暗雨視点 NKMとMPK-7
さて、『NKベアー』にどう対応するかという事だが、逃げるに逃げられないとも思える。『韋駄天』を使えば良いだろうが、背中を見せた時点で襲われるだろう。なのでこの案は却下だ。
なら言霊によるドーピング攻撃をと思っても無駄だ。NKMは『言霊無効』という物を常備しておりドーピングによる攻撃は受け付けてないらしい。当然即死アーツにも対応しており、奇跡を起こすことなど到底不可能という状態になってしまっている。適うものならばあのMPKプレイヤーを一発ぶん殴りたいと思うほどだ。
しかし、そう考えている暇もないくらいに状況は悪化の道をずんずん進んでいる気がする。これまで一回しかまとも攻撃を受けてこなかったのに、あのムカつくMPKのせいで初の死戻りを体験するのか?と思うと無性に腹がたってくる。
だが、そんな事を考えている内に『NKベアー』は私に向かって腕を伸ばす。鋭利な爪を私に向けて、『ガリガリ』という耐久値をごっそり削るMアーツを使い攻撃してきた。このMアーツはタンク系にとって非常に恐ろしいアーツだろうが、今の私にはそれ以上の恐怖感があった。
この時、私が一瞬とか刹那とか言える様な時間で取り出したのが『竜絶の砲盾』では無く耐久値が無限の『全鉄製の薙刀』だったのも耐久値0による破損を防ぐためだった。しかし、Dfが足りずに私の手から『全鉄製の薙刀』は弾き出されてしまい、私のHPも1となってしまう。
これはエクストラスキルの『根性』による作用だろう。本来なら一撃死だった所を間一髪で耐えきったのだ。しかし、カウンター出来た訳でもないため『NKベアー』のHPは満タンのままだ。カウンタースキルがあれば、少しは報復する事が出来ただろうが、生憎無い物は無いのである。
「………………あぁ、こんな事、前にもあったな。いや、随分昔の事かもなぁ…………はぁ…………ナンテモノヲオモイダサセルンダロウナァ?オモイダシタクナカッタヨ。アノトキノワタシハ、タダノケダモノダッタンダカラ…………。」
私はそのまま『NKベアー』を睨みつけた。すると『NKベアー』は怯えたのか、恐怖を感じたのか数秒間動きを止めて半歩ほど後ずさった。しかし、すぐに『ガリガリ』で攻撃をしようとするが…………………遅すぎだと思った。
「………………オソイ、オソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイ!!コンナンジャアワタシニニドメノコウゲキハアタラナイ。ウラムナラ、アノバカナMPKヲウラメ。」
私は、自分の中の意識が切れるのを感じた。ここまで来たら、私は私自身を止めることは出来ない。ここまで自分を抑えきれなくなったのはあの時が最初で最後になると思ったが…………私の意識は飛んでいき、次に気付いた時、私は『NKベアー』が光の粒子となって消えていく頃だと思うのだった。




