暗雨視点 ワープドア-2
PVPのフィールドの第一印象は、岩山が高くて広いなぁ…………という印象だった。いや、小学校の遠足で登るレベルの山なのでそこまで高いとは言えないのだけどね…………。
それに、登山道とかの内部の道が一切無さそうなピラミッド感覚の岩山なので隠れながら闘うという事は難しいだろう。そう思っていると、私の前に2人のビル娘が飛んできた。2人は着陸しても攻撃を仕掛けてこず、1人は余裕ぶった表情をしながら高らかに宣言をしており、もう1人はそれを恥ずかしがって止めようとしていた。
『私の名はファルトアイゼン!!今のあなたには到底適わない、絶対的な空間移動技術を持つ、エリート機体!!そんなエリートな私は温情だからね。あなたが攻撃を仕掛けるまで、私は一歩も動かない!!もちろん、妹のフィルトアイゼンもね!!』
『ね、姉様……………止めましょうよ。絶対怒ってとんでもない事をしてきますよ…………。ぼ、僕は…………僕は逃げますよ。危ないと思ったら避けますからね!!』
どうやらファルトは姉で自分の実力に自信があるのか、余裕ぶった表情を見せる。それに対して妹で僕っ娘のフィルトは自信とかの前に相手に一撃やらせようという言葉を否定しているので、姉の暴走を止めるというキャラかなぁ………と思ってしまう。
「…………じゃあ、始めましょうか。相手が慢心してたおかげで楽に倒せたって事になる程楽な事は無いですし。」
『そちらも随分余裕なようね?でも、私とフィルトのコンビに勝つには、後100年は修行しないと…………。』
私は武器として『全鉄製の薙刀』を取り出してアーツ無しで宙返りを行う。クールタイムが勿体ないし、『逆神楽』を使わない前提なら使う必要性が無いからだ。そう思いながら私は、『逆神楽』とは違うアーツで最初の一撃を放つ。
「『その刃、桜の花の色の殺意をまとい、敵の首を切り裂け』『鎌鼬の刃』。」
すると、フィルトの方はすぐに空間魔法的な物で上空に移動して避け、ファルトの方は額に脂汗、顔は少しの恐怖に怯えた顔だったのだが、結局避けることをせずに直撃し、HPが2割程削れていった…………と思うと桜色となった『鎌鼬の刃』が、桜の花びら散るようにヒラヒラと舞い、ファルトのHPをスタンダートなPVPなら負けまで後1割の位置まで削った。
『……………な、な、な、何でぇぇぇぇぇ!!!』
『姉様…………あれは即死アーツでしたよ。なんで避けなかったんですか。これじゃあまともに戦闘に参加させる事は無理ですね。空間転移で避けながらサポートお願いします!!』
その行動の切り替えの速さは良いのだけど、相手に一撃当てるチャンスと言われたら小手調べの一発じゃなくて本当に倒しにいくアーツで攻撃するという事を、私の使役するビル娘になったら厳しく指導しよう………そう思った私はようやく第一ラウンドのゴングがなったなぁ………と感じるのだった。




