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近々仔犬がやって来る!

お読み頂き有り難う御座います。

獣人が多いですねえ。

「……チュイ卿、何でぐたっとしてんだ?」

「王子様にー撫で回されたかーらにー決まってますよー!

 姫様ー」


 顔色悪いし心なしか羽の艶も悪……くはねえな。いつも以上にフカフカしてそうだけど。


「何でー俺のー翼をー撫でまわさせるんですかー!?鳥ならー壁塗り卿だっているでしょうがー!!番以外の野郎に撫でまわされるのはー不愉快なんですよー!?」


 相変わらず煩い奴だな。まあ、ルディが鳥好きで、自分がモフモフの羽持ち獣人で其処にいたんだから諦めてくれとしか思えねえ。

 しかし壁塗り卿、マキア・コラータ卿ねえ。そういやアイツも大型鳥系の獣人だったな。丸刈り頭だから失念してたわ。


「マキア卿だと羽の量が足らなくねえかと思ってな」

「ハゲワシの何がいけないんです!?彼だって大型鳥の獣人ですよ!!」

「どの道、ナノニ川の氾濫の件で派遣したから、壁塗り卿はいねーよ」

「ああああもうー!!いいですもうー!!キエラの元に行ってきますー!!」


 あ、行っちまった。落ち羽がスゲーな。

 ……まあ、キエラ嬢の心が強制的にチュイ卿に向いたみたいで、良かったわ。

 ウサちゃんが音波振動のスキルで其処らを壊す前で本当に良かった。ミーリヤにも苦労を掛けた。

 キエラ嬢自体は結構な傷を心に負ったらしいが、ニックも迷惑してたからしょうがねーわ。


「番が振り向いて良かったですね、チュイ卿は。案外恐怖で繋ぎ止めるのは最強かもしれませんよ」

「まあ、キエラ嬢はやりすぎたしな。仕方ねえな」


 しかし、あのカサニ家自体も、無害で有益な婿争奪したかったとは思わなかった。ウチの国の貴族にしちゃあ大人しかったからなあ。家業が家業だから表舞台には上がらねえかと思ってた思い込みが良くなかったな。


「番としてチュイ卿にも役立って貰わねえと。獣人は番の為なら何でもするんだろ?」

「若干意味が違いますよ。番の物理的な危機の為なら身を粉にする心構えなんです。身売りは別件ですよ。浮気に抵触します」


 面倒臭いし大袈裟だな。大体羽触らせる位で身売りって誇張しすぎだろうが。まあ、ルディにはかなり撫で回されたらしいってミーリヤが怒り狂ってたな。ルディへの餌としては今度から考え直した方が良さそうか。


「ですからユディト、俺の危機には俺を信じて身売りは避けてください。どうしてもという時は、敵の頭を踏みにじる事を許しますけど」

「そんな変態相手は嫌だ」


 一体何を仮想敵にしてやがるんだ、ジルの奴は。人の頭なんざ踏みたくねーよ!


「ユディト、貴女の見た目だけはエロくて男の劣情を誘う麗しさなのを自覚してください。中身は攻城兵器なのが知れ渡っていない国も有るかもしれないんですよ」

「ラケットでどつかれたいのかお前は」


 あーもう!喧嘩売ってるとしか思えねえ!!


「いちばんめの金目ー!」


 ああん?

 この何を指してるのかサッパリ分からん呼び方は……。


「おや、カータですね」

「たいへんたいへん!!たいへんなへんたいへん!」

「は?変態?」


 珍しい、黒い犬耳がぺしゃっとしてんな。

 何処かに不審者が紛れ込んだのか?

 しかし、噛み犬カータなら並みの変態なら相手出来るだろ。暗殺者なんだからなあ。この耳をフルフル震わせた犬耳の見た目で……。


「レトナがおなか気持ち悪いって!!」

「先に言え!!」


 こんな所で戯言会話をしてる場合じゃねーだろ!!

 カータがあっち、と指差す方に足を向ける。くそう、あっちって何処だよ!!


「珍しいですね。俺より遥かに軍事訓練慣れされてるご令嬢が腹痛なんて……世界が暗黒に覆われる前兆でしょうか」

「レトナはじょーぶなのに、なんで?」

「泣かないでくださいカータ。打出の令嬢も敵わないものが有るんですよ。筆頭は君ですね」

「おれ!?おれが、レトナのおなか痛くしたの!?きゃうわんレトナあ!!」

「小芝居はいいから、回復魔術使える奴を引っ張って来いジル!」


 あーもう、この非常時に碌な事を吹き込まねえな!!


「どうしよ、いちばんめの金目!?おれ、レトナの項は噛んだけど、おなかは舐めたけど噛んでないのに!!あっ!もしかしてこう」

「分かったから、往来でとんでもないことを叫ぶんじゃねえ!!」


 よく走ってる最中に噛まねえな!!というか言うな本当に!!恥じらいを持てよいい加減に!!

 あっ、見えてきた……と思ったらデカイ影が。レトナは?


「うう……」

「あっ、カータ。お前は番を放置して一体何処に……姫様まで!!」


 この珍しい茶色と黄色混ざりの髪に赤紫の猫目の子爵令息は、スティング・エイン。通称ティゴ卿。茶色に黄色の縞を持つ虎獣人で、普通の虎は縞の方が濃い色だから逆縞卿とも呼ばれてる。

 ……何でだか、この間からよく獣人諮問議会の面子によく会うな。もし仕込みだったら極刑だ。番と2週間接近禁止命令を出してやる。


「あれ、ティゴ卿じゃねえか。久々だな」

「はい姫様御機嫌麗しゅう。ではなくですね。レトナ嬢が倒れるなんてどういう天変地異の前触れでしょうか。カータお前、放置されたレトナ嬢が怒り狂ったらどうしてくれるんだ。通りがかりの僕が被害に遭うかもしれんだろ」

「うふふ……ティゴ卿煩いのよ。カータに誰か呼んできてって頼んだのは私なの……。申し訳御座いません姫様。

 ご足労掛ける気は……」

「レトナあ!!レトナあ!!」


 これはいかんな。何時も薔薇色の頬で微笑むレトナの顔色が良くない。

 しかし、逆縞卿は絶対レトナを運ばないだろうし、カータが許すとは思えない。しかしカータがレトナを抱えて移動させるのは無理。身長一緒だからな。

 あーもう、獣人の執着面倒臭いな!


「よしレトナ、捕まれ。カータ、反対側でレトナを支えろ」

「あううん。おれが虎みたいにでっかかったらレトナをだっこできるのに……レトナ、おれがちびっこいからあ!!」

「うふふカータ、貴方の価値はそんな事で揺らがないわ……」

「そうだぞカータ。番を支えられるお前は立派な雄だ」

「いい歳といい立場の大人が雁首揃えて、何非効率的なことやってるんですか?車輪付き担架を借りてきましたよ」


 ………感動の場面だったよな、今。

 思いっきり雰囲気がぶち壊されたぞ……。いや、確かにこんなことしてないで急げってのは分かるけどよ。も少し、気遣いようが有るだろ。


「カータ、これなら取っ手を押すだけですから、カータだけでレトナ嬢を運べますよ」

「あう!ありがと、かきかき帳!」

「記録帳ですよ、カータ」

「益々フランジール卿は空気を壊すのがお得意で、胡散臭いですよね……。この前も演習中に場の空気を敢えて読まずに早く帰りたい早く帰りたいと……」


 そういや逆縞卿も軍属だったな。ジルが迷惑を掛けた奴がこんなところにも……。

 ……管理不行き届きで詫びてやった方がいいのかね。


「これはティゴ卿。お元気そうで」

「近衛騎士団長が怒りに震えておられたぞ。数少ない良識あるオッサンは大事にしろよ」


 前言撤回したくなんな、おい。

 お前はその良識ある近衛騎士団長の甥っ子だろうが。


「うう、具合さえ悪くなければ打ちのめしたい会話ですわ……」

「レトナあ!」

「分かる。私もレトナが具合さえ悪くなきゃ、ちょっとテニスコートへ誘ってやるんだけどな」


 途端に聞こえねえフリをするのはやめろ。逆縞卿は虎耳を押さえるな。地味にこんな大男の癖に愛嬌があって腹立つな。これだから猫科はあざといんだよ。




「……………」

「ユディト、顔が恐ろしいですよ」

「マデル嬢とルーニア嬢は自宅に居られましたので連絡は付きましたが、ミーリヤが居ませんね。何処ほっつき歩いてるんでしょうあの花咲かショタコンは」

「おい逆縞卿」

「僭越ながら姫様、あの女いやご令嬢は立派なショタコンです。ショーン王子殿下って18でしょう!?言いたかないですが幾つ離れていると!?」

「いや、まあ……」

「うーん、あの花咲か令嬢にその言い様……。幼馴染みの特権なのか、気安さが恐ろしいですね」

「フランジール卿にそっくりお返ししますよ」


 逆縞卿は私を見るな。


「ディルマウリスもそうですが、親類が騎士団長やってると壮行会とかに子供の頃から無駄に引っ張り出されて、幼馴染み扱いになるんですよね。兎に角親の思惑で掛け合わせたいのがミエミエで気持ち悪いんですよ」

「ああ、一時期ミーリヤ嬢とティゴ卿は婚約話がありましたもんね」

「親だけが盛り上がってる異様な話ね。中々幼き日の僅かな友情もぶっ壊れた日々でしたよ」


 そういやそんな話も有ったな。あの時は色々傷ついていたミーリヤが気の毒だった。


「しかし、前の彼氏は同年代だったのに何故……しかも王子ってネタですよね」

「ミーリヤは本気なんだがな」

「姫様もネタだと思われたとお聞きしましたよ」

「誰がそんなこと漏らしてんだ」

「この前フランジール卿と立ち話をしていました時に」

「ジル!!」

「あっ、ホラユディト。扉が開きそうですよ」


 えっ!?いや、くそう!!でもレトナの方が先だな!


「おれ、おやいぬになったよ」


 うお!

 途端に扉が開いたと思ったら、何だ?

 おやいぬ?おやいぬ、って何だ?おや、居ぬ?


「おやいぬ?」

「おや、犬?」

「おやいぬ……」

「あうう!!何で!?おとーさんいぬだよう!おれとレトナの仔犬が出来たの!!」


 …………マジか。


「ジル」

「はい、俺達も頑張らないと」

「違うわ!!花を用意しろ!!いや、もしかしたら匂いが気持ち悪いかな!!何だ?造花か?あ、その前にでかいケーキか!?兎に角おめでとう会を盛大に」

「姫様、混乱しすぎです。いやあカータ!やったな!!」

「あい!」


 不遇を結構囲ってきた私らの!初めての!!

 やったやった!!ああ!嬉しい!!ゾクゾクしてくる!!


「レトナ、ケーキ食べれる?」

「………う、うふふ。嬉しいんだけど目茶苦茶恥ずかしいわね……」

「やったなレトナ!!有り難うおめでとう!!」

「その会話、ユディトの子供みたいなんで却下です」

「ううう!!おれの仔犬だよ!」

「分かりましたから余り騒がないでくださいませ……。うう、恥ずかしいわ!!」

「巻き毛に顔を隠したレトナも可愛いな!!」

「ですからレトナ嬢を口説かないでください」


 ああ、早く来ないかしら!私の可愛い幼馴染みの仔犬が!!


仔犬と言うか、仔リカオンですが犬系の獣人なので仔犬でお送り致します。

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登場人物紹介
多くなって来たので、キャラの確認にどうぞ。
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