その面子を連れ歩く!?
お読み頂き有り難う御座います。
悩める寝不足のユディトが朝から濃い部下に会いました。
あー寒い。あーよく眠れなかった!!
この頭脳明晰にして容姿端麗な私が……久々に頭が冴えないわ。
……寝不足って何よりも敵だな。辛いわー勝てないわー。
肩凝りが止まらんな。あー、湯治とか行きたいなー。5人で湯治……。
………5人じゃ済まんな。
付いて来る面子が多そうだし面倒が起きそうだ……。
くそっ、空想の中ぐらいゆっくりしてーわ。
もう執務室に向かうにしても分厚い外套が必要だし。雪は降ってるし。
雪のせいか?目の前が何だかチッカチカしてんな。
白と黄色がチッカチカビッカビカ……。朝の光に雪が反射して……いや、雪じゃねえわ。
動いてるしこっち来るし。
「あぁん?」
「こ、これはこれは……!!姉姫様では御座いませんか!!朝から何という奇遇な巡り合わせで御座いましょう!!」
珍しー。国中で1,2を争う用事が無いと出て来ない男じゃないか。
あ、もう一人はエルジュ卿な。
つまり、奴と同じ穴の貉。妹の婚約者のもうひとり。……国公式の引き籠り。
まあ、此処最近は結構出してるけどな!!
でもあんまり見ないから地味に外にいると見間違いかと思ってしまうわね。
「……相変わらず朝から目に派手で煩えな、ジョゼ卿」
「ご、ご機嫌斜めで御座いますね!煌びやかで申し訳ありません」
「朝からホントお前何着てんの?金色使い過ぎだろ」
全身黄色と金色ってどうなんだよ。頭は白っぽい銀色だし、派手か。いや、この男は昔から派手だったか。
……別に黄色は嫌いじゃねえが、ホント目に痛いわ。どーなってんだ。
「お前、雪に埋もれても直ぐ見つけられそうだな」
「おおっと!お目覚めください我が姫君の姉姫様!!貴女の愛しいウェルギリア様が悲しまれますよ!!そう、この私!ジョゼ・ギウェンが居ないと!!我が愛しのウェルギリア様が!!」
「煩えな。だったら自発的に埋まってウェルに探して貰え馬鹿者」
「そ、そう来られますか!?何故に其処迄ご機嫌斜めなんですか姫様……」
「あぁん?お前に関係有んの?大体お前何で外に出てんだよ。ウェルにお使いと称して追い出されたのか?」
「違いますよ!!大体、私を引っ張り出したのはフランジール卿ですから!!」
……何だと?
ジル?
ジルが、この他人んちに引き籠る迷惑の一角を引っ張り出した?
いや、滞在費は貰ってんだけどな。それ以上にまあ、出てくると出てくるで煩いし大袈裟だし目に痛いし迷惑っぽいんだけどな。
ウェルが横にいるだけで更に声量が増して煩い。アイツ、よく横にいるよな。ウェルの耳って丈夫だとしか思えねえわ。
「……ああ、言ってしまいましたよ我が盟友よ。弱き我が身を許したまえ……。だが私は我が黄金、我が心そのものウェル様の為に生き残らねばならない……。死ぬなら彼女の御為に」
「お前ホントに話長いし煩えな!!」
「あの、本当に恐怖に震えて堪えますので姫様、怒鳴らないでくださいませんでしょうか!」
「だったらビビりながら大袈裟に振舞うなよ。
後地味に軽装だから普通に寒いんじゃねえの。派手だから防寒に長けて無さそう」
「仕方無いじゃないですか!!仕事着なんですから!!私だって普段はもっと地味で分厚い格好してますからね!!」
マジか。地味な恰好のジョゼ卿って想像つかねえな。
そんな恰好でこの煩さなのウゼエだろーな。ウェルはよく我慢してられんな。あの双子の男の趣味が解らんわ。
「お前んちの職業に突っ込んでもしゃーねーけど、何であんなノリなんだ?寒いなら着込めよ」
「着込んでたら演出も衝撃を与えられませんし、迫力が出ませんでしょう!!
ええ健康の為に私も改善すべきだと思いますよ!!この格好は本当に苦行です!室内だろうと寒いですし暑いんですよ!!仮にも部屋を出たら職場の中ですから部屋着で出る訳にも行きませんし!!」
うわ、逆切れしやがったホントに煩えな。
気に入ってないとも快適でないとも知らねえよ。
「わーったよ、落ち着け。で、ジルは何でお前を連れ出した?」
「奇しくもエルジュ卿もですがね。我々二人が姫様達無しで連れ出されるなんて珍しい事です。すれ違う皆さんに二度見されて戻って来られてまた見られましたよ。酷過ぎやしませんか」
「お前らふたりが職務時間外に揃ってるとそりゃ目立つだろうな」
寧ろ妹達無しで居られるんだなってのが感想だろうな。
「いえ、実際には我々への関心は一瞬でして、王子殿下に王族殿下に皇太子の婚約者殿下の方が目立ってましたよ」
「……待て、それルディとレルミッドとニックかよ。何でお前らと一緒なんだよ」
「集められたフランジール卿に仰ってください」
スゲエ面子だな。
絶対集まりそうにないのに集まってしまったのか。
「何処行ったんだよ」
「カシカニ亭です」
ジョゼ卿が挙げたのは城下町の酒場だった。……蟹か。ギー卿んち関係かな。
アイツもよく分からんよな。
「それでお茶とお酒を嗜みまして……王子殿下はきっちりお食事をされていましたので大変驚きでしたね」
「酒場!?マジか、ルディ……」
アイツ、王子だった筈だが……。いや、王子だよな。王子だ。……違ってりゃ良かったけど、見た目も中身も王子の筈だ。
ああでも、結構平気でこっちが出したお茶飲んでたな。
毒に耐性が有るのか、他の手段で分かるのか。どっちもなのか。
「何と言うか……お偉い方々の前で非常に息が詰まりましたね。僭越ながら立場が未だ一緒なので、未だお話しやすかったのはニック殿位です……」
「ニックは元庶民だけどその辺は良いのか」
「畏れながら……。我々姫様がたの婚約者の地位を頂いたとはいえ、爵位は大したこと有りませんからね。他国の王子殿下と王族殿下と酒場で……周りにドン引きされながらも飲み食いされるのはちょっとどうかと思いましたよ、流石に」
珍しいな、何時もド派手なジョゼ卿が死んだ目になってんの。
まあ、私は分からんがそんなもんか。
でも楽しそうではあるがな。何にも裏がないなら混ざりたい。
しっかし……さっきからジョゼ卿がチラチラと周りを伺ってるのが良く分かる。
誰か適当な逃げる手段を探してるんだな……。早々通りかからねえだろ。
「……で?それでいつまで話を逸らす気だ?」
「……何の事ですやら」
「私に隠し事をして生きて行けると思うか?……ウェルの傍から」
「ワーワーワーワー!!そればかりはご勘弁をおおおおお!!」
煩え!!……コイツ、心配になるくらいにチョロいな。大丈夫か。
ウェルギリアの話が出ると途端にえぐい程弱い……。
寝不足の耳に響くわ……。
「そんな目で見ないでください……。やはり姫様はウェル様のお姉さまですね……。お耳の形が似ておられます」
「知らなかったな、そうかよ。吐け」
「……ああ、我が心のウェルギリア様私にご加護を……」
いや、ウェルは其処の小道入った建物の中にいるだろ。フツーに寝てる奴拝むな。人の妹を信仰対象にすんな。
「……お部屋にですね、入れろと」
「何処の部屋だ?まさかウェルかジェオ?」
「それは私共が命に代えても阻止致しますよ!!」
コイツ、妹のことになるとホント鼻息荒いな。
廊下で駄弁ると寒くなって来たわ。ジョゼ卿、何気に鼻水出てるしな。
「……『仕事場』にです」
「…ジルが?」
何で?
確かにあそこの鍵は処刑人しか持ってない。まあ、必要があればブチ破れる奴は何人か居るだろうがあんな所壊しても意味無いし。
で、処刑してない時はただの縁起悪い部屋だから、入りたいならフツーに鍵を使わせりゃいい。一番手近で身近なのが……ジョゼ卿とエルジュ卿。
それに、部屋を使おうにもアイツには処刑の許可は出せない。勝手に出そうもんなら普通に……まあ、処刑だな。
流石に其処迄アホな事は出来ねえだろうし……そもそもジョゼ卿もエルジュ卿も従わんだろ。
「目的は?」
「ご、御本人を尋問されてはい、如何かと愚行致します!」
何だと?この期に及んで言わねえだと?
「あぁ?この私の前でコソコソ隠そうとするたぁいい度胸だな?生意気言わないでとっとと言えよ」
「脅さないで下さい!!」
「身内だろ?ウェルギリアのお姉様である私に逆らうな」
「何と言う悲劇だ!!助けて下さい我が黄金ウェルギリア様ーー!!」
煩え!
思わず手が出そうだよ!私は平和的で穏健派な王女だから殴らないけど!!
「私とエルジュ卿はがフランジール卿にバラしたらどうなるか!脅されております!」
「お前らが外に出る確率は少ない、構わん。この国の権力者は私が望んでいるんだ、吐け」
「………」
「ウェルギリアを外遊に回して離してもいいな」
「部屋に居る者に話を聞きたいと言われました!意味は理解しておりません!!」
掌返しひでえな。コイツの一族って拷問官もした筈だが脅しに弱くていいのか?仕事になるのか?
いやまあ仕事に関しては特に問題も上がってねえし、いいか。
それよりジルだ。
部屋に居る奴に話を聞きたい?
………あの部屋は基本空だぞ?
処刑後は……直後はだが、金と宝石で溢れては居るがな。
まあ、見たこと有るけどそりゃあキンキラキンになる。
あんまり見てて楽しくは無いがな。
で、加工専門の奴の所に行く訳だが。
経緯はどうであれ金と宝石だからな。ちゃんと収入になる訳だ。
有り難い能力だよ。コイツの性格は……煩えし派手傾向だけどな。
まあいい。
恐らく、開けさせた後……ルディに通訳させたのか。
死者との通訳を。
………誰に?
ジルは誰と喋りたかった?あの中で処刑させた奴って……。
…………アイツの親戚で遺産埋めて隠しでもしてる奴でも居たか?
最近だとあのドクズ母とその取り巻き位だよな。
何か喋る事でも有ったのか?
わ、解らん。
ジルは一体何がしたいんだ?
「姫様、ウェルギリア様の元へ戻っても宜しいでしょうか。ウェル様との別離の恋しさと寒さで若干朦朧として参りました」
「飲み歩いて朝帰りで普通に風邪だろ」
「好きで朝帰りしてません!!衆目を集めますので滅多なことを仰りませぬよう!!我々が騎士のフランジール卿に抗えるとお思いですか!?フランジール卿のせいです!!」
「事実だろうが。そんなに嫌なら偶には外遊でもして余所の騎士団と対決でもして交流でも深めて揉まれてこい」
「我々は肉弾戦しない種類の処刑官ですので!!余所の騎士団と対決なんて普通に砕け散れとの仰せで!?」
「ああもういい。そんなに帰りたきゃジルの場所を言え。若しくは奴を連れてこい」
「………ウェル様にそっくりです、その投げやりな御姿勢」
「不敬だなジョゼ卿。テニスコート来るか?」
「只今ご案内を!」
あ、飛んでいきやがった。装飾品過多なくせに足早いな。
………向こうは、『黄金の饗宴の間』の方角。
其処にジルは居る。
夜中ずっと居たのか?この寒いのに。
まさかルディは……まあ付き合わんだろうな。用が終わったらサッサと帰りそうだ。
………しかし、鍵開けさせるだけなら、片方だけで……エルジュ卿要らなくね?
嫌がらせか?
何でこんなに騒いでるのに誰も来ないのかと言うと、お城の皆さんは朝忙しいのでトラブルを避けて通っております。