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一品目

どうも、こんにちは。酷い雨ですね。こんな日に外出するのは僕ぐらいだと思っていましたが、存外そうでもないのですね。貴方はどうしてこんな日に?

ああ、そうなんですか。本屋に行く途中に降られるなんて災難でしたね。ここらに大きな書店はそうそうないですしね。

僕ですか?僕はなんとなく、ですね。こんな土砂降りの中を歩くのが好きなんです。変わってるでしょう?今日はこの薔薇を見つけました。黒くてとっても美しいでしょう?まるで夜を閉じ込めたような……ってごめんなさい。僕は一等黒薔薇が好きでね。話し出すと止まらないんですよ。

ははは、確かに泥塗れになるときもありますけど、こればっかりは止められないんですよね。昔からの癖といった所でしょうか。こう見えて意外と年寄りなんですよ、僕。いくつに見える、なんてありきたりな質問で当たった試しがありません。

早く帰りたそうな顔をしていますね。最近、子供が消える事件が多いから、ですか…。あぁ、そんなに怒らないで下さい。僕にもそんな時代があったなぁ、なんて思っていただけです。それにしても物騒な世の中になったものですね。

おや、雷が酷くなってきたようですね。さて、困ったな……。おや、そんなに苦い顔してどうなさったんですか?……なるほど、服を汚して母親に叱られると。僕も小さい頃によく叱られました。母はいつも厳しく、強く僕を躾けてくれました。だからこそ、今の自分がいるんでしょうがね。

今の貴方の様に身体中に傷を作っていましたよ、母の愛は偉大ですよね。僕はただ、彼女に認められたかった。「頑張ったね」っていって欲しかったんです。

でも、無駄だった。彼女は僕を認めてはくれなかった。だから僕は、彼女と別れることにしたんです。

長い時間話してしまいましたね。なに、そんな悲しい顔をしないで下さい。とうに昔のことです。貴方はお母様のこと、好きですか?

まあ、そんなになるまで殴られていたら答えづらいとは思いますがね。

もし辛いなら、逃げてしまいましょう?僕は

そうやってきました。本当に辛い時、逃げないのは人間だけですよ。

そうですか、そうですか。別に貴方を責める者などここには誰もいません。貴方の好きな様にすればいいのです。僕も手を貸しましょう。

少し待っていて下さいね……。あ、あったあった。これ、とても良い鈴でしょう?この装飾はイカリソウと言ってね、僕の誕生日の花なんですよ。

今から鈴を鳴らすので、ご自分の名前を唱えて下さい。

……ちりん、ちりん、ちりん

それは素敵な名前ですね。これですか?これは今までに出会った方の名前を書いた本ですよ。貴方のような人がこれだけいたということです。きっと会えますよ。

……眠くなってきましたか?さぁ、もう少しです。あとはゆっくり息を吐き出して下さい。


それでは、行きましょうか。


ちりん


***

雨の降る中、どこかの国のどこかの町で今日も鈴の音が鳴る。


今回から三題噺を書いていきます!戒めを込めてシリーズとさせて頂きます……(変更の可能性有)

一人称だけで物語を完結させるような話を書きたかったんですが、なかなか難しいですね……。精進します!

今回のお題「雷雨」「話し」「本」

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