暗雨視点 キャラメイク-1
今回、母さんが手に入れたという新作VRMMOは、『ヴァーチャル・リアル・オンライン』……………通称VROという、とてもシンプルな名前だった。
ログインのために渡されるのはバイザーとVRO用のサーバーの二つだ。まぁ、バイザーを付けるだけで良いのは楽なのだけど、ソフト毎にバイザーとサーバーを揃えなければならないために高価になってしまうのだ。
なぜこんな事になっているかと言えば、サーバーの負担を少しでも減らす為なのだ。VRMMOが流行りだした頃、どこかの会社が別のソフトにログインするはずのプレイヤーを強制的に自社のソフトにログインさせて、課金を促したという事件があったのだ。
その事件は早々に片付けられたが、対策を取るために仕方なくこの様な措置が取られた。より安く楽しんで貰いたいという気持ちもあったが、やむを得ずこうなってしまったのだ。
これまで発売しているVRMMOもソフトと装置がセットとなるために高いが、その分運営側はそのゲームを永遠に稼働し続ける事を約束しているため、一つだけでも十分楽しめる。
この事は、ソフト毎に高価な金を出さなければならなくなったユーザー達へのお詫びの気持ちがあるようだ。高い金を払ったのに、一年近くで運営停止などという事になればクレームがハンパなく来るだろう。
金持ちなら一つ10万の物をいくつも買えないだろうと思うのだから、新規ユーザーを手に入れるためにテレビのCMで一番多いのがVRMMO関連の事になっている。
これまで発売されていたのは、MRO、GSO、RWOの三つだ。ただ、三つともコンセプトの関係で自由度が少しだけ足りないという。
今回私がプレイするのは大々的なコンセプトは無く、ただただ自由さを求めたVRMMOだ。興味を惹かれない訳が無い。私は早速ベッドに寝転がり、ログインをするためにバイザーをかぶった。
別のゲームでは分からないが、このVROではβテスターであっても強くてニューゲームは無い。なぜなら、βテスターでは種族が人間に固定されていたからだ。そして、プレイヤーレベルやスキルレベルもリセットされる。
持ち込めるのは、一部のアイテムとお金だけである。つまり、強さ的にはあまり新規ユーザーと変わらない状態で開始される。
私は、のんびりプレイするつもりなのでそこまでこだわらないのだけどね………と思いながら、ログインを開始した。