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噛み犬は無邪気に暴く

此方の更新、久々でございますね……。

お読み頂き有難う御座います。

カータがユディトとレトナのお茶会にナチュラルに混じっております。

 うーん、今日は……少し、お茶が熱すぎる上に苦いな。

 ……今日のお茶は駄目ね。

 ルーニアが居ないから、いまいちだなあ。


「侍女長は何処?やり直し」

「申し訳御座いません、姫様!!」


 ……侍女長は何してんだよ全く。見張る目が無いとすーぐこれだ。

 あーいけない、溜息が……。

 この間からの懸案……頭から離れないんだよなあ。


「……ソーレミタイナは滅びていないだろうか」


 すごーく凄く心配よ。

 ミーリヤがあの、眠たそーな女好き皇帝の首を引っ提げてこないかが!!

 何年か見て無いけど、見る度子供が増えてたしなあ。どうなってんのあの皇族の出生率。

 女に何時か刺されないかとは思ってたけど……内乱なら様子見だしなあ。

 ミーリヤを攫うとはなあ……。どんだけ命知らずなんだ。

 実際攫ったのってえーと、あの迷惑なアホ……どれも結構迷惑なアホが多いか。

 何だっけ?三女だっけ?


「……うふふ、大丈夫だと思いますけれど……多分」


 ………レトナ、目が泳いでる。

 無事を確信するには大分苦しいとは思ってんのね。

 ……ミーリヤは、結構自由と言うか無邪気を装って色々……するからなあ。


 今日はレトナとふたりなの。

 ジルは……獣人諮問委員会だったか議会だったかに呼ばれていない。

 委員会と議会の違いは、来る面子の数らしい。

 個人的には凄くどうでもいい。

 黒猫卿……アイツ、業務時間外にやれよ。

 よく放浪するし……激務を課してる自覚はあるから減棒はしないけどさ。

 露骨にサボられると私の心証が宜しくないって分かってるのか。


「レトナレトナ、おれ、だれか噛んでこようか?レトナのお願いなら遠くもがんばるよ?」

「やめんか噛み犬。あんなややこしい飛び地は要らねえのよ」


 て言うかこの頃、私の癒しのお茶会に噛み犬……レトナの番が乱入してくんの多いな。

 まあ他の貴族は誘っても来ないから……豪胆と言えば豪胆なのか。物おじしないし。

 流石レトナの番。ただもんじゃない犬ね。

 だが、我が物顔にレトナに膝枕させんの止めろ。何時の間に長椅子持ち込んだんだ。尻尾がバタンバタン叩いてるのは可愛いけど。


「うふふ姫様、噛み犬じゃなくてカータですわ」

「おれ、カータだよ。金目の二角獣」


 うっわ、未だ嘗てなく……デレデレだな、レトナ。

 そんな様子も可愛いけどねえ。癒しと伴侶が出来て何よりだ。

 ……と言うか何時結婚すんだろ。そういや聞いてないな。幼馴染み初の既婚者に…………。


「……ん?……今、私のこと何て言ったの。カータ?」

「あい?金目の二角獣だよね?」

「……私は変身出来んぞ?」

「でも匂い濃いよ」

「嗅ぐな」


 確かにウチの国章は二角獣だけどな。微妙に有名どころ外してる二角獣……。

 そして私の目は金目……って言うと魚みたいだな。


 しかし、え?二角獣?私が?


「変身したことないぞ」

「できないの?血が二角獣なのに」


 ……マジか。ウチってご先祖ガチの獣人だったの?

 しかも何だっけ、清らか乙女大好きロリコン疑惑……あ、清らかなら熟女までは良かったっけ?雌の一角獣は清らかならオッサンでもじーさんでも良かったっけ?の有名どころの一角獣じゃ無くて、二角獣って何だかあんまり有名じゃないなとは思ってたけど……。

 何でそんなに一角獣に詳しいかと言うと、昔一角獣の獣人の王族(既婚50代女性)に出会った事が有って、滅茶苦茶聞きたくもない気持ち悪い爛れた性癖を暑苦しく語られたからだけど。

 ……心の底から要らない情報だったな。

 しょーもない事なのに頭から離れないって、悲惨だな。

 ってそうじゃないな。


「おーいどういう事、カータ。私に獣人の血が濃く出てるってこと?」

「あい?二角獣だけでてないよ?」

「……何だと?」


 ……ウチは結構獣人率が他の国よりは……まあ、普通より多いくらい。

 黒猫卿を筆頭とした獣人達がこぞって保護政策打ち出してるってのもあるんだけどな。

 悪い事じゃ無いしな。

 しかし、混じってるって……。


「混じってのいるよ。赤いタヌキは今日きてないね」

「……タヌキって……」


 おい、その動物で呼ばれてるのってひとりしか思い当たらんぞ。

 まさにさっき思い出して、今日は欠席だけど!


「もしかして、黒猫卿がルーニアの事をタヌキタヌキ言ってるのって、マジなの?先祖にタヌキ獣人がいんの?」

「あい、タヌキの匂いする」


 ……タヌキの匂いってどんなんだ。全く思い浮かばんぞ。

 ルーニアはいい匂いだと思うけど……タヌキの匂いがするって言われたら、衝撃だろうな。

 いや別にタヌキが嫌いとかではないだろうけど……寧ろ犬派だしな。アレ、タヌキって犬か?


「……ルーニアとは言え、他のご婦人の匂いの話………複雑ですわね」

「おれ、匂い嗅ぐの得意。だめ?」

「駄目じゃないけど……きゃっ!」

「レトナ、いい匂い」

「や、カータ!いけません!カータあ!」


 おい、……此処、外だぞ。

 思いっきり首筋嗅いでるし……。おいおいおい服の中にまで顔突っ込むな!!いちゃつくんじゃない!


「おい、外でレトナに過剰にじゃれつくんじゃない。どんぐらい濃い……と言うか、先祖返り的な奴?それ」


 純血の獣人なんて……いないだろうしなあ。このご時世。

 だから、生まれるのは大体先祖返り……だっけ。


「あい?よく分かんないけど、仔タヌキ生まれるかもくらい?

 でも黒猫の番なんだよね?仔猫と仔タヌキ?」

「待て、それ、生まれる種類の話なの?」

「なんか変かな……?種類おおいね」


 マジかよ。そんな混ぜこぜに生まれていいのか、獣人……。

 可愛いだろうけど、凄く混沌としてそうだし……。タヌキと猫の兄弟って……成立すんの?

 タヌキ色の猫とか生まれたりするんだろうか。

 ……まあ、普通に考えて獣人は親の色受け継ぐんだったな。

 と言う事は真っ黒なタヌキとか赤い猫……うわあ、想像だけでも可愛いけど、凄いな。


「ルーニアの方も気になると言えば気になるけど、姫様も……まさか」

「あい?あ、仔馬が生まれるかも?」


 何………だと!?

 こここ、仔馬!?


「仔馬ああああああああ!?マジかよ!!何でルーニアが小動物で、私は大型動物!?

 いや、種類は兎も角、大きさ!!産めるかあああ!!」

「でも、じょうぶだったら大丈夫っぽい?」

「そういう問題じゃないのよカータ!!」

「丈夫でも仔馬産んだら死ぬわ、普通に!!仔馬は馬が産むもんだろ!!人間の大きさで仔馬なんか産んだら縦横斜め裂けて死ぬわ!!」

「あい?其処はよく分かんない」


 分かんないじゃねーよ!!生きるか死ぬか瀬戸際な話ブッ込んどいて投げるな!!


「分かんないのかよ!!不安を煽るな!!」

「だっておれ、仔馬産むひとみたことない」

「私だってねーよ!!普通馬系の獣人居る所でも無きゃ見ないんだよ!!」

「仔馬ちがう?二角獣、げんじゅーだったかな。でもげんじゅーも馬系な……みたかんじだよ」


 二角獣って幻獣……かどうかは知らんけど、どう見ても馬系統!角のある馬だろ!!

 私、馬系の獣人の血引いてんの!?

 ……凄く……微妙なんだけど!!馬は嫌いじゃないけど、産みたいかと言ったら誰しも嫌だろ!しかも2本も角有るし!

 もっとこう、私の美貌だし妖精的な感じかと思ってたのに!!

 妖精産みたいかって言われたら微妙だけど、馬系統よりは産みやすそうだ!!体の色青とか緑でもいいから妖精がいい!


「幼虫とか稚魚産んだおかーさんなら見たことあるよ?」

「虫に魚類!?それも衝撃だな!?

 て言うか虫とか魚類系の獣人の番っているんだな!?先祖が挑戦的にも程がない!?」


 どれだけ見境無いのよ、獣人の先祖!!

 本人同士は良いのかも知れないが、子孫への配慮が全く無いな!!


「生きとし生けるものの数だけ獣人がいてもおかしくない、って眼鏡の黒猫いってた」


 ……何時の間に知り合ったんだ。そんで何を吹き込んでんだ。

 黒猫卿は着実に獣人の知己を増やしてるな!!

 アイツ、獣人で国を乗っ取る気じゃないだろうな!?やりかねねえ!!


「……うふふ、どうしましょう……。姫様のお茶会が物凄い展開に……フランジール卿に急いで連絡しなきゃ」


 ……待て、レトナ。何でジルだ。

 奴は今王宮の外周を走ってる筈だけど。上空と地上の見張り付きで。


「待てレトナ、何でジルが出てくる」

「だって姫様……。この期に及んでまさかフランジール卿以外の殿方との王子様王女様の御誕生をお望みですの?」

「だってアイツそんなノリじゃないじゃないか」


 寧ろ調子乗って私の純情を弄んでいるとしか。

 ………腹立つな。やっぱ戻って来たらテニスコートだな。


「どう考えても両片思いなのに……何が拗れていますの?」

「レトナ、ひとにはひとの距離感が有るから大事にするんだぞってサロが言ってたよ。よく分かんないけど」


 他人の意見かよ。

 いや、サロ卿らしい意見だけど適当に使うな。


「ちょっと感動したのに……よく分かんないのに引用したのかよ、噛み………カータ」

「サロ、恋愛の心構えって言ったよ?ちがうの?」


 うーむ、丁度可愛い獣人らしさがあざといな。ぺしょっと寝た黒い犬耳が何とも……レトナが頬っぺた赤くして可愛い可愛い言うのも分からんでもない。


「……無駄に純粋そうな目で見ないで欲しいんだけど」

「うふふ、其処が可愛いんですのよ。偉いわカータ。使い方は合っていてよ」

「あい。なでなでして?」


 ……そっかなあ。

 結構コイツも可愛い顔してレトナに逢うまで、テキトーに女を食い散らかしてるんだって聞いたけど……。

 盲目で懐広くなったわね、レトナ……。

 今やられたら圧殺しそうだけどな。


「……でもさあ」

「はい、何でしょう姫様」

「私が万が一仔馬産む羽目になるんなら、双子もヤバくね?」


 ……ジョゼ卿もエルジュ卿も獣人ではないよな、今の所。

 何せアイツ等、妹達にべーーーーったりだからな。

 仕事以外は。

 処刑人って処刑が無い時は暇すぎるらしいからなあ。


「うふふ……あの、下世話なお話ですがあのふたり、あのお歳の姫様がたに手を出してますの!?」

「いや、妹の床事情までは知らんし知りたくないけど」


 ……正直、清らかに過ごしてそうとは言い難くないか。あんだけ密室で一緒なんだぞ……。

 アイツ等変態幼女趣味……まあ、育ってきたし、漸くその汚名からも抜け出せただろうし……今更だけど、大丈夫かな。


「うふふ、ですわよねええ!!!大変ですわあああああ!!カータいらっしゃい!!ジェオルジア様とウェルギリア様のご無事を確認しないと!!」

「あい?だれ?」

「私の妹の名前だよ」

「ながいね」

「……まーな」

「じゃあ今度からいちばんめの金目って呼ぶね」


 ……斬新な呼び方してくんなあ。番号と目の色で呼ぶか。

 いや、ファーストネームじゃ無いから別にいいけど……。


「カータ!!ユディト姫様とお呼びしなさいったら!!」

「おれ、雌のなまえは、自分のとかぞく以外はよばないよ?いちばんめの金目の雄におこられる」

「……はあ?雄?」

「……えーと、番のあいて。なんだっけ、こいびと?」

「居ねーわよ」


 悲しい事にな。だから必死に婚活をだな……ああ、成果の上がらない我が身に涙が。

 しかし何を言い出すんだ……。


「いるよ」

「いや、居たら婚活に苦しんでないっての」

「だって、ずっと雄の匂いする。番ってるよ」

「……はい?」


 ……思わず腕の匂いを嗅いでみたけど、何も感じられ無い……が。どういうことだ。

 誰かの匂いが私に貼り付いてる?

 ……全く知らんぞ。最近夜会も……誰も私が踊ってやると言ってるのに来ないから踊って無いし。


「……洗濯係の匂いってオチでは無いよな?」

「ええ……と、カサニ家ですか……?それは流石に無いかと思いますけど。カータ、服から匂うのではなくて?」

「あい、おなかの中」


 カータが指差したのは……私の足、いや、腹部。

 ……おい。

 日差しが陰って、寒くなって来たけど……ダラダラ汗が出て来たぞ。

 レトナも口を抑えたまま……海色の目を見開いてる。


「お腹の中から、匂いがする」

「……全く、心当たりがない。誰だ」

「あい?いっていいのかな」

「おい、此処まで来て何故隠す!?」


 何焦らしてんだよ!!

 ぴくぴくしてる犬耳可愛いけどな!!


「だって、いちばんめの金目、番ってっていわれてないでしょ?」

「いや、そもそも番うって何……獣人の常識を語られてもサッパリ分からんし」

「えっとね、こう……もが!!」

「……姫様、昼間からこう、その……こ、婚約的な感じの……!!そう、婚約的な感じですわ!!」

「……分かった察した」


 …………獣人は悪気なく開けっ広げというか、開けっ放しが多い気がすんなあ。

 ……しかし、どう言う事だ?

 何で私から番……?の匂いが?

 何かを飲まされてるってこと?


「………ああ疲れた、疲れました疲れすぎました」

「ジル」


 何でこの時に帰って来るよ。

 ややこしいな。


「カータ」

「……あい」

「余計な事を姫様に話さないでください。バラすのは、俺の仕事です」

「……ん?よく分かんない?今のでもうバレちゃったよ?」

「……」

「……」


 ……え?

 は?

 ハアアアアア!!?


 どう考えても容疑者いや、加害者の科白だーーーーーー!!


「何をしたジルーーーーーー!!」

「知りたければ、11の時何が有ったか記憶の底から引きずり出して下さい。でないと教えません」

「はあああ!?何言ってんだ!?いいから言え!!」

「嫌です」

「フランジール卿!!」

「レトナ嬢に聞いても無駄ですよ。あのことは、俺と、ユディトと、死人しか知らないんですから」

「ジルあんた……」

「死者は灰へ。灰は壁へ。壁で囲え秘密は囲え、でしたっけ」


 ……古い文句をまた持ち出して来たな。

 建国の際の、古い叙事詩の一部……。昔々に漏れたらヤバい秘密を知ってる奴を殺して、その灰で部屋を塗った牢を作り、また漏れたらヤバい奴を……って言う……百年位前まで有った牢の話だ。

 勿論、今はそんな事してないけどな!!牢も無いし!


「……姫様、コレは、フランジール卿と密接なお話合いが必要ですわよ」

「……ジル」

「俺は、吐きません。ユディトが思い出してください」


 ジルはにっこり笑って……一礼決めて去りやがった!!

 何時もより無駄に姿勢が良くて余計腹立つ!!出来るならちゃんと常にやれ!!


「あの野郎おおおおお!!拷問してでも吐かせる!!ラケットを持て!!」

「落ち着いて下さいませ姫様!!」


 11歳の時に起こった事なんて、記憶喪失じゃなくても覚えて無い事の方が多いだろうが!!

 一体何が有ったのよ!!



ユディトのルーツは純潔は穢しに行く趣味の無いタイプの二角獣だったようです。一角獣は余所の国に居るようです。

コレッデモン王国は獣人が多いですね。

今の所黒猫、野良犬、タヌキ、カニ(こっちでは未登場)、ガーゴイル(話の中だけ)が出ております。


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登場人物紹介
多くなって来たので、キャラの確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
[一言] 赤いたぬきと緑のきつね? うーん?
[一言] 途中で止まってしまっていましたので、再度読み直しております。 こんな純情なユデュトさんがバイコーン? 不純異性交遊の淫売なうまさん? 顔も性格も可愛いらしい、本当に男らしい姫なのに。 風評被…
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