裏側も結構忙しい
お読み頂き有難う御座います。
「サポートキャラの~」本編19~79話頃裏側の話となります。
「国王陛下が妙齢の女性をお探しになっているそうですよ」
「つまりードゥッカーノ王国の……婚活ねえ……」
「如何様に致しましょう、姫様?」
黒猫卿が報告と共に持ってきたのは、一枚のご招待状だった。
うっわ、国章付いてるし受けるのもお断りするのも面倒くさい奴じゃーん。
まーた仕事が増えるよー。
「アレでしょ?この間ゴタゴタで即位されたウォレム・ディマ様でしょ?」
「一応御年は姫様の守備範囲内では有りますね」
……歳はな。
見た目はいい方だけど、ちょっと日和見過ぎんだよなあ。
あんまり即位前は関わり無かったんだけど……。どっちか言うとあっちが避けてやがる。
全く失礼よね!!
「しかし忙しいんだよなあ、今……挙句あの人、嫁探しでしょ?こっちが婿を探しとるっつーのよ」
「そうなんですよね。其処が我が国と条件が合致しないと言うか……まあ、儀礼的にと言ったところでしょうか」
「ふーむ。若しくはそれに託けて、誰かカワイコちゃんを婿として拾ってくるっていう手もあるかあ……」
「人拐いは犯罪ですよ、ユディト」
「うるっさいなあジル。する訳無いでしょ」
何かこの頃ジルってば苛々してない?嫌ねえ。仕事中は上司である私の前で苛々すんなっつーの。
私は出来る王女だから気にかけるけど!!幼馴染だし!
「私は行きたくありません。番が居ますから」
「……ルーニアは何て言うかな」
「ルーニアも却下です。アレの番は私ですから。
仮にあのタヌキが変なのに引っかかったら、姫様は一体どうご責任を御取り頂けるんでしょうか?取れませんよね?ええ取れるはずが無い!」
「くどいな!!」
しかも黒猫卿は何時も距離が近いんだよ!!
猫の時も距離近いし、ホントこういう時は獣人ぽいよな!!
でもえーと、サロ卿の番の子は距離を一定に保ったまま近づいて来ないらしいじゃん!!
……あれ?でも番って否応なしにくっつきたい欲求があるんじゃなかった?現にレトナにはあの黒い噛み犬がべったりだしな。
……大丈夫か?サロ卿。番(仮)みたいなのか?ちゃんと番してんの?
って未だ離れねえの!?
「怖い怖い怖い近い近い近い!でもさあ、滅茶苦茶拒否して拗れてるけど……。今回の婚活夜会、もーちょい距離を取ってみるのに使ったらどうよ」
「目の届く範囲で距離は取るものです。他国なんて却下です」
「黒猫卿、いい加減目に余ります。離れてください」
やっとジルが黒猫卿の首根っこを掴んで遠ざけてくれたよ……。
ジル、この間から職務怠慢なんじゃないの!?
王女様が困ってんだから早くせーよ!!
「……フランジール卿、貴方も大分拗らせてますけど」
「知りません」
「あーあ、眼鏡が歪んでしまいましたね」
あ、無意識に迫り来る顔をぐいぐい押し退けてた。
……眼鏡がひしゃげたみたいだな。何気に黒猫卿の顔まで手形で赤くなってら………。
まあいいか。寄ってきたのあっちだし。
「じゃあどーすんのよ。レトナは正真正銘の揺ぎ無い番が見つかったし」
「私とルーニアも、正真正銘揺ぎ無い引き剥がせない関係の番です」
断言してるし。
ルーニアの意見を聞いてみたいもんだな……。
「何をどうしてそんな拗れてんだっけ」
「姫、聞かない方がいいですよ」
「そうですね、とある10歳の砌、大人の階段を共に上ろうと森の中で彼女のスカートを」
「分かった、もういい。そりゃルーニアにキレられてもしょうがない」
予想越えた酷さ!!
ホントに聞かなきゃ良かったよ!!子供いや仔猫の頃からこんなんかよコイツは!!
イマイチ記憶に無いけど!!
「あまりに嫌がるものですから、経験が無いのが嫌なのかと思って他の適当な女で」
「やめい!もういいっつってんだろ!!」
「安心してください、姫様。隠し仔猫は居ませんし私の仔猫を産む番はルーニアです」
そんな行いしてて安心しろって……一体何の根拠が有るんだよ……。
て言うか隠し仔猫……行いはクズで碌でもないのに、可愛い雰囲気が漂っててマジ嫌だな。
……これ、黒猫卿が駄目なだけだよな?獣人というよりも、黒猫卿が貞節と縁が無くて女にクズいだけよね!?
「ルーニアが気の毒になって来た。
其処ら此処らで聞こえる遊び人の噂も本当だったとは、大概だな……」
「処理でばら撒いてません。撒くのはルーニアのみです」
「止めんか!!聞きたくねえっつってんだろ!!」
「だから聞くなって言ったのに……自業自得ですよ」
「だって覚えて無いんだよ!」
「え?……あー、『水難事故』の頃でしたね。すみません姫様。あの頃からルーニアを追い回すのに夢中で失念しておりました」
……ルーニアがホント気の毒なんだけど。
実は、黒猫卿がはっちゃけたらしい10歳前後の記憶が私にはない。
何故かと言うと実の母親であるあの駄目王妃に、水の中に突き落とされたからだ。
か弱かったから結構寝込んだらしいし!!ああ腹立つ!!
まあアレから体は丈夫になったけど、あのドクズ母マジ許さん!!もう居ないけど!
「姫は獣人の執着をご存じで無いでしょう?」
「だったらもうちょっとルーニアに誠実に接しなさい」
「失礼な。私は10歳の時からずっと謝り続けてますよ」
「……え、そうなの?しつこいな。そんだけ許して貰えないならもう諦めろよ」
言いたかないけど何年経ってんだ。
この調子で謝られたら、イラッとしかしないだろうなー。
ルーニアがマジで気の毒になってきたわ。
「しつこいですとも!諦めませんとも!何と言っても番ですから!」
「番だのどーのこーの言われてもな。獣人じゃないルーニアはそれで許す訳が無いと思うけど」
「寧ろ、獣人同士とか番に執着する種族なら、他と関係した時点で殺されてても文句言えない行いらしいですよ」
「詳しいですね、フランジール卿」
「黒猫卿が暇さえあれば獣人豆知識を吹き込んできたんでしょうが……」
マジかよ、獣人怖すぎでしょ。そして迷惑すぎでしょ、黒猫卿。
ルーニアは……性格上、寧ろムキになって余計許さない気がするわね。
いやまあ、黒猫卿が好きだと言う前提なら余計にな。
「ええ、この私の番なのに!それでも許さないルーニアは実に魅力的だと思いませんか?
なのに!私の事しか考えられないと思っていたのに、16の時にあんな男と……!!」
「いや待て。何を勝手に人の親友の繊細な彼是を言おうとしてんだ。止めろ」
「そうですね、幾ら姫様とルーニアが親友で在ろうとも、私の番の純潔の事情までお教えしたくありませんでした」
言ってんのも同然じゃねえか!!頭痛くなってきたわ。
ゴメンねルーニア!もうこいつの後始末頼むの止めたいけど適役が居ないから許して!!
高い茶葉貢ぐから!!
「……俺も居ることを忘れないでください、黒猫卿」
「聞かなかったことにしてください。お得意でしょう?忘れたフリは」
「好きでやってません」
……歯に物が引っかかったような言い方だな。しかもジルは何で睨んでくんのよ。
「兎に角、幾らユディト姫様でも、番との仲を裂こうとなさるなら容赦は致しません。飼い猫の分際ですが、噛みつきますよ」
「黒猫卿………」
……コイツは本当にやりにくいな。でも仕事出来るんだよなあ……。
正直コイツが居なければ本当にキツイ。
女にはだらしないし、曲者過ぎるけどな……。
「はい、姫様」
「眼鏡歪んでるから全く迫力無いわ」
……うん、実に間抜けに見える。
「大丈夫です、例え眼鏡が無事でも姫様には負けます」
「眼鏡割るぞ」
「割ったらいいんですよ」
そう言う訳にもいかんだろ。
コイツの眼鏡割ったら仕事になんないし。
「……じゃあ結局誰をやろうか」
「マデル嬢とミーリヤ嬢でいいじゃないですか」
「何でその二択だよ」
て言うか今も忙しいっつってんのに……。
「何でまたあのふたりを行かせるの。外交官居るでしょ」
「おや、番が居ない、外交にも荒事にも向くおふたりですからね、ピッタリでは?」
「そりゃそうだけど……」
「おふたりにも出会いの場が有るかもしれませんよ?」
「……」
まあ、そうかもしんないけどなあ。
国内じゃ最早無理っぽいかなあ。
他国か……。まあ、他国も目を向けてみてもいいかもな。
どっちみち、国王陛下ウォレム・ディマ様は連れて帰れんし………他に誰か。
………あー、王子がふたり居たっけ。
死骸動かし王子は派手だけど………弟の方は目立たない。
大分前に見たけど、まだお子様だったもんな。
王位継承者は面倒そう……。
大体マデルとミーリヤの好みか分からんしな。まあ、見に行かせるだけでもいいか。
で、打診したらふたり共結構気楽に引き受けてくれた……のはいいんだけど。
ふっつーに出て行って、ふっつーに帰って来るもんだと思ってたのに!!
届いた手紙が……!!王宮にマジで激震が走ったわよ!!
「何ぃ!?ミーリヤが拐われただと!?嘘だろ!!マデルじゃ無くて、ミーリヤ!?本当なの!?」
「あらあらあらあら……何のつもりなの、ミーリヤ……。まさか……ソーレミタイナを壊滅させる気か何か?」
「うふふ……それは流石に……困った子ね、ミーリヤ……」
「困ったで済むか!!外交に行って戦争になったらどうするーーー!!あんな宗教のややこしい飛び地、面倒見られないぞ!!」
「待ってください、未だマデル嬢から続きが!!」
えっ、黒猫卿が慌ててるって珍しすぎるだろ!?
一体何を書いたの!?よくやったマデル!!じゃなくて!!
この頃、黒猫卿に対していい気味だ!!みたいな溢れ出る感情が持て余し気味で困るんだけど!!
「……サジュちゃんのー御養父のー、オーフェン・バルトロイズ様をー好きになったのでー、穏便にー持ち帰れるようにー頑張ります、だそうです」
「……マデル、当主だったら駄目だろーーーー!?」
「うふふ、黒猫卿のマデル嬢の声真似が似すぎてて怖いんですが姫様!!」
「あらあら分かるけど!!突っ込む観点が違うわ、レトナ!!」
……おいおいおい……。
で、マデルが結構こまめに連絡をくれてたけど……取り敢えずミーリヤは無事だった。
まあ、あの子……ふっつーに子供の頃から野外訓練やら軍事訓練こなしてるからな……。
牢屋に1週間や其処ら居た所で……全然平気だろうけど。でも基本、令嬢の暮らしの方が大好きだからな。
好きでいる訳がないし何で脱出しなかったのかね。
と思ったら……。
「……姫様、追加情報が……」
「どうした黒猫卿……顔青いわよ」
「具合でも悪いんですか?まさか殺鼠剤入りの餌でも拾い食いを!?」
「フランジール卿、貴方が私を欠食猫扱いしていたことがよく分かりました。後で諮問委員会を開きますからご招待します」
「……失言でした」
ジルは本当に一言多すぎるな。
……獣人諮問委員会は獣人の血が濃く出た貴族でネッチネッチとイビられるって話だからなあ……。
……基本、獣人の規則で一方的に罰則が決まるからなあ……。
まあ、最高刑が王宮の外周70周だって話だから……死なないだろ、多分。
まあ結構起伏の激しい坂だけど。……獣人達は体力が無尽蔵なのが多いし、アレでも微罪の解釈らしい…。
大丈夫だろ……。この頃私の後ろで突っ込んでる楽な仕事っぷりだけど、元々騎士だしな。
……頑張れ。うん、頑張れ。
未だ嘗てなく見つめてくんな!!
「いや、チラチラ見ても助けないから」
「酷くないですか、姫。近衛騎士の役目が果たせなくてもいいと」
「明日は杖でも用意してあげるわよ。で、何だよ黒猫卿」
「ミーリヤ嬢からのお手紙です」
「……よっぽどなのか」
「結構よっぽどです。流石ミーリヤ嬢……此処まで夢物語を物理で解決される方だとは思ってませんでしたね。見習いたいところです」
変な解釈込みで見習われても困るんだけど。
何したんだミーリヤ。
「……王子様を連れて帰ると」
「は?オウジサマ?……ミーリヤだけの王子様(比喩)的な感じ?」
ははは、あの子少女趣味な所有るからなあ。
可愛い奴め。
……ああ、うん。……例え庶民でもいいんじゃないかな。恋しい人を王子様呼ばわりなんてピッタリだと思うわ。
「候補はショーン・ジェラルディン王子、ティム・ジニー王子、レルミッド・ルカリウム、フェレギウス・ナサニエル皇太子だそうです」
「マジでガチな奴じゃないかあああああ!!」
「そりゃ顔色も悪くなりますね……」
まだ宣旨受けてないレルミッド・ルカリウム以外、宣旨受けた本物の王子じゃないか!!
しかも、ティム・ジニー王子とフェレギウス・ナサニエル皇太子って、未だ10代前半だろ!?
そりゃ全員顔は可愛いし、将来有望では有るけど!!
しかも死骸動かしが中に入ってやがるし!!アレは一筋縄では行かない!!顔が良くても不味いだろ!!
ミーリヤ、なんつうのを狙ってんだよおおおおお!!
ももも、もし……連れてくるんなら、ショーン・ジェラルディン以外にしてよおお!?
獣人諮問委員会はモフモフから鱗すべすべが目白押しです。総勢23名。
その内カータも入るかも知れないですね。