死期を見る
彼からの視線が、気配でわかる。
私を気にしていることがわかる。
でも、彼の寿命は短いとわかる。
付き合ってしまったら悲しくなる。
彼に少しでも揺らいでしまったら、私は悲しむ事になる。
彼の寿命は後半年。
半年後には彼はもういない。
高校2年生に進級した春のことでした。
1年生の時から彼が私を好きなんだというのは知っていました。
彼は2年生になっても私を好きでいてくれました。
でも、私は付き合いたいとは思いませんでした。だってその頃から彼は寿命が1年しかないって知っていたから。
私は告白してくれる男子と必ず付き合いました。
軽い女だと思ってくれていたでしょうか。
軽い女だと、誰もが思ったでしょう。
でも、私は絶対に自分の体は触らせない。
キスですらさせない。
ガードはシッカリしているつもりでした。
彼はそんな私を好きでいてくれました。
彼はそこそこかっこよくて、明るくて、クラスのムードメーカーでした。
ちょっと変わってる所もありました。
私はほんのちょっとそんな彼に惹かれてました。
彼と話すのは楽しいのです。
彼はいつも笑っているのです。
彼は、女子から人気がありました。
彼は男子とも、仲良く、フレンドリーなんです。
でも、寿命はあと半年。
彼はもう、長くないのです。
彼は私に何度も告白しようとしてました。でも、私には彼氏がいると知っているから、彼は私に告白もできず、ただ、諦めていました。
鈍感な振りも大変なものです。
彼の寿命が5ヶ月になりました。
彼はその頃から学校を休みがちになりました。
彼は休みつつも明るい元気な姿を見せようとしてました。
彼の寿命が4ヶ月になりました。
彼の休む頻度は高くなりました。
それでも彼は明るい笑顔を保ち続けました。
ある日、彼と二人きりになりました。
私は、思わず聞いてしまいました。
「なんで、寿命が短いのに、明るく元気な姿でいようと思うの?」
「皆との記憶は楽しい方がいいだろ……?」
寂しそうな、諦めたような、そんな微妙な笑みを彼は浮かべた。
彼の寿命が3か月になりました。
彼の休みは長期間になりました。
彼は誰も居ないところで一人苦しんでいたのを私は知っています。
病気の苦しさを隠して、彼は学校に来ていました。
彼の寿命が2か月になりました。
彼はもう、学校に来ていません。
彼は病院にずっといます。
私は彼から直接病院の場所と部屋を教えられました。
私は週に1回は見舞いに行きました。
彼の寿命は1か月になりました。
眠っている時間が長くなりました。
たまたま起きているときに話をしました。
「何かクラスの人に伝えたいことはありますか?」
「ないよ。しいて言うなら、誰も、葬式に来ないで欲しいってことくらいかな。君は別だけどね」
「わかりました。みんなと一緒にお葬式に行きますね」
「最後にお願い、かな。ハグとキスをしてもらえませんか?」
「最後なら、私はこれからお見舞いに来なくなりますよ」
「うーん……じゃあ、死ぬ間際でいいかな。とか言って、寿命は多分明後日とかそんなもんなんじゃないかな。だからこれが最後だね」
「いいえ、あなたはまだ2週間生きれますよ」
「何で分かるの?」
「わかるからわかるとしか言いようがないです」
「そっか。ねえ、本当に最後にお願い聞いてもらえないかな」
「そうですね。来週ならいいですよ。来週が一番あなたの体調的にも。来週、病院を抜け出しましょう。デート、なんてどうでしょう?」
「いい、と思う。よかった」
私は彼に少しだけ嘘をついた。
彼が生きていられるのは来週まで。2週間なんて嘘だ。
それでも、私は彼に嘘をつく。




