金属組織学 第一話
Fe-C系の状態図は実線と点線で示されている、実線はFe-Fe3C系の平衡関係で点線はFe-C系の平衡関係を表す。Fe3Cはセメンタイトで準安定な相。鉄と炭素の合金では炭素はセメンタイトの形で存在する。
Fe3Cはmass%で6.67%Cに相当するが、これ以上のCを含む部分はあまり必要でないため示されないことが多い。
この状態図は3つの部分に分けることができる。上から包晶反応、共晶反応、共析反応である。(これらを不変系反応という)
純鉄(左側の縦軸上)は低温でbcc(フェライト相)であり、911℃以上ではfcc(オーステナイト相)、そして1392℃以上で再びbccへと同素変態する。
さらに細かく言えば768℃に磁気変態点があり、この温度以下では強磁性体、以上では常磁性体になる。ここで結晶構造に変化はない。
オーステナイト相への炭素の固溶限は2.1mass%であるのに対して、フェライト相に炭素は最大0.02mass%しか固溶しない。
オーステナイトは727℃以下では安定に存在せず、共析変態によりフェライトとセメンタイトに分解する。
炭素原子は鉄原子に比較して小さいので、侵入型固溶体を作る。
鉄鋼材料の強度を決める組織は、γ相の領域から冷却する際に作られる。
共析点0.77%Cの組成を通る共析鋼を冷却していくとオーステナイトからフェライトとセメンタイトが同時に析出する。このとき、フェライトとセメンタイトは薄い1mm程度の層になり、これが交互に並んだ組織パーライト組織を形成する。
共析点より炭素量が低い亜共析鋼を冷却すると、最初にオーステナイト相の結晶粒界上にフェライトだけが析出する。温度の低下とともにフェライト相の量が増していく。このとき、フェライト相はほとんど炭素を固溶しないので炭素はオーステナイト相中に濃化していく。
727℃直上に達するとオーステナイト相の炭素濃度は0.77%となり共析変化を起こしてオーステナイトはパーライト組織に全て変わる。
727℃から室温に変化してもフェライト相の炭素の固溶量は変わらず小さいので、727℃の組織と室温の組織はほとんど大差がないと考えてよい。
共析点より炭素量が多い過共析鋼を冷却すると、フェライトではなくセメンタイトが最初に析出する。セメンタイトが増えるにつれオーステナイトは炭素を吐き出していく。




