表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/34

決定戦、その裏で(後編)


 午前10時45分、国会では超有名アイドルへ肩入れしていた勢力が一斉摘発されたのだが、与党の第一党に所属する9割近くが逮捕されると言う展開は、何処も報道できない程の衝撃だったという。

【コンテンツガーディアンも、結局は超有名アイドルの芸能事務所と同じように権利独占をする為の組織だったという冗談は――】

【それが現実化したら、海外で検討されている条約と似たような存在になる。一次創作オンリーのコンテンツ流通は一部勢力の暴動を誘発する可能性も――】

【一次創作を自分流に噛み砕き、そこから一次創作を生み出す。それがアカシックレコードの正体と気づいたのは、お前達が先だった。違うか?】

【……あの文章は健在なのか?】

【炎上サイトの管理人は逮捕されたと言うのに?】

【じゃあ、一体誰が文章を流しているのか】

 怪文章が再び流れ始めた事で、ネット上は再び混乱する。仮に止められたとしても、予備システムが起動するように仕向けられていたのかもしれない。

【仮にそうだったとして、我々が二次創作を根絶するような行動を起こすとは限らないだろう。都合の悪い解釈をされ、ネット上では瞬時に拡散、更には炎上というシナリオを望まないのは超有名アイドルを抱える芸能事務所等だろう】

 芸能事務所側のご機嫌をうかがっての魔女狩り、それが現在のコンテンツガーディアンでもあった。

【過去のカルト集団による事件を繰り返し、サブカルチャー文化を無差別テロに結びつける事は――】

【結局、超有名アイドルファンは日本を混乱させ、国会の機能を停止させ、そこから侵略を考えている。つまり、彼らの正体は異星人だったのだ】

【つまり、超有名アイドルファンは別次元から来た異世界人だと言うのか? それこそ話が超越しすぎている】

【一体、何が本当で何が嘘なのか分からなくなっているのは事実かもしれない】

 事態の混乱はネット上のタイムラインを見ても明らかだろう。これらがペンデュラムの影響とは考えにくい。



 午前10時46分、小野伯爵は途中のコンビニに設置されたピットに止まる。

同じタイミングで止まったのは、阿賀野菜月も同じ。

パルクール・サバイバーでは、給水や食事、トイレ等は自由となっている。しかし、その間も時間は止まらないというルールが存在する為、タイミングを見極める事はレースを支配する上でも重要なのだ。

給水や栄養補給もレースを左右するのは間違いないだろう。これが、マラソンや駅伝とも違う、パルクール・サバイバーならではの要素かもしれない。

中にはトイレや怪我の治療では時間が止められるレースも存在するのだが、ランカー王では時間は止まらないのがルールに書かれていた。

唯一のケースが認められるとすれば、未確定要素のバグや不具合の発生、非常事態に限定される。

「小野伯爵……あなたは提督とは名乗らないのか?」

 阿賀野菜月の一言は的を射ている。サバイバー運営とは未関係の提督も存在する以上――。

「自分はサバイバー運営にいた覚えはない」

「しかし、パルクール・ガーディアンには誘われたのではないか?」

 阿賀野から予想外の話が出た。下手に話をそらせる事も出来るが、今度は別の事を追及される可能性は否定できない。

「ガーディアンには誘われたが、その時は断りを入れた」

「同じだな。自分も誘われた事はあるのだが――」

「誘われた? お前の場合は超有名アイドル商法否定の思想を含めて、危険指定されていたのではないか?」

「棄権指定されていた件はネット上の後付けにすぎない。元々はパワーバランスの調整だ」

 きりの良い所で阿賀野は話を終わらせ、コンビニの中へ入って行く。小野伯爵の方はコクピットハッチを開き、深呼吸を始めた。

「どちらにしても、パルクール・サバイバーの動き自体がマッチポンプと言われている点は否定できない。本来であれば、政治的な駆け引きの材料で使われるべきではないのに―」

 小野伯爵がスポーツドリンクをコクピットシートの後ろから取り出して一休みする。阿賀野の方は、たこ焼きにも似たスイーツであるチョコ焼きとコーラのペットボトルを購入し、コンビニ内で食べているようだ。

同じコンビニでは、花澤提督もガジェットの調整を行い、島風も破損したブーメランの交換等を行う。ピットに入るタイミングは自由であり、何度利用しても問題はない。

「ネット上の炎上騒ぎは別の人物が何とかしたみたいね」

 花澤提督と目があった島風が一言。しかし、花澤提督が島風に反応する事はない。

「これで、蒼空かなでの言う雑音を完全にシャットアウトしたサバイバーが行える環境は整った―」

 そして、ガジェットの微調整を終えた花澤提督がコンビニを後にしてコースに復帰する。

「ペンデュラムの効果がなかったのか、それともアカシックレコードへのアクセス権利が消えているのか――」

 小野伯爵はペンデュラムの効果が発揮していない事に対し、何かの不安を感じていた。その不安が現実化する事……それは流血のシナリオを意味しているだろう。

「変えられるシナリオもあれば、変える事も出来ない部分もあると言う事か」

 小野伯爵が悔しがる変えられない事実……それは本人にしか分からないのかもしれない。



 午前10時47分、コースも半分を折り返したタイミングで長期ピットに突入しているガジェットがあった。それは、蒼空かなでのガジェットである。

「ペース配分のミスか――」

 北千住決戦や一部のレースでも専門雑誌で指摘されていた事がある。その一つがペース配分だった。

【神城ユウマを初めとしたアスリート勢とも比べて、蒼空かなでの実力が高いのは確実でしょう】

【しかし、その一方でアスリート勢のような持久力を持っていないのが弱点】

【ガジェットの能力に依存する戦い方ではないのですが、逆に自分の身体で戦う選手でもない。彼の原動力は一体何なのか】

 専門誌でも蒼空かなでの原動力を探ろうとするような記事構成になっている。しかし、蒼空自身はインタビューでも、その辺りを語らない。

「何としても、ガジェットを直さなければ―耐久値が0ではない以上、失格ではない」

 ガジェットの耐久値が0になった場合はリタイヤとなるが、それ以外のケースは問題がないとも言える。

その為、このタイミングでガジェットの修理を行う為にピットへ足を止めたのだ。



 5月28日、時間は午前10時25分まで少しさかのぼる。

ランスロットが草加駅の会場へ向かっている時に、それは起こった。

「結局、炎上騒ぎが終わる事はないのか。いくら規制法案を成立させたとしても、これでは根本的な対策を打たなければ――」

 ランスロットはスマートフォンでつぶやきサイトの動向を眺めながら、ふと思った事を口に出す。

そして、しばらくすると自分宛てに予想外のメッセージが届いたのだ。

【打開策として超有名アイドルファンへのマインドコントロールを掲げようとした勢力がいる。そのフジョシ勢力を駆逐して欲しい】

 新手のスパムと思ってランスロットはメールを削除しようとも考えた。超有名アイドル商法その物がマインドコントロールに近いのでは――とふと何かがよぎった。

「これが真実かどうかは不明だが、指定された場所へ向かってみる価値はありそうだ」

 彼が向かった先とは稲荷三丁目の信号から若干コースを離れた道路である。

丁度、その途中で何かを企んでいたフジョシ勢力がいたのは事実であり、それらを撃破しながら目的地へと向かう。



 午前10時30分頃、何か怪しげな装甲車らしき車両が複数現れる。

自分の姿を見られるのも――と考えたランスロットは商店街のアンテナショップへ入店し、そこでガジェット類を預かってもらう。

「このフジョシ勢力は何処の所属だ?」

「服装から見るに、某スケートやバレー漫画の勢力ではないか?」

「ここ最近は六つ子が人気あると言うが、そちらはフジョシと言うよりは夢小説勢力だな」

「こちらとしては、男性アイドルグループや歌い手、実況者の夢小説勢等の方が都合のよかったのだが―」

「そうすれば、事務所から報酬がもらえると考えているのか?」

「それこそガーディアンの趣旨から大幅に外れる事になる。報酬をもらってフジョシや夢小説勢を狩っていくという事は、海外で運用されようとしている条約と同じ事になる」

「あれこそ、二次創作市場を脅かす存在になるのは間違いない。下手をすれば、一次創作でも――」

 ガーディアン勢と思われる話声が聞こえるのだが、ランスロットに関しては思い当たるような節が見当たらない。

「結局は、超有名アイドル勢とフジョシ勢によるマッチポンプだったと言うのか―AI事件も」

 ランスロットは目的の場所へ向かおうとも考えたが、今の話を聞いて興味がそがれてしまった。

結局は、近くのゲーセンへ向かったのが確認されたが、その後の彼を目撃した人物はいない。



 午前10時40分、大塚提督と遠藤提督のいる草加市内のゲーセン、そこへランスロットが姿を見せたのである。

「どういう風の吹きまわしなの?」

 遠藤提督もランスロットが来たという事に関しては驚きの声を上げる。

「彼を呼んだ覚えはない。偶然、同じゲーセンへ足を運んだだけにすぎないだろう」

 逆に大塚提督の方は落ち着いている。目的に関しては察しないが、目当ての機種は同じ。

「このゲームが、アカシックレコードなのか?」

 大塚提督は驚いていた。機種としてはガンシューティング、ARガジェット形式の物ではなく、一昔前のガンシューティングでもある。

世界観は近未来、内容もランニングガジェットではないが、ARガジェットの様な超兵器を扱うプレイヤーキャラがバトルをするという物らしい。

「アカシックレコードではない。タイトルを見れば、全てが分かるはずだ」

 ランスロットが慌てるな、と言うような表情でゲーム筺体のタイトルが書かれているプレートを指さす。

「ペンデュラム……!?」

 遠藤提督は、その単語に若干の効き覚えがあった。

それは、小野伯爵が持っている第3のアカシックレコードの名称だったからだ。

「彼の持っていたタブレット端末、それに表示されていたのは、このゲームの公式ホームページ……つまり、そう言う事だ」

 ランスロットが、それを言い残すと別のゲーム筺体の方へと向かってしまった。お目当ての機種は音楽ゲームらしい。

「光と闇のアカシックレコード以外は存在しない。つまり、何かの思い込みが全てを歪めてしまっていた……と言う事か」

 今更戻るのはタイムロスになる。仕方がないので、2人はゲーセンの外へ一旦出て、他の提督勢に連絡を取ろうと試みる。

結局、こうした憶測だけの情報に踊らされた結果が――今回の事件の元凶だったと言えるのだろう。



 午前10時47分、蒼空かなでは長期のガジェット調整を配置されたスタッフに任せ、自分はホットコーヒーを飲みながらネット上の記事を改めて確認している。

確認しているのは阿賀野菜月の事である。今までにも何度か遭遇はしているが、彼女が心を開いているようには見えなかったからだ。

彼女が超有名アイドルに対して懐疑的な意見を持ち、更には超有名アイドル商法を駆逐しようと言う雰囲気があるのはネット上でも分かっていた。

しかし、彼女が超有名アイドルに対して敵意をむき出しにしている理由が分からない。

アカシックレコードを確認したり、赤城と加賀の協力で情報を手に入れたりもしたのだが、それでも彼女の正体を突き止めるには至らない。

「一体、彼女は何を企んで――?」

 ネットサーフィンをしていると、阿賀野菜月とは無関係な夢小説サイトを発見する。

そこには、何とサバイバー運営の提督勢をモデルにしたとされる夢小説が投稿されていた。

「このサイトはチェックした覚えもないのに――どうして?」

 蒼空はサイトをざっと調べてみる事にした。提督勢の夢小説以外にも、サバイバーに参戦しているランカーのフジョシが書いたとされるSSや台本小説、ネット掲示板風の小説も投稿されており、それらはオープンで閲覧できるようになっていた。

これらは俗にナマモノとも呼ばれている物で、これに関しては色々な意味でも賛否両論が続いている。実際、超有名アイドルのナマモノ小説が出た事でクレームが出たほどだ。

そのクレームを出したグループこそ、AI事件で存在を抹消されたグループでもあるのだが……一体、これはどういう事なのか?

阿賀野が何を懸念していたのかは不明だが、ひとつだけ分かった事がある。

何か新たな文化が生まれれば、それを曲解して解釈し、それを拡散しようという勢力がいると言う事だ。俗に言うブラックファンも、この分類に当てはまる。

「超有名アイドルだけを合法とした法律の存在、それにフジョシ勢力に夢小説勢……そう言う事だったのか」

 蒼空は何かを確信するのだが、ガジェットの方は修復が完了していない。

レースに復帰しようとしても、修復が完了しなければ動けないのだ。

「これだけ複雑なガジェットが存在するなんて……」

「まるで、クラシックガジェットを思わせる。ランニングガジェットが整備しやすいように設計されていたのは、この為だったのか」

「損傷に関しては中枢にまで達してはいないのが、不幸中の幸いと言うべきなのか」

 メンテナンスを担当している整備班からは、そんな声が聞かれた。

現在、蒼空が使用しているガジェットは特注品なのだが、それが数年前に使用されていた過去のガジェットだと言う事を聞かされたのは最近の事だ。

『そのガジェットはクラシックガジェットと言う物よ。AI事件以前のARガジェットを使用したアトラクションで使われていた話が存在する――最強と言われていたガジェット』

 あの時に加賀は、そう言った趣旨の発言をしていた。

『最強と言われていた』と言うのは、裏を返せば現在の最新型ガジェットに太刀打ちできるかは不明と言う事を意味している。

「しかし、過去のガジェットである以上、最近の物と比べると一段階劣るのは百も承知している。それでも、アカシックレコードに対応したガジェットには、異常なほどの可能性があるとも店員は言っていた」

 蒼空が何かを感じていた頃、ようやく調整が完了したという報告が入る。しかし、完全に復元できたわけではない事も報告された。

「あれを完全復元するとしたら、部品が足りません。修復に関しては問題ないのですが――」

 何か言いたそうなスタッフもいたが、出来る限りの事をしてくれた事に対して蒼空は感謝をする。

「クラシックと言われようが、その力を引き出す事が出来れば――必ず勝てる!」

 そして、蒼空はレースへと復帰した。幸いな事に他の選手が通過したような報告はない。

上手くすれば、レース順位を1位で通過できる可能性もあるだろう。



 午前10時50分、レースに動きがあった時間である。他の選手も補給や整備を行い、それが完了したのが49分と言う事もあるのだが。トップが蒼空で変化がなかったのは49分までであり、順位が変わったのも50分だからだ。

『他の選手も整備が終わり、動き出して早々にトップになったのは花江提督です。それに加えて阿賀野が追跡、その後を島風、小野伯爵、蒼空が王と言う展開です』

 太田さんの実況を聞いた途端、悲報ムードになると思ったのだが、逆に盛り上がった事に驚くのはアンテナショップで観戦していた店長や飛参戦の提督である。

「やはり、そう言う事か。自分の慢心がワンマンレースを生み出した……」

 秋葉原のゲーセンでタブレット端末を片手に提督の一人が観戦している。

そして、自分がしてきた事がレースの面白みを奪っていた事にも気付いた瞬間でもあった。

「チートガジェット未使用でも、あれだけの大差で勝利すれば周囲の反応も変わってくる。リアルチートがサバイバーで歓迎されない状況は、こういう事だったのか」

 単純に超有名アイドルファンのランキング荒らし的な原因でリアルチートを敬遠していたのではなく、実際は一部のランカーがレースを動かしているという流れがテンプレ化した事……それがサバイバーの新規ファンがつきにくくなった原因だった。

一部のランカーによってゲームが面白くなくなるというのは、どのジャンルでも起こる可能性があり、それはサバイバーも例外ではない。

「パルクール・ガーディアンが色々な意味でもマッチポンプとネット上で言われていた理由は、もしかすると別の所にありそうな予感がする。一体、何が起ころうとしているのか?」

 そして、提督はレースの行方を見極めようと考えた。

このレースが、全てを変える為の一歩になるかもしれない、と。



 午前10時51分、突如として中盤を走っていた選手が何者かの妨害を受けたという報告が大塚提督や本部の耳にも入った。

「この期に及んで妨害とは―」

 大塚提督は超有名アイドル勢の仕業と考え、つぶやきサイトの検索をするが、それらしいグループは動いていない。

どうやら、これ以上は超有名アイドルが規制されると考え、下手に動けないというのが本心のようだ。

「ここからでは間に合うかどうか……」

 遠藤提督はゲーム終了後であり、駆けつけようとも考えていた。しかし、それを止めたのはランスロットだったのである。

「ここは彼らに任せてみよう。プレイヤー目線が提督目線よりも気が付く存在があるのかもしれない」

 ランスロットの言う事も正論だった為、2人は状況を見守る事にした。

「サバイバーに乱入は認められない。それこそ、特例でない限りは」

 先頭グループを走っていた島風は、別のルートを算出して襲撃犯の現れた現場へと向かう。島風としては、これによって走行距離数を稼いでスコア狙いと言うのもあるかもしれないが―。

襲撃された現場、それは国道115号線である。先頭グループは既に54号線と言う事を考えると、島風の取った行動はレース順位を無視した物と言える。その後、神城ユウマが島風のいた順位に繰り上がった。

「コンテンツガーディアン?」

 島風が驚いたのは、襲撃犯がコンテンツガーディアンだったからだ。

それに加えて、ガーディアンのアーマーはオーバーボディであり、実際には違う組織のコスチュームだったのである。

「そう言う事、だったのか……。サバイバーと別の勢力がマッチポンプになっているという話自体は…聞いた事があったが」

 ガジェットを一部損傷しているが、佐倉提督は無事らしい。他の一部選手は気絶しており、そこにはヴェールヌイの姿も。

「その通りだ。しかし、我々はコンテンツガーディアンでもあり、コンテンツガーディアンとも違うと言える」

 その後、リーダーと思われる人物のオーバーボディが消滅をする。そこから現れた姿には誰もが衝撃を受けるような正体だったのだ。

「コンテンツガーディアンの正体が、コンテンツ管理勢力だったというのか。ならば、このレースは―何だと言うのか!」

 ギリギリのタイミングで駆けつけた中村提督も驚く、その人物の正体―それは誰もが驚くような存在だった。

《ワレワレハ、アカシックレコード。人類ガ求メテイル、全テノ――技術、権利ヲ持チシ神ノ存在》

 目の前にいる存在、それはアンドロイドにも似たデザインをしたロボットだった。

しかし、唯一違うのはARの様な拡張現実の部分と人間の生身の部分を併せ持った存在だった事。

「アカシックレコード。人類が求めてはいけない存在。それは、非常に危険な――」

 大塚提督には分かっていた。自立型アカシックレコードの出現、それが意味する物を。

《超有名アイドルに我々が求めている理想は実現できない。理想を実現するのは、我々の様なネット出身のクリエイターだ。我々が超有名アイドルの位置になり―》

 アカシックレコードが全てを発言する前に、何者かの大型斬撃がアカシックレコードを切り裂くのだが、実体がない為に手ごたえは全くなかった。

「これが、アカシックレコードの暴走した結果なのか? これが、私の考えていた理想郷であるはずがない!」

 阿賀野菜月の発言、それは裏を返せば彼女が実現しようとしていた事がネットクリエイターによるコンテンツ制覇とも判断出来る物だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ