍従長かつ侯爵家の跡取り令嬢、ルーニアが教えてくれる。

 相変わらずいい間合いの取り方だわ……。


「そう、いいことを聞いたわ。

 お前らとの婚約破棄後、婚約者は有効活用してやろう、有り難く思え」

「な、な、何よこの姫!?」

「頭がおかしいわ!!」


 ほほう、いい度胸だ。

 この国の常識を知らんとは、さては外国から来たな?

 そして世情の勉強もしていないな?

 愚か者め、情報無しにこの国に足を踏み入れようとは、只のアホだな。

 まあ、私達にこういう口を利いた時点で分かりきってたけど。


「姫様ー是ー非私にくださいませー」

「うふふ、わたくしに下さいまし。是非とも可愛がって差し上げられるわ」

「あぁらぁ私に頂きたいわぁ。

 高ぁい爵位を差し上げられるかも。殿方にはぁ願ったりでぇなくてぇ?」


 上から筆頭公爵令嬢マデル、激戦区ロッチ辺境伯令嬢レトナ、第二騎士団長の伯爵令嬢ミーリヤ……。

 全て跡取り令嬢だ。

 あーあ、怖いのを敵に回したな。

 私を含めて。

 レトナとミーリヤは机の下に隠した手の中にいつも通りしっかりと得物を手にしている。

 ミーリヤは兎も角、相変わらずレトナの獲物はデカいな……。

 どうやってスカートの下に入ってるのかしら、アレ。


「ひっ…………」

「な、何よ!」


 恐れおののけビビれビビれ小娘共、グハハハハ!!とは言わない。

 私達は誇り高き姫と令嬢達なのだ。

 腹が立ったりムカつかされなければ、ぞんざいな口など叩く訳が無い。

 まあ、ムカついたら普通に言うけど。基本言わない。

 うん、基本は言わないようにしてる。


「ねえぇ姫様ぁ、彼女達自身にもぉ我が国のお役に立ってぇ頂かないとぉ」

「うふふ、そうですわよねえ、折角のご縁でいらしたのですし」

「ちょっとジルー、そんな壁に張り付いてないでこっち来なさい」


 私は凄く遠くに離れて警護したいたジルを結構大きな声で呼んだ。

「男の自分がご婦人方の話を聞くのはマナー違反」だと御大層な建前を述べているが、

 巻き込まれるのが死ぬほど嫌だと公言しまくってるのを知っている。

 今も嫌々歩いてきてるしな。

 伊達に長年後ろに置いてない。大体分かるのよ。

 と言うか悪口と愚痴は聞きたくなくても入ってくるんだよ!!

 誰に分からなくても私には分かる。

 だから早く来んかジル!!


「…………お呼びでしょうか」

「二人ほど跡取りじゃない小娘共……お嬢さんが用意できたわ」


 ジルは私達の意図を理解しているため邪魔はしない。

 した所も見た事が無いし、多分しないだろう。

 コイツは基本自分が可愛いからな。

 我々の手を煩わすなんてことは絶対にしない。

 後、美しい私に侍っているのだからガキには興味がないらしい。

 私の傍に侍っているお陰よねと言ったら「顔は美しいしお体も素晴らしい感じですよね」とか言いやがった。相変わらず気が利かないわ中身も褒め讃えろよ!!

 あ、思い出したら腹立ってきた、ジル、マジ許さん。


「何ですか姫様、思い出し怒りは止めて下さいよ」

「うっさい。取り敢えず私達に喧嘩を売ったんだから引き取り先を考えなさい」


 ジルは目に見えて口を引き攣らせて私を見て、闖入者を見た。

 って何よ。確かに怒ってるけどジルはそんな怖がらなくてもいいじゃない。


「それはそれは。恐ろしい方々に喧嘩を売りましたね」


 口だけ気の毒そうに少女たちを見ているけれど、全く同情していない。したことが無い。

 少女たちは口を開けて見目の良いジルを見ているけど、本人は全く気にしていないな。

 其処は褒めて遣わす。

 だが見とれるな小娘共。私の護衛騎士だ。


「…………一応聞くけど、ジルはそれ要る?」

「姫様の不興を買ったなら結構です」

「まあー、フランジール卿は本当に一途ねえ」

「応援致しますわぁ」

「何て素敵な忠義でしょう」

「うふふ羨ましいですわ」

「はあ、まあ……そういう事で丸く収まるなら」


 …………引っかかりはするが、拒否らなかったのは、嬉しい。

 けどさ、皆に応援されても今の所無理なんだよな…………。

 ジル跡取りだし。どーしたらいいんだかねー。


「サロ卿にでも連絡してきます」

「お願いね」


 ああ、サロ卿か……。同じく同世代で、徴税府次官の公爵の跡継ぎ令息だっけ?

 彼なら適当な飢えた逸材を紹介してくれるだろう…………。彼自身もそうだけど、独身のツルんでる仲間が多いから。

 まー、この娘らでは本人には家格と性格が合わんだろうけどね……。

 アイツも好みが煩そうだからな。

 そう言えばアイツも、あの夜会の時ベラベラ喋った挙句どっか行った奴のひとりじゃないか。

 許せんな。後で何か考えよう。


「こ、こ、こんなことが許される訳ないわ!!」

「そうよ!!我が国が許すわけないわ!!」


 ん?おお、この状況でも喋れるとは、中々気が強いな。

 負けん気が強いのはいい事だけどね。

 でもあんまり足掻かない方がいいと思うわ。

 キャンキャン煩いのとウザいのは男女問わず嫌いなんだよな、私達。

 まあ誰も好きな性質じゃなさそうだけど。


「姫様ぁ、黙らぁせますかぁ?」


 物理的に黙ってもらうには確かにミーリヤは最適ね。

 こう見えて強いからな…………。

 鬼の第二騎士団副団長の孫娘だけあって、優雅に剣を振るう姿は騎士団を怯えさせるとか…………。

 あんなに優雅なのにね。

 可愛いし、花も咲かせられるし果物も食べられるのに。

 殿方って分からないわねー。と言うかミーリヤだけ渾名可愛いのよね。羨ましい…………。


「説明してあげて」

「わぁー流石姫様おっ優しいぃー」

「うふふ、では僭越ながらわたくしが」


 ああ、レトナか。

 レトナも強いよな。こっちは槍なのよね。今もテーブルの下に有るけど。

 どうやって折り畳んでるのか前に聞いたら……長くなったから覚えて無いな。

 後でルーニアかマデルに掻い摘んで説明して貰おう。

 流石激戦区の生まれよね。

 ……まあ、彼女のお祖父様とお母様とレトナが強いんであって、彼女のお父様は浮気野郎で役立たずだけど。


「お控えなさい、この方は恐れ多くも我が国の第一王女、ユディト姫ですよ。

 この国に住む覚悟で来たのなら、この御方を敬いなさい」

「いやいやー、貴女達の力を借りてこその若輩者だけどね」

「うふふ、僭越ながら、わたくしたち『御家断絶を断ち切る会』はいつでも姫様の味方ですわ」


 私を和やかに紹介してくれたレトナに少女達……もうガキ共でいいや、は噛みついてきた。

 声が煩いなあ。何でこういう噛ませ犬っぽい奴らって穏やかに喋る技能が無いの?

 無いから噛ませ犬なんだろうけど……芸が無いわー。

 もっと度肝を抜く三下は居ないの?


「え?何?何よ?…………オバサン達がサムいんですけど」

「そうよ、嫁き遅れ!!」


 おおっと、禁句を言ったね?

 まあ、私達は言われ慣れているけど、そんな単語を女性に言ってはいけないよ。

 私達は淑女だからしないけど、暴力に訴えてくる人も居るんだからね?


「うふふ、質が悪いわね」

「愛人行きねぇ。ルーニアちゃあん、いい引き取り手はあるのぉ?」

「あらあら、それならオーマテ公爵はいかがでしょう」

「そうねー、生意気な少女をー屈服させるのがー性癖……お好きなーんだったわよねー」

「弟さんも奥さまが変死されたばかりですものね。二人纏めて送ってさしあげましょう。是非仲良くして差し上げなさいまし。お嬢ちゃん方?」

「よーし、採用」


 ルーニア、相変わらず頭の回転が速い……。

 レトナの持って行き方も早いし。

 よくもまあそんな醜聞抱えた家を即座に話に出せるもんだ、ルーニア。

 そして他人んちの内情に詳しすぎだろマデルも。


 だがお陰で私が偉そうに採用することができる。いやー……楽なお仕事。

 いい所譲ってくれて有難う友よ。

 小娘達とは違うんだよ。そんな笑顔が素敵だ、我が友よ。


「ふざけないでよ!!ちょ、帰ろう!」

「う、うん…………!!あ、あれ!?何で…………!?何で!?」


 おお、やっと少女達は自分の立場を知ったかな?真っ青になってる。

 うーん、遅いな。

 まあ、どの時点で気付いても無事に出してあげる気は更々なかったけど。

 此処にいる時点でね。


「ちょ、ちょっと…………」

「え、何で!?ウソでしょ!?ど、どうして!?」


 彼女らが呑気に入ってきた入り口には、重い重い鉄格子。

 …………他の扉は私達のテーブルの後ろ側に。

 まあ、閉まってるけど。


「ひっ!!に、逃げよう!!こいつ等ヤバいよ!!」

「う、うん!」


 彼女達は走って逃げるつもりだったようだ。

 若いっていいね。自慢なんだろうね。

 愚鈍そうに見えるのかな?年上の私達が鈍く見えるのか、走って逃げられる自信が有るようね。

 けど…………。


「だぁめよぉ…………通行料を頂戴してないわぁ」

「うふふ、でも私達が欲しいものは無さそう。

 じゃあその綺麗に手入れされた腕か足を置いて行きましょうね?」


 幾ら若いのが自慢か知らないけど、遅いんだよなあ。

 同じドレスでも、レトナとミーリヤでは動ける範囲が全然違うのよ。


 ガキ共はポカンとしている。

 回り込まれたのも理解できていないようだから、さっさと正気に返って貰わないとね。

 そろそろジルも帰ってくるだろうし。


「ああ、残念ねガキ共、普通に出られると思った?」

「と、閉じ込めたの!?ふざけんなよ!!」

「何でよ!?ラチじゃんユーカイじゃん!!ヒドイよ!!」


 うん、被害者面が凄いな。

 入って来たのはどっちかな?


「私の家の扉を私が閉めさせるのに何の不都合が?

 重ねて言うが、此処はコレッデモン王国宮殿。正真正銘、私の家よ。

 開け放つのも、戸締りも家の者がするもんでしょ?

 お招きしてない上に躾のなってない害獣が入ってきたら、好きなように遊ぶわ当然よ」

「あ、あ…………アンタ……本当に此処の姫なの?」

「ウソでしょ……」


 え?何を今更。

 呪われた世代のあぶれた精鋭だってお前らが言ってただろうが。

 …………しかもレトナが私を紹介したじゃない。結構迫力あったのに。

 …………信じて無かったのか、信じられなかったのか。

 うーん、威厳無いのかな私。


「うふふ、わたくしのお話し聞いてなかった?姫様をバカにしているのね?駄目よ」

「ぎゃあああああ!!!」

「ひえええええ!!」

「腕とか足とか要らないわ。その軽い頭、体から打ち下ろしてあげましょう」


 あ、レトナのもう一つの武器が出て来た。

 水魔術の大槌だ。持ち手が長いのは長柄物が好きだかららしい。

 水だから直ぐ消えて無くなるのもいいらしい。

 アレでぶん殴られて生きてる奴はいなかったな……そう言えば。

 …………これのお陰で打ち出の令嬢とか言われてるんだよな。可哀想に。


「やめて!!こんな所でおかしいわ!!あ、アンタらおかしいわよ!!」

「そ、そうよ!!此処お城でしょ!?何でこんな所で…………!!」


 宮殿侵入の不法侵入者の上に不敬罪を何処で裁こうが私の勝手じゃないか。

 ああ、裁判受けたいって言うのかしら?

 ウチって基本、軽犯罪にはある程度上の裁量で何とかなるのよね。

 殺さなきゃいいって感じで、良心の範囲内でならね。

 まあ、うっかり事故る事はあるだろうけど。


「あらあら、用も無いのに物見遊山で宮殿に立ち入るからよ」

「誰も咎めなかったわよ!!」

「そうよ!!」


 馬鹿か。馬鹿だな。

 此処は宮殿の前方中庭だぞ。門を入ってすぐとはいえ、王の住まいの真っ直中。

 前方中庭は実用的に多面体に組まれて作られている。

 優雅に見える壁の模様は狙撃用の穴隠し。そして窓からも敵を狙撃できる作りだ。

 時代が違えば、一斉射撃で蜂の巣通り越して固形を保てないぞ。分かってるのかな?

 まあ、首都でしかも宮殿で防衛戦してる時点で負け決定だけど……備えない訳にはいかない。


 それにしても、咎めなければ宮殿に入って来れる神経が分からないな。

 観光地じゃないんだから。

 それに今まで全く何の詫びも無いわね。不敬罪って知らないの?

 まあそういう人たちの為に、態々優しくて平和な罠を仕掛けてるんだけど……未だに引っかかるものが居るとは。

 平和ボケって怖いなー。

 ウチそんなに舐められてるのか?一応騎士国家の筈なんだけど。まあ私姫だから騎士爵持って無いけどね。

 念の為に取っとくかなあ。


「そりゃぁそうよぉ。私達がぁ居るんだものぉ」

「この頃ー誰もー近寄らなくてねー」

「まあまあ憂さ晴らしになったわ」

「うふふ、ちょっと物足りないかもね」


 にこり、と令嬢達は微笑む。

 いやあ、初夏の日差しに照らされた皆は美しいわね。

 まあ私もだけどな。


「あらあら、私達はね、働いているのよ」

「呑気にぃ遊んでるだけのぉ、貴女方とぉ違ってねぇ?」

「口だけのー人達とはー違ってねー」

「うふふ、親達は好き放題してるのに、ね。大変なのよ」


 ホントだよ。親共働け。

 コレが終わったら…………昨日渡した親父宛の書類出来てるかしら。

 やだなあ。


「姫様、馬車が着きました」


 あらやっと来たの。遅いな。

 でもまあジルは仕事が早い方よね。

 …………間違っても親世代に任せたら駄目だ。日が暮れるしな。

 怠け者しかいないのか、あの世代は。

 それなのに席だけは立派な奴にしがみ付いてるアホどもめ……。

 まとめて流刑にしてやりたい。ドクズ母は別地方に別便でな。


「オーマテ公爵のお屋敷に先触れをやって」

「うふふ、この二人はどうします?」

「『意外と早く来た未来の部屋』にでも入れておいて」

「分かりました」


 この入ってすぐの庭の直ぐ右隣、小さな小部屋が有る。

 そういう名前の絵が飾ってあるからそんな名前。

 因みに墓場がずらっと並んだ景気の悪い絵が壁一面に飾ってある。

 軽犯罪者は大体其処に入って貰う。

 重大犯罪者は即牢屋。優しい制度よね。


 あ、衛兵が来た。ジルが手配してたみたいだ。


「だからジルにしては仕事が遅かったのか。

 てっきりレトナとミーリヤの立ち回り現場に来たくないからかと思った」

「今回はまだ未遂で良かったですね。前回は潰れてましたから」


 ジルの『潰れた』、という言葉聞いてガキ共はワアワア喚きだした。

 あー、煩いな。部屋に入るまで要らんことを言わんでいいのに。


「ひいいいいいやあーー!!離して!!」

「あああああ私を誰だと思ってるの!?」


 うーん、去り際が見苦しいな。

 ……まあ、見苦しくない去り際見た事ないけどね。

 様式美って……三下には無いのね。


「ちょっと煩いわね」

「声帯までぇお花をぉ突っ込んどきましょうかぁ?」

「お花が可哀想だからいいわ」

「あらあら、じゃあー背中に薪でも突っ込みましょうか」

「一応今の所、積極的に私達が手を下さなくていいでしょ。

 向こうに行ったら多少どうかなるでしょうけど」


 衛兵達は暴れるガキ共を抱えて行ってしまった。

 あ、すぐに放り込んだから聞こえなくなったわ。早いな。

 それにしてもあの部屋、声が響かないのよね。どんな造り方してるのかしら。


「今日もいい善行を積みましたね」

「ねぇねぇ、あの跳ね髪の方がぁ、レトナちゃんのぉ幼馴染みの婚約者よねぇ。

 商会のぉ……」

「ええ、迎えたは宜しいのですけれど、婚約者であるゾーイを見下すわワガママ放題だわで……大変困ってたらしいのですわ」

「直ぐに罠に掛かって良かった」

「巻き髪の方がールーニアのーお知り合いの婚約者ですわよねー。確かー子爵家のー」

「ええ、此方も勝手にお金を使って困っていたみたい」

「まだ居るのねえ、そんなのが」

「お二人ともぉ運が無いことぉ」


 レトナとルーニアの知り合いが、変な令嬢と婚約させられて困っている。

 その情報を得た私たちは一計を案じた。

 正直……予想以上のチョロさだった……。暗躍する暇もない。つまらん。

 こんなに簡単だと拍子抜けするな。

 ある意味露骨過ぎて面白かったけど……。


 まあ、もっと凝った手を考えてるらしかったけど、あの子達にその手が振るわれないで良かったね……。

 後始末がね。


「それにしても……私達はすっかり悪役ですわね」

「ええ、全然悪事はしてませんけど」

「……うふふ、こんなに頑張っているのに……全然殿方が寄ってきませんわ……」

「寧ろ本当にレトナとルーニアが貰えば?」

「そ、そんな……わたくし……いけませんわ。確かにゾーイは素敵だけど……」

「ネイト様はお兄様のようなもので」


 満更でもないと。

 二人とも分かりやすいな…………。


「お二人の案件は……家格ー……ですわよねー」

「あああら……マデル、お顔が……」

「いいんですー……最早家格が合うとはいえー……敵国のー宰相の息子なんかを気にするー私が間違っているのー……」

「歌劇のようで素敵ではないのぉ!!私なんか我が家の執事ちょっと気になるのよぉ!?」


 マデルとミーリヤも辛い恋をしているな……。

 涙で前が見えないわ……まあ前から知ってるけど。

 若干上手く行きそうにないのに目を瞑ってるのも知ってるけど…………。

 何で私達が目を付けると速攻結婚するんだろうな、殿方は。

 いい加減にしろよ。


「……姫様とあの令嬢方の想い人は、余程の剛の者でないと務まらんだろうな……」

「今のところ黒猫卿くらいでしょうね」

「しっ、背焼き令嬢に聞こえるぞ!!止めろ!何でエンドリックの名前を出すんだ!!」


 いつの間にか来たサロ卿、聞こえてるからな。

 ジルもフォローしなさいよ。

 あー、ルーニアの逆鱗に触れる名前が出て来たな…………。

 しかも背焼き令嬢って呼んじゃったし。ちゃんと家名+令嬢で呼べば良かったのに……。


「……あらあらあらあらサロ卿?お話が有りますから此方へいらして?」

「私には無いぞ!!全く無いぞ!!無いからな!!」

「あらあらあらあら、お逃げにならないで!!ざっけんなダアホ!!」


 ……エンリ卿が絡むとルーニアがマジで怖いわね。

 あ、他の皆も知らんぷりしてる……。


「いや何他人面してるんですか。姫も皆様ああいう口調ですもんね」

「ジル、明日早朝テニスコートな、逃げんなよ」

「フランジール卿ぉ、私達がぁお連れしますわぁ」

「うふふ、逃げちゃ駄目ですわよ」

「ちゃんとー行きますからねー」

「…………失言でした。許してくださいおしとやかで可憐な姫様、美しい嫋やかな令嬢方」


 ……騙されん、騙されんけど……。

 ジルに手を握られたのって久々だな。

 ……しかも跪いて見上げて来るとかさああ。


「……ししし、仕方ないな!!」

「……甘ぁいわぁ……。お口とお耳が甘くて溶けちゃいそうだわぁ」

「甘々だわー。私達のーやり場のないー怒りはー甘さに塗り替えられそう―」

「う、うふふ。苦い紅茶が要りますわね……ルーニアーいい加減帰って来てくださいましー」


 ……いや、甘くなどないわよ!!今日は偶々なのよ!!

 明日からジルには厳しくしてやるんだからな!!



作者の城好きを炸裂したかった回でした…。ってそんなに詳しい描写じゃないですね。

好きなんです宮殿と見せかけた城塞が。

しかしあんまり姫と令嬢の婚活に関係ない回でしたね…。

姫と令嬢の見た目なんかはまた次の機会にでも。

ルーニアが背焼き令嬢でレトナが打ち出の令嬢ですね。

カチカチ山と一寸法師…分かり辛いなー。すみません。

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多くなって来たので、キャラの確認にどうぞ。
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