記録帳の提案
お読み頂き有り難う御座います。
前回の続きで御座います。面子が増えました。
「……うふふ、何て壮観な光景なのかしら」
「……全くだな」
「にぁ」
「……あの、レトナ、サロ卿……。あんまり見ないでくれないかしら。散々ミーリヤとマデルにイジられたのよ」
「無ぅ理よぉ」
「歴史的なー光景だものねー。姫様ールーニアーおめでとうございますー」
「2倍おめでとうございますぅ。姫様ールーニアちゃぁん」
「うふふ、おめでとうございます姫様にルーニア」
「……おめでとうございます、姫様。ルーニア嬢に関しては……いい加減退いたらどうだ、黒猫卿」
「にゅあん!!」
うおおこっちにも飛び火してきやがったよ!!
……恥ずい。実に恥ずかしい!!
おおおおルーニアとめっちゃ目が合う!!親友だけど今私、ルーニアと心が繋がってると思う!!かつてなく!!
あの後……ジルの手当というか、やっぱり治療に時間が掛るって話になって……。
治療について話し込んでたら、黒猫卿が何故か猫になってな。
ルーニアの膝から退かねえでにゃあにゃあ鳴くもんだから、全く話にならねえんだわ。
仕方ねえから、もうひとつの話題をしようってことになって。
で、マデルとレトナとミーリヤとサロ卿を呼んだ訳だ。他国に行ってなくて連絡ついて良かった。
何故かジルとの事やジルが獣人だったって事が広まってたんだが……どういうことだ。
私は全く何も言ってねえぞ。どう言う伝令を出したんだジル!?早く伝わり過ぎだろう!!
はっ!!まさか獣人達が手貸した!?くそっ、あり得るな!!
「有難う御座います、皆様方。色々有りましたが、隠さずにベタベタ出来て俺は幸せです」
堂々と何変態な事を言ってんだ!!
……ドヤ顔してんだろうな、さぞかし。見えねえけど!!……この、へばりつく奴が!!。
私の背後に!!べったりと!!
さっきから後ろからへばりついて取れねえ!!肩から腕を撫でてくんな!!
怒鳴りてえけど、けど!!くそう!!ちょっと嬉しいから怒鳴れない!!
「……椅子座れよ、ジル」
「俺はユディトの後ろで立って茶々を入れる立場なので」
何でだよ!!いや、そうでもあったけど!!
「近衛の仕事しろよ!!」
「腐った他人の貴族を陥れようとする悪だくみって仕事なんですか?追加給金出ます?ユディトの現物支給でも結構ですが……」
「私は王女だぞ!?何が現物支給だ!!大体悪だくみ言うな!!後、言いたかねえけど他人じゃ無くて身内!!」
「エンリ!!いい加減話し合いするんだから退けってのよ!!」
「にゃあああんゴロゴロ」
「……っ!!あざといのが腹立たしい!!こんな事で私の関心を買おうっての!?甘いのよ!!」
「黒猫卿……前足の位置が思いっきり性犯罪じゃないか?」
「ルーニアがー同意ーしてるみたいだからーいいんじゃなーくてー?」
「人の姿ならぁ叩き落としてる位置ねぇ」
……思いっきり擦り寄るフリしてルーニアの胸触ってねえか、黒猫卿。喉鳴らして甘えてる猫にしか見えねえのがタチ悪ィわ。
いや、ルーニアがデレデレして頭撫でてるから良いのか?
思いっきり黒猫卿の術中に嵌まってんじゃねえの。いや、猫と戯れるルーニアは可愛いけど。
肝心の猫……ソイツ、言いたかないが同い年の陰険眼鏡野郎だぞと思い出せないぐらい、猫姿は可愛い。
ただ、思いっきり白と黒の前足が性的接触してそうなんだがな。
「羨まけしからんですね。俺も本になれたら脇に抱えられたり胸に抱きこんて貰えたんでしょうか。本目線でユディトの胸を味わうのは」
「オイふざけんなジル」
大体何だ本目線って。訳分からん持論は止めろ。
後、お前だと分かってるのに絶対脇なんかに抱えるか!!ふざけんな!!調子に乗りすぎだろ!!
「……これでぇ5人中3人が獣人に囲われぇ……囚われちゃったのねぇ」
「凄ーいわねー」
うっ、……ミーリヤとマデルが感心された。このふたりの相手は人だからな……。
いや、私もその予定だったんだが大幅に狂いまくった。
「私も吃驚だよ。まさかジルが獣人だとはな。
いや、変身出来ないけど獣人?でも、カータやその妹は犬耳……ジルはああいう扱いなのか?イマイチよく分からんが、まさか一部紙で出来てたりしねえよな?」
「凄い発想しますねユディト。お触り頂ける範囲で俺は紙じゃ無かったでしょう?」
……触れる範囲ぃ!?
ななな何ちゅうことを大声で!!
ああああ全員こっちを……双子たちを見るような目で……バカップルだなぁって生暖かい目で見てる!!
「と、時と場所を考えろ!!」
「大丈夫です、生温い視線しか頂いておりません」
「それが嫌なんだろうが!!ちょ、皆!!微笑ましい視線をやめろ!!」
「にゃあああん」
「あらあら姫様、滅茶苦茶分かりますわ!!いい加減人に戻れエンリ!!入るな!!」
あ、首根っこを掴まれて叩きつけるのかと思いきや、そっと床に置いてる。
……不服そうにガリガリスカート引っ掻いて……潜り込もうとしたら流石に踏まれそうになってんな。
「獣人虐待ですよ酷いじゃ有りませんかルーニア。踏むのは構いませんが、踏み返しますよ?」
「うふふ……ルーニア、黒猫卿はお話の間猫のままの方が良かったんじゃない?」
「ええ……全くその通りだったわね」
……疲れ切ってんな、ルーニア。
まあ、横に黒猫卿が普通に座っただけでもいいか。
「フランジール卿が獣人だったのは喜ばしいですが、豪速でお相手を見つけ出して狩って来られたおふたりも大概だと思いますよ」
「ふぅんだぁ。私ぃ未だぁ狩れてないわよぉ」
「ミーリヤ嬢は……相手がショーン王子殿下だからな……」
「そう言うサロ卿もー獣人に囚われちゃった方じゃないのー。子犬ちゃん攻略頑張ってねー」
「……ああ、まあな」
「うにゃん」
サロ卿の返事が暗いな。何か有ったのか。しかも黒猫卿また猫に戻っちまったし。ルーニアも文句言わず膝に乗せてんな。
「私の事はいい。姫様、今回のお呼び出しは……」
「ああ、取り敢えず……色々と『家の片付け』とか、『療養』に放り込みたい人物に手を付けようと思ってな」
「!!」
全員の目が真剣になった。
まあ、そうだよな。
此処に集まっている面々だけでも……『療養』させたい親族……まあ、ぶっちゃけ親とその兄弟だな、しか居ない。
酷い話だが、要職に就き遊び倒している上、無知無謀にて能無し。
……何故か、対外的には権限を持たない我々……そいつらの子女がその後始末をしている訳だ。対外的にはバレバレなんだけどな。
例外なく祖父母世代に育てられ、鍛えられた我々世代はハッキリ言って優秀だからな。
子育ては失敗したが、孫育てには成功されてるんだよ祖父母世代は。
……愛情も頂いたから、皮肉は面と向かっては言わないが。
「何か策が?」
「有りますよ。俺が立てました」
いきなりするっと首元の熱が居無くなって……。ジルがパッパッパッと紙の束を皆に配ってる。
「……機敏なフランジール卿は何と言うか、見慣れないせいか……何と言うか」
「にぃ……」
スゲー顔だなサロ卿。
いや、言いたいことは分かる。黒猫卿のあんな鳴き声も初聞きだな。
「あらあら、あまりお早く動かない方が宜しいわよ、フランジール卿」
「平気です。今までにない程体が軽いので」
「……全くぅ気付かなかったわねぇ。申し訳ぇないわぁ。知ってたら斬れたのにぃ」
「全くよね」
レトナとミーリヤが頷きあってんな。確かにふたりの腕なら切るか叩き潰せたか。でもなあ。
「いえ、ミーリヤ嬢とレトナ嬢のご好意は嬉しいですが、貴女方に剣を向けられたくないです。怖すぎます」
「確かにーねー」
「酷ぉいマデルちゃぁん!」
「うふふ、ちゃんと目的の物だけ潰すわよ」
ふたりの実力は分かっちゃいるが、怖えと思うわ。
殺意無くても強いし。
「それにしてもぉ少なくなぁい?100家程しかぁ無いわぁ」
「一気に処分してはギウェン家から苦情が出ましたので、おいおいと言う事に」
「別に今まで暇して姫様方のお傍にいたんだから、毎日働く位どうってことないだろう」
サロ卿が意外に辛辣だな。まあ、サロ卿もこの頃仕事詰まってたみたいだし……。
ああ、成程。それで子犬ちゃんに会えなくて苛ついてる訳か。
「それで、何処か先んじたい家は有りますかとお伺いしたく」
「我がリメイ家をーお願いしますー」
………うん?マデル?
珍しいな。こういう場面で積極的に手を上げるとは。
後でもー宜しいですわーとか言うかと思ってた。
他の皆もそう思ったのか、マデルに注目集まってんな。
「実はーオーフェン様をーお連れしてるのにーあの母親ー何て言ったとー思いますー?」
「………身分差の話か?」
リメイ公爵は夫人に言われるがままっつーか、だからなあ。あんまやる気ねーのは他の家と変わらんが。
まあ、大体想像はつく。
しかし、何時バルトロイズ子爵を連れてきてたんだ。形の上の親にお披露目とは言え、やること早えな。思い切り良すぎだな。
「口汚くー『こんな身分の低い野獣を』と良いかけましたのでー魔術口枷嵌めてー参りましたのー」
「うっわ……流石舌切り令嬢の本領発揮ですね」
「切ってやってもー良かったんですけどねー。オーフェン様にー無礼を働くだろうからー会わせたくー無かったんですがー。お会いしたいとー言ってくださってーお優しいんですのよー」
おお、可愛い。マデルがデレてんの初めて見たな。
「それなら、第一号はリメイ公爵夫妻にしとくか?」
「宜しいんですのー?」
「うふふ、宜しいのでは?」
「うちはぁ父親とその兄弟がぁ良いですわぁ」
「当家も両親だな」
「うみうみうにゃあ」
「まあまあ、エンリもウチと同じ両親とそのご兄弟ですわね……」
結局猫から戻らねえな、黒猫卿。
黒猫卿、猫だとセクハラ(愛情表現)し放題ですね。ジルは変身せずともセクハラしてますが。