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ゴミ箱のガーゴイル

お読み頂き有難うございます。

元カノに嫉妬するレトナの話ですね。語り手は野良犬兄妹の妹、コティになります。

「レッカって居たね。金髪で、ちょっとショッキングピンクのポワポワした頭の」

「あい?レッカ?」

「この凄い色の飴で思いだしたんだ……何これ」

「あい。サロから貰ったよ。コティと食べろって」


 サロ様は私と兄ちゃんを幾つだと思ってるんだろうな。

 こんなロリポップキャンディー山ほどくれるってさ。

 渦巻きに、丸いの……も有るけど、犬の形がやけに多いな。

 私達が食べると共食いっぽい……。何の狙いが有って、犬の形……。


「あ、滅茶苦茶甘い。甘旨」

「うまま?」

「兄ちゃんてさ、あざとくふざけてんのか、あざとくマジなのかどっちなの?」

「痣だらけマジ?」

「もういい。飴食べといて」

「あい」


 伸ばし放題だった黒髪が、いつの間にかきちんと整えられて短くなっていた。

 服は……育ちのいい家の子供みたいなクリーム色のブラウスに、縁取りが青いのが所々に付いた服。

 ……何て言う服か分かんない。

 でも、ちゃんとすると、兄ちゃんはちょっとかっこいいとは思う。

 ……ちゃんとしないとぐっだぐだだけどね。

 レトナ様のご趣味かな。


「その服、レトナ様から貰ったの?」

「レトナ、着せ替え好きだって言ったよ。もっとひらひら有った。でもおれ、引っ掛けて破いちゃう。だからレトナ諦めたよ」


 飴を齧る姿があざといよ……。あざといけど、可愛いからなあ、兄ちゃん。

 これでも成人……ってこの国じゃ幾つなんだろ。前世とは違うよね。

 多分、18、19くらいなんだけどな。正確には知らない。多分私も同じくらい。

 犬だから双子って概念も無さそう……。

 もしかして、他の兄弟も居たのかな。


 兄ちゃんは飴をぱくついている。

 結構美味しいけど、兄ちゃんは際限無く食べるからなあ。


「兄ちゃん、噛んで食べちゃダメ!歯に悪い!」

「あい?あー……」

「3つも噛じらないの!!よく口に入るね!?顎疲れないの!?」

「あう」


 無理矢理口から出したら、兄ちゃんの耳が寝ているけど、ショボーンとしてもダメなものはダメ!!


「これおつきさまと海だからレトナの色だよ」

「………はいはい。幸せそうで何よりだよ」

「おひさまと森でサロの色、コティにあげる」


 因みに、『おつきさま』が黄色。海は青。

『おひさま』はオレンジ色。森は濃い緑。……何度教えても覚える気が無いんだよね。

 オレンジと緑の縞々した犬の形の飴を押し付けられた……。


「………えー、私この変なショッキングピンクのやつがいいなあ」

「コティ、サロの味食べてあげよ?」


 何でそんな駄目だよーみたいに見てくんの!?

 意味分かんないんだけど兄ちゃん!!


「サロ様とおんなじ色合いなだけで、あの人こんな可愛くも甘くもないから!」

「サロとおんなじで噛んだらきっと固いよ?」

「其処!?大体私サロ様を噛んだことなんて無いから!!」

「あい?番なのに?」


 番!?

 何で噛むのが必須みたいな言い方を!?

 ままままさか、レトナ様に暴力を!?

 あれ?でも兄ちゃん、レトナ様より弱いんだっけ?うーんでも、甘噛みとかなら許されてるのかな?ペット的な……。


「兄ちゃんはレトナ様に何の失礼をしてるの!?噛みつくとか暴力は止めてよ!?」

「あい?首筋に噛みついて交尾」

「こっ……!?」


 ひ、ひひひひ昼間っから何言い出すの!?

 て言うか、えええ!?レトナ様に手を……手を出してるの!?う、嘘だ……!!ああでも、一緒に住んでるってことは、そうなの!?

 嫌だあああ!!身内のそういうの聞きたくない!!


「あ、レトナには尻尾無いね。ええと、何て言うんだっけ?」

「言わなくていいよ!!」

「……?噛むのは雄だね。でも雌も痛いと噛んで暴れるよね?

 レトナは暴れないけど、痛くない?コティ知ってる?」

「知らんよ!!何してんのホントにいいいい!!」


 身内相手に下ネタは止めろおおおお!!


「……………カータ」

「きゃああ!!サロ様!」


 何で昼間っからお家にいるのか分かんないけど、出て来てくれて良かった……!?

 いや、悪かったの!?


「いいか、妹とはいえ、閨の話は他の女にするな」

「ねや?あい?何で?」


 兄ちゃんのいい所は分からなくても取り敢えず話を聞くところだよね……。

 うん、それは昔から良い所だ。

 聞いた上で分かんないからやらないとか言うけど……。


「レトナ嬢の海より深い自尊……、いや心が傷つくからだ。せめて男同士の話にしておけ」

「あい、でもサロ」

「何だ」

「心が雌の雄は?」


 え?どういうこと?

 私とサロ様の動きがシンクロして止まった気がするよ。

 ……心が雌の雄?……ええと、そういう人が居るのは分かるけど、何で今?どういう質問?


「…………決まった愛する相手や、幸せな番がいる男……雄にしろ」

「あい!」


 す、凄い。サロ様凄い。

 兄ちゃんを納得させたよ……。賢いなあ。ちょっと見直しちゃった。


「だが、お前が心が雌だの何だの言うとは思わなかった。意外に人生経験積んでいるな」

「襲われたことがあるよ」

「ぶっ!?」


 な、ええええ!?

 心が雌で雄の人に襲われたの!?

 ああでも、兄ちゃん確かに小さい頃は可愛かった……けど、薄汚れてたけど、そういう趣味の人も居るか!!


「兄ちゃん!!?大丈夫だったの!?」

「ちゃんと首噛み千切ったから平気だよ?」

「噛みちぎ…………お前は結構雑な暗殺者だな……」

「あい?お客さんじゃないから、見た目汚くてもいいんだよ?」


 雑な暗殺者って感想言うサロ様もどうかと思うけど。

 ……切断面に拘るお客さんって……いや、もう何でもいいんだけど。

 取り敢えず無事で生きてて良かった……。何気に犯罪に巻き込まれて……いや、兄ちゃん自体が犯罪者なんだけど、もういいや。どの道今の状況も何だかよく分かんないし。


「…………兄ちゃん。でも無事で良かった」

「そうだな、無事で良かった」

「おれ仕事では突っ込まないよ。盛ってる時は適当だけど」

「………要らんことを言わんでいいよ。

 家族の下ネタなんて死んでも聞きたくないって言ってんじゃん!!」

「あい?」

「……そう言えば、何時もはサッサと帰る時間なのに今日は居るんだな、カータ。レトナ嬢が心配しないのか?」


 強引な話題の逸らし方だけど、ナイスサロ様!!そうだよもうサッサと帰って!!居た堪れない!

 ああでも、この空気でサロ様と残されるのヤダな!!


「レトナに暫く顔見たくないって言われた」

「……はい!?」

「えっとね、おっぱい大きいねって言ったら誰と比べてるのって聞かれたから、レッカだって言ったら超怒られた」

「「……」」


 サロ様と私は絶句した……。

 に、兄ちゃん……何でそんな、そんな事……ああ、でも兄ちゃんなら言いそう、言うわ。

 見たまんま、聞かれたまんまを答える人だからあああああ!!


「何でそんな事言うの兄ちゃん!!!それ私でも言っちゃ駄目だって分かるよ!!」

「聞いたから答えたよ?」

「……いいか、カータ。お前、想像してみろ」

「あい?」


 ……頑張ってサロ様。さっきみたいに兄ちゃんを丸め込んで!!

 って何か色々違うけど……!!


「レトナ嬢がお前以外の男……雄を褒めた、どう思う」

「褒められた雄を首だけにして、レトナのとこに持ってって褒めてもらう」

「褒めないでしょ!!」

「思った以上に残酷だが、レトナ嬢の番なら仕方あるまい」

「良くないよ!!」


 何で其処は緩いの!?サロ様もちょっと変だよ!


「いいか、同じだ。レトナ嬢はお前の過去の女……雌に嫉妬したんだ」

「しっと」

「イラッとしただろう、先程」

「した。お腹むかむかした。何でかな?」


 兄ちゃんが不思議そうにお腹を触ってる。


「レトナ嬢はお前が好きだから、お前に他の雌と比べられたくないんだ。分かるか?」

「……超分かった。サロ、滅茶苦茶賢いね」

「……確かに兄ちゃんに理解させるって滅茶苦茶賢い。凄いサロ様」

「良かったね、コティ。賢い雄が番で」

「兄ちゃんもちょっとはサロ様を見習って賢くなってよ!!変な計算ばっかり早かったり訳分かんない!!」

「変な計算?何だそれは」

「えっとね、広い所に死んだのと生きてるのを数えられるよ。匂いで分かる」

「何回聞いても意味分かんないよ、兄ちゃん」


 あれ、でもサロ様は考え込んでる。

 何かいいアイデアが有ったのかな。サロ様賢いしなあ。見た目はごついのに。


「……それは、戦後処理には役立つな。その時は頼む」

「………こんな変な特技を役立てるの!?サロ様凄い……」

「サロすごーい」

「その、何だ。此処まで誉められると面映ゆいな」

「サロ照れてる。かわゆい?」

「かわゆくはないよ、にいちゃん」


 どう見てもサロ様ごっついし。まあ、いい人なんだけどかわゆくはない。


「レトナはおれが照れたら、かわゆい言うよ」

「早く仲直りしなよ……」


 何なんだよ、結構ラブラブじゃないか。

 兄ちゃんが要らん事さえ言わなければ円満なのに……。


「いや、あのレトナ嬢だ。その内向こうから言ってくるだろう。其れ迄ウチで預かるか」

「あい?ありがとサロ」

「礼には及ばん」


 サロ様が兄ちゃんをガシガシ撫でてる。……滅茶苦茶飼い主と犬みたいだよね。


「サロ様って優しいよね。犬好きなのかな」

「あい?」

「お前の兄だから優しくしているんだが!?」


 お前は俺の番である自覚と覚悟が全く足りていないって滅茶苦茶怒られた……。

 いや、覚悟と自信が有るからお家に御厄介になってんだけど……な。面と向かって言うの恥ずかしいなと思ってたら、まあまあ長い時間叱られてしまった……。




 ……次の日。

 兄ちゃんがレトナ様に失礼過ぎたから、私が先に様子を見に行くことにした。

 サロ様は良い顔をしなかったけど、どっち道王宮に行くんだし、レトナ様も居るよね。


「おれは?」

「兄ちゃんはサロ様と居て。気配消すの得意だし」

「あい。サロが襲われたらばらばらに噛み切ってあげるね」

「私は其処迄恨まれる職業では……まあ、滞納者からは恨まれるか」


 滞納者?

 サロ様って税金関係のお仕事だったのか。全然知らなかったな。


「いいか?足音を立てて移動するんだぞ?レトナ嬢もだが、ミーリヤ嬢が居たら間違いなく剣の錆にされかねん」

「え、怖……。大体私足音なんて消せないよ?」


 暗殺者やってる兄ちゃんじゃないんだからさ。


「私以下の年齢の働いている者は大概分を弁えている者が多いが、それでも変なのが居ないとも限らないな。苛められたら大声を出せ。

 主に碌な事をしないのはオッサンやオバサンだ。苛められたら大声を出せ」

「おれの耳は良いから、聞こえたらすぐ行くよ。ばらばらにしてあげるね」


 取り敢えず苛められたら大声出したらいいんだね。はいはい。そんな咄嗟に出ないと思うけど。

 ……長い割に単純な約束事を、物騒な感じで言い聞かせられて、私はお庭を探すことにした。


「どうしましょうどうしましょう。つい嫉妬して出ていけだなんてええええ!!」

「レ、レトナ落ち着いて……」

「だ、大体わたくしと出会う前の事を咎める権利なんて無いのにいいいい!!」

「ああ、重症だわ……番効果って凄いわね」

「ルーニアー、そんなー他人事みたいにー…。貴方だってー黒猫卿がー」

「あんなのは番でも何でもない!!」


 ……あ、居た。

 3人いるみたい……。ええと、白い髪の毛の人がマデル様、オレンジの髪がルーニア様だっけ。黒髪のミーリヤ様は居ないんだな。


 な、なるべく足音を立てて移動するんだっけ。

 でないとウッカリ攻撃を受けちゃうって……。で、でも足音って意識するとそんなガサガサ立たないんだな。どうしよう。

 あ、枝踏んだ。


「お、おはようございます」


 ……滅茶苦茶視線をがっつり浴びたよ……。

 三人ともタイプは違うけど、美人だな……。

 確かに胸が大きいし。……サロ様はこの方々とずっと一緒に居た訳か。

 ……そりゃ私の胸の無さに吃驚するよね……。くそう、何だか腹が立つ。どうせ私はぺったんこだよ。


「犬耳に尻尾……矢鱈フリル過剰な使用人風の服……あらあら、サロ卿の子犬ちゃんじゃない」


 サロ卿の子犬……私ってそんな風に呼ばれてたのか。

 て言うか、この服やっぱり目立つんだな。


「まあーこの子がー」

「コティちゃん、だったわよね……」


 慌てて目元を拭かれたみたいだけど、レトナ様の目が赤い!!

 兄ちゃんーーーー!!!


「す、すみませんレトナ様!!ウチの兄が失礼な事を!」

「い、いいえ、いいえ……。寧ろ、わたくしの心が狭いから……あの、カータは何処に?ちゃんとご飯を食べてるのかしら?」


 あんな失礼な事を言ったのに、レトナ様滅茶苦茶優しいな!!


「え、ええと。サロ様のお家に昨日は一緒に……」

「あらあら、そう、サロ卿の……」

「まー流石サロ卿ー。面倒見がー良いわねー」


 お座りなさいな、と言われて……立派な服を着た人が持ってきた椅子を示された。

 滅茶苦茶高そうだな。

 庭に出して良いの?雨が降ったら直ぐ駄目になりそうなすべすべの生地が貼ってある……。

 尻尾の毛が付いたらどうしよう。


「え、いいです。私みたいな汚いのがそんな、皆さんとご一緒だなんて」

「え、何ですって?何処で苛められたの?」

「は?」

「うふふ、コティちゃんをそんな風に貶めて苛めたのは何処のどいつ?」

「いや……此処では別に苛められてはないですよ?」


 寧ろVIP待遇過ぎて気後れの日々だよなあ。


「あらあら、アレカイナ連合だったかしら……あの国、本当に目障りねえ」

「こーんなにー可愛いのにねー」

「あ、綺麗なドレスに毛が付きますから……」

「気にしないのー」


 マデル様だっけ、耳ごとわしゃわしゃ撫でられた。

 動物がお好きなのかな……。


「でも、私達よりも、もっと他の獣人の方が酷い差別受けてましたよ。だから国の外に出られる子は出てましたし」

「例えばー?」

「そうですね、ガーゴイルの子とか滅茶苦茶苛められてましたし。結構可愛かったのに人に怯える性格になっちゃって」

「……え?」


 あ、やっぱりこっちでも珍しいのかな。私も初めて見た時は驚いたもんなあ。

 私達と違って、完全にガーゴイルに変化出来たし。飛べるから羨ましかったなー。

 でもその代わり、肩から肘までと、膝から下までは常にガーゴイルなんだっけ。

 あ、首と頭だけ種族そのまま魚って子もいたなあ。湿気が苦手だったっけ。


「……まさか、ガーゴイル?ええ?ネテイレバの国章のガーゴイルって本当に未だ生きてるの!?」

「その子ー、どんな色だったー?」


 え、ネテイレバって何だ……。そのツッコミどころの多すぎる名前……。寝ていれば?……何なのそれ。寝ていれば何が有るの!?何に派生するの!?意味分かんない!!

 いや、アレカイナもどうかと思うけど……それを言えばコレッデモン王国もそうか。

 誰が名付けたんだろう。駄目だ、考えたら笑い出しそうなんだけど。


「コティちゃん?うふふ、御免なさい。ビックリした?」

「レトナ様……」


 笑いを堪えていたのが変な顔になったみたいで、レトナ様が心配そうに笑いかけてくださった。

 ご、御免なさい。此処の世界、名前が変過ぎて、偶にツボに入ると過呼吸になりそうになるんです……。


「うふふ、その子の事教えてくれるかしら?もしかしたら、その子……結構に結構な立場の子なのかもしれないの」

「ええ!?でも、私達と同じゴミ捨て場のゴミ箱に突っ込まれてた子ですよ!?」


 え、偉い人って事!?

 そんな馬鹿な!!


「えええ何てこと……何て酷いことするの……ざっけんな」

「うふふ、一度潰した方が良いみたいね」

「ルーニア、レトナ、子犬ちゃんが怯えるから本性を出すのは止めなさい」

「あ、え、あの、大丈夫です。お構いなく」


 ……ちょっとゾクッとしたけど。


「ええと、色は金色のガーゴイルです。名前は……レッカです」

「まさかのカータの元恋人……!?」

「ああええと、兄ちゃんは恋人とか作らなかったです!!わわわ私も知らなかったんですけど、行きずりの方とその……」

「良いの、若い女の子がそんな事を言っては駄目。しっかし……案外噛み犬ちゃんも見た目に寄らずって所なのね……。これだから一途だの何だのとか言って結局獣人の男は……」

「ルーニアー、過去の事情にー獣人は関係無いでしょー。と言うかー個人的恨みをー噛み犬ちゃんにー派生させないのー」

「誰がエンリなんて気にしてるって言うのよマデルのダアホ!!」

「……あの……」

「御免ねー。私達ー基本的にー気の短い集団なのよー」


 そ、そうなんだ……。人は見かけによらないな。

 エンリさんが誰か分からないけど、兄ちゃんのせいでルーニア様が怒り狂っているし、レトナ様はショックを受けているし……どうしよう。

 レッカが何か有るんだろうか……。暫く会って無いけど……。


「うふふ、ちょっと表情が和らいだわね、良かったわ。……金色のガーゴイルはね、コティちゃん」

「は、はい」


 寧ろ此方こそレトナ様の具合を悪くしてすみません。兄ちゃんが爛れた生活を送ってたかもしれないなんて……家族として申し訳なさ過ぎる。

 で、でも取り敢えず今はお話を聞こう。


「ネテイレバって言う……ひと昔前は秩序正しい国だったそうだけど、あっという間に駄目になった国でね。王家……じゃない、皇帝一家は金色のガーゴイルの子孫……らしいの」

「ガーゴイルが、王様……?」

「うふふ、そうよ。まあ王様と皇帝はちょっと違うけどその認識でいいわ」


 獣人の子孫の王様の国が有るんだあ。世界って広いなあ。しかもガーゴイルの国……。

 言っちゃ悪いけど、ガーゴイルが王様って……何か、違う気がするんだけど。

 竜とかなら確実にそれっぽいし、せめて狼とか鷹とかライオンじゃないのか……。そっちの方がメジャーっぽいのに、あんまり聞いたこと無いな……。いや、私が世情を知らないだけだろうけど。でも庶民には他の国の王様事情とかあんまり分かんないし……。

 ガーゴイルって……下っ端っぽいイメージが抜けないなあ。レッカに失礼だけど。


「暫く王にはガーゴイルが生まれなくて……しかも悪政が敷かれてるから、国内は王家に対する信用は失墜して、内乱寸前。うふふ、それは自業自得なのだけれど」

「そうなんですね」

「でも、もしそのレッカちゃんが金色のガーゴイルなら、間違いなく王家に関わる娘ね……」

「単に突然変異では……」


 金色って言ったけど、人によって色の感じ方って違うし、黄色かもしれないしなあ。

 暫く会ってないし……。


「あらあら、スキルを確認すれば一発よ……。でも見つかったら見つかったで、ややこしい事になるわね」

「と言うのは」

「王権打倒派のー旗印にーされちゃってー利用させられちゃうとかー、命の危機がー盛り沢山ねー」

「そんな馬鹿な……。庶民の子ですよ!?」

「そもそもー、ガーゴイル自体と言うかー魔物っぽい子とかはー庶民にはー居ないのよー。

 その子以外にー見た事あるー?」


 ……無いわ。確かに無い。私は首を振った。

 魔物っぽい子って言うのが地味に前世の知識で……あんまり覚えて無いな。

 しまった。もっとアニメとか見とけば良かった。


「大概ーそれ系のー獣人はー力を求める王家がー独占してー血筋に入れてるものー。先祖返りしたならー間違いなくー離さないわー。捨てたとしたらーよっぽどー無知なアホねー」


 アホなんだ……。そっか、偉い人にもアホが居るんだな。庶民と其処は変わらないんだな。


「……わたくしの嫉妬がこんな事態を巻き起こすなんて……」

「レトナ、しっとしたの?」

「カータ!!」

「ごめんねレトナ。おれが前に色々他の雌にちょっかい出したから。でもレトナ以外の雌はもう要らないよ」

「カータ!!わたくしこそ御免なさい!!」


 兄ちゃん、何時の間に。

 て言うか絶対見てたな。タイミングが良すぎだよ。


「……窓から飛び降りる奴が居るか……」


 うん?小さいけど、上からサロ様の声がする。

 いち、にい、3階。そこのバルコニーで頭を押さえてるみたい。


「あ、サロ様。3階のバルコニーだ」

「あらあら、よく気付いたわね……」

「声が聞こえたんです」

「流石ー子犬ちゃんー。耳がいいのねー。と言う事はー噛み犬ちゃんはー上で聞いてたのねー」


 成程……それで飛び降りて来たのか。

 私の目の前では……思いっきりひしっと兄ちゃんにレトナ様が抱き着いてる……。それをいい事に身内の前でレトナ様の匂いを嗅ぐのは止めてくれない……変態か。ああでもこの状況に突っ込めないな。兄ちゃんだけなら兎も角。


「レトナだいすき。レトナが居ないとおれ駄目」

「わたくしもよカータ!!」

「あらあら……何なのこの茶番は。レトナがこんなにバカップルになるとか聞いてないわ……」

「これがー番の力ってーことなのかしらー」


 マデル様にどうなの?って見られたけど、私にも分からないです。

 サロ様とはもうちょっと離れて歩きたいんで。


国名が変なのは仕様です。人名も偶に変なのも仕様です。

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登場人物紹介
多くなって来たので、キャラの確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
[一言] ゴミ箱のガーゴイル。 それだけで何か切ない。 幸せってなんだっけ、てお月様に問いかけたい。
感想一覧
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