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守備範囲内には、ひとり限り

お読み頂き有難う御座いました。

ラストです。

 何だかんだあった。

 怒った4人の可愛い幼馴染み達に詰め寄られてしれっとしてたジルが、黒猫卿に不覚を取ってたのは面白かった。

 何時も宥める立場に立ってくれてるサロ卿からも殴られてたな。温厚な奴が怒ると怖いってホントだな。


「あらあら。殿方が手を出されるなら、引き下がりますわ」

「待ってくださいサロ卿!!結構痛いですね!!何で文官なんですか!?」

「黙れフランジール卿!今度という今度は反省しろ!!」

「ちょ、ユディト!庇ってくださいよ!?」

「存分に戯れることを許す、サロ卿」

「御意に姫様!!」

「待ってくださいユディト!!」


 とまあ、途中他の騎士とか文官も混じって色々有ったが。


「男の友情っていいもんだな」

「ユディト!!」


 棒読みしといた。ジルを中心にスゲー舞い散る抜け羽と毛束だな。何で変身してジャレに行ってんだ、諮問委員会。憂さ晴らしか。ニックがビクブルしてるから帰らせてやれ。


「近衛騎士団長に拳骨貰うとか、有り得ます!?絶対頭蓋骨折れました。俺の天才的な脳細胞が死んだ!!ご祝儀と慰謝料取りましょう!!」

「記憶は確かで何よりじゃねーか」

「痛みを受けた事実は消えません!」


 回復して貰っといて文句の多いやつだ。

 でも、何でかしら。にやけて、涙が。


「あらあら、姫様。本当に嬉しそうですわ」

「姫様のー心からのー笑顔はー麗しいですわねー。まあー、レトナー」

「うふふ、嫌だ、私、涙が」

「姫様もぉ当て付けにぃ、わぁんわぁん泣いちゃって良いとぉ思いますわぁ」


 良かった。

 本当に、ジルが居る。皆に囲まれて、ジルが。


「ううっ、よがっだあ。美女の涙が!何て美しい光景なんだあ!!心あ、洗われますううう本当にブライトニアがすびばせええん!!ジルさん殴られてるのそろそろ勘弁してあげでくだざあいいい!」

「いや、ニックは何一つ悪くないだろ」

「そうですよ、普通にフランジール卿が諸悪で極悪なんです。番を傷付けて放置するなど獣人罰に相当します」


 ギー卿は兎も角黒猫卿は乗っかるな。お前もルーニアに大して変わらん所業してるだろ。

 ……兎に角、ジルはもみくちゃにされた。本人は文句ばかりだったが、もみくちゃで済ましておく。まあ、刃傷沙汰はご法度にしといたからな。


「まあー、取り敢えずフランジール卿が帰ってきてー良かったー」

「充実したお顔で素晴らしいお言葉ですね!良い風に纏めないでくれますチュイ卿!!此れでトラウマにならない俺を尊敬してくださいよ!?」


 双子達が出てこねえだけ良いだろうが。後でチクチクぬいぐるみでたたかれるだろうがな。

 何で偉そうだよ。

 まあ、誰も本気で殴ってないから優しいだろ。……戻ってきて、良かった。


 ……国籍元に戻させてやる。



 金のドレスに、赤い石を嵌め込んだ、光る金のティアラ。金の縫い取りの靴。

 ヴェールはびっしりと銀糸で二角獣の国章が縫い取られた透ける素材。

 コレッデモンの、伝統的な花嫁衣装。流石に文献とは細かい意匠を変えてるが、遠目には分からんだろう。

 ジルの目の色……は無いだろうけど、似たような紅茶色のドレスにしようかと思ったんだが、ジルに反対された。


「普通に地味ですからやめましょうね、俺の色は。

 それに、指輪のその茶色い石の方が探すの大変だったんですよね。水色の方は即見付かりました」


 ……思い出すと腹立つな。言わんでいいだろその情報。まあ、あんな紅茶色の石の装飾品は……確かに、無い。実は探させたけど、無かった。

 でも、こっそり仕立てさせた紅茶色の婚礼用ドレスは……気に入ってたのにな。地味なんかじゃ無いのに。

 ジルの瞳は、昔から誰よりもキラキラしてるのに。


 外には雪がちらついている。結婚式は、明後日だ。

 天井の魔術灯と燭台の蝋燭に照らされて、キラキラしている。

 部屋よりもきっと式場はキラキラしてる、中に……此の服か。


 ……目に痛いな。

 私、コレ明後日着るのか?こんな全身金色を?そう言えば仮縫いで着たけど結構重かったな。


「……金色って、どっかの王子かジョゼ卿思い出すんだよな……」


 スゲード派手じゃね?

 もっと落ち着いた色にしとくべきだった。

 雪降ったら滅茶苦茶乱反射しそう。


「ドレス変えようかな……」


 何か無かったっけ。派手そうなドレス。あのボケ母のピンク三昧よりはマシだろうけど……金色って。

 ……最近結婚した王族って、何色が流行りだったんだろ。

 ああ、そう言えばドゥッカーノ王妃は白だった。髪も白いから目に白が痛かったけど……。白、膨張色だけど小柄だったから膨れて見えなかったよな……。素敵だったが……私が着たら……太って見えるドレスだったなー。あ、公爵の所の義妹姫もそーだっけ。

 え、白流行ってたな。何で気付かなかったんだろ。


「白……」

「どうしたんですユディト。トチ狂わないでくださいね」

「!?」


 び、ビックリした!!だから、何で王女の部屋に侵入出来るんだよ!!前からだけど!!


「な、驚かすなよ!!」

「何ですか今更。十代から通ってるってのに」


 何なんだコイツ、私の寛大な許しと愛がなきゃ首捻り切られてもおかしくねー立場の癖に……。

 切らないけど!!


「それで、白がどうしました?初夜用のよくはだけられる寝間着と下着の話ですか?透けて良いですよね」

「そんな話してねーだろ!!ドレスだよドレス!!」


 何で直ぐそっちに行くんだよ!!もっと健全にイチャイチャしたかったのに!!


「婚礼用の?白が良かったんですか?」

「何か流行ってるっぽいし!よく見たらスゲード派手でギラギラしてるし」

「良いじゃないですか。婚礼くらいド派手でギラギラしてても。豪華絢爛に愛を誓ってくださいよ」

「ご、豪華絢爛……に、愛を!?」


 な、何なのよそれは!!何か、何か無駄にイヤらしくて偉そうだし!!


「王女と結婚なんて普通にド派手に限りますよ。国際的にも実に見せびらかし甲斐があります」


 殴りてえ、そのドヤ顔。

 人が悩んでるのに!!


「ド派手ド派手って!!何なんだよジル、そんな派手好きでも無かっただろ!?」

「だって目立ちたいですし?ユディトが俺のだって目立って御披露目したいです」

「おおおおおお!?」

「顔赤いですね」


 ここここ、この野郎!!最近顔中に口付けなんかしてきて!!私の機嫌を!!誤魔化してる!!酷い!ズルい!!頭回らない!!


「わ、私は素朴が良かったのに!!」

「森の中でひっそり前みたいに愛し合って営むんでしたら良いですけど、式ぐらい豪華で派手なのが良いです」

「そんな話はしてねーよ!!私はだな!!この式の後に」

「仲間内でお式ですか?仲間内ったって何人居るんですか。

 そんな沢山の人数が入って新郎新婦を視界不良無く見守れる森は無いです。最早木がちょっと生えてる平地ですよ。大広間に植木でも置きます?」


 くっ!!国内だけでも……同世代に絞っても確かに数十人規模だけど!!言い返せねえ!


「御披露目は派手に豪華に一度で良くないです?

 可愛い格好して前陛下のお屋敷の森に行きたきゃ時期によっては付き合いますから。彼処でも愛を誓いたいんですよね?」

「……」


 み、見抜かれてる。


「場所を地味にしたいなら此処でも誓いますけど。木が要るなら廊下の植木かミーリヤ嬢に」

「植木から離れろ!!」

「木が集まってる森が良いんなら、植木で良いじゃないですか。

 普通に森の中なんて寒いし、薄着で愛を誓いたいんならもっと春になってからにしてください。夏は虫多いから却下です」

「お前、私の意見を聞く気ねーな」

「気を張り過ぎなんですよ。さあさあ寝ましょう。明後日の式まで寝ても良いですかね」

「良い訳あるか!!っぶっ!!」


 もふっと勝手に人の布団用毛皮を乗せてきやがった。苦しい!!


「これから夜会で踊るのは俺で嬉しいでしょう?」

「ジル」

「誰に誘われても、社交辞令でも断って。手を取るのは伴侶の俺だけですよ。ユディト。

 俺の守備範囲内には、ずうっとユディトひとりしか居ないんですからね」


 無茶苦茶だ。そういう訳にもいかない。

 国との付き合いで、余所の王族と踊ることだって有る。ジルだって、その責務が……。


 口を開けても、正論が出てこない。

 だって!私だってジルとだけ踊りたかった。子供のように、胸の中で叫んでいる。


 いつの間にか覆い被さってきたジルの瞳とかち合う。キラキラと、蝋燭の明かりに照らされて紅茶色の瞳が煌めいていた。


「誰も誘う気が湧かないように。

 夜会では、偉そうに玉座でふんぞり返っていましょう。大国らしくね」

「だけど」

「ドゥッカーノともソーレミタイナとも、友好です。それぞれ執拗に愛する伴侶がおられます。それ以外の国には、俺が頭を遣いますよ」


 勝手に寝台に入ってきてぎゅう、と私を抱え込んだジルは、背中を撫でてきた。

 ほう、と息を吐く程に、暖かい。

 離れたくない。離れないで。勝手な、勝手なことばかり言うジルが大好き。


「お姫様は愛する騎士を伴侶にして、末長く仲良く暮らしました、で良いでしょう。どうせ問題は後からやって来ますから」


 そんな現実は単純じゃないのに。でも、口からは出てこない。


「女王と王配の治世は素晴らしかったです!みたいな死んでからの評価はどうでもいいんで、俺と仲良く長生きして暮らしましょうね」


 勝手だ。

 勝手なのに、離れられない私のジル。私だって、どんなに離されても貴方しかいなかったんだ。


「……私の婚礼用ドレス見て、鼻血出すなよ」

「ええ、それなら出血しても良さそうですね」


これ位の強がりで、目尻を下げて、本当に嬉しそうに笑うから、何がなんでも、頑張る。



式の当日、お互いの姿に見惚れて、三十分予定が狂ったのは、まあ。

一生言い合うことになるだろうな、と思うわ。




ユディトとジルをお気に召してくださった方に、最大の感謝を。

このお話でひと区切りとさせて頂きます。

お読み頂き、誠に有難う御座いました。

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登場人物紹介
多くなって来たので、キャラの確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
[一言] ハッピーエンド、おめでとうございます。 多分みんなが幸せになれた結末でほっと致しました。 獣人比率が高い為が、他の国の恋愛事情より即物的で 下ネタに走りがちなのはしょうがないですね。 個人的…
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