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暗雨視点   アカイワ村-1

アカイワ村の村長であるカレートンの家に招き入れられた私は、すぐに『マリモン入りの瓶』をカレートンに渡した。カレートンの姿は若々しい男だが、耳が二等辺三角形の様に長い様子を見て、彼がエルフである事を理解させた。


「これだよ、これ!!孫が喜ぶだろうなぁ~。ありがとう!!リグルに戻ったら朝丸にもお礼を言っておいて欲しいなぁ。」


カレートンはかなり陽気な性格らしい。しかし、エルフだからといって若すぎやしないだろうか………と思っていると、カレートンは自己紹介を始めた。


「儂はアカイワ村の村長をしている、MVRC被験者……と言うよりは完了者かな?種族はエルフ、名前はカレートンです。」


……………一人称が非常に似合っていない。エルフだとしても、わたくしやらでやっておいた方が似合うような気もする…………と思っていると、カレートンさんは自分がなぜMVRCに参加していたのかというのを話し始めた。


「なんで儂がここまで若い容姿なのかは、多分植物状態であった時期が長いんだろうと思う。なんせ、儂がVRMMOという世界で目覚めたのは、儂が植物状態になってから30年程たっていたからねぇ…………」

「VRMMOの中では時間が速く進みますからね………。それで、感覚的にはお爺さんにと?」

「そうなるね。まぁ、事故に遭う前はブラックな会社でヒィヒィ言っててボーナスと残業代無しで保険やらで月給が一桁になる事もザラにあったし、仕事急がしすぎて独身のままだったし、住んでたアパートの右隣はヒステリー、左隣はカップルと疲れよりもストレスが溜まりやすかったり、唯一の娯楽だったMMOのデータも気付けば会社の上司の娘に無理矢理譲渡されてたし、事故に遭う直前にも労災出ないって事ばかり気にしたり……。MVRCが終わってからの方が幸せだよ。嫁も娘も孫もいるんだから。それに、儂ってなんだか祖父としての貫禄が出るよね?」


後半は眩しい程の笑顔だったのだけど、前半のブラックな時代を語る時は完全に目が死んでいた。ハイライトが消えていた………というか、憔悴しきるような記憶を呼び起こしてしまったと、物凄く申し訳無いと思ってしまう。


「あ、愚痴みたいになっちゃってゴメンね?お詫びにこの村の採掘場にいつでもどこでも入れる許可証をあげるから。」


MVRC関連や愚痴についてはクエスト的な意識があるのか、何気に凄いものを貰ってしまったような気もする。しかし、貰えるなら貰っておこうと思う。


「まぁ、MVRCで電脳世界に生きるのが幸せって思えるのは、現実世界での生活が普通で、電脳世界で生きる生活が特殊な時代だからなんだよね………」


カレートンの家から出る前に聞いたその言葉を聞いて、私はカレートンが『荒廃世界のMMO』の読者であると確信する。まぁ、あの作品を見た後なら、MVRCへの意見は変わるだろうしなぁ………と思うのだった。

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