暗雨視点 朝の流れ-3
「おっ、真城じゃないか。真城もVRO手に入れたんだな。」
「そうだけど…………って、撫宮………まさか、アナタが教えたの?」
「そうですよ!!あの時の暗雨さんは本当に格好良かったですから!!強面なプレイヤーさんを瞬殺してましたからね。今はその事をここにいる人達に広めていた所で………って、何で頭を抱えているんですか?」
私はあの後に、撫宮の兄か来たからという理由で足早に去ってしまったことを後悔した。VRMMOとリアルの両方で交流を持つというのはメリットは多いが、それはリアルでも仲良しグループだったりする時に限るのだ。
このプレイヤーのリアルネームはこの人だと、悪意やら無知で掲示板などに公言された場合、面倒な事件に巻き込まれそうになる可能性もある。よくあるのはリアルの事を引き合いにした恐喝行為などだ。
私はこのクラスメイト達を信用しているが、他のクラスや学年は、父さんを引き抜きたいなどの理由で私に交際や従僕しろという人間もいる。リアルでもVRO内でも私が屈することは無いだろうが、厄介事は極力避けたいのだ。
「大丈夫よ。真城さん。この子が真城さんのアバターについて話をする前にストップ掛けておいたから。だからこの子の話で分かったのは、真城さんがVROをプレイしている事とプレイヤースキルが高いこと、変なプレイヤーに絡まれたらすぐにGMコールする事だけよ。」
「どうせ偶然その現場に遭遇して気まぐれで助けたんだろ?本当ならGMコール以外の助けなんて来ないからな。真城が撫宮を助けられたのは偶然なんだろ?」
その一言に私は頷いた。面倒事というのは割って入る者が多くなれば多くなるほどややこしくなる物だ。ヒーロー願望や善人思想のプレイヤーが誤解したまま入ると、アミエスの時のように面倒になる。気まぐれに助けたり、ストレス発散と称して助けてみるのが一番楽だと思えてくるのである。
「…………でも二人は良いよなぁ………。撫宮は正規の予約合戦でVROを勝ち取っていたし………。俺達はスポンサー枠で父さん達が貰ってきたのをお情けで使わせて貰うという事なんだぞ………」
「スポンサー枠のVROは今日届く事になっていたから…………。この高校では別のVRMMOやっていたり、ゲームに興味が無かったり、『ビルこれ』やってる人以外は今日からVROを始めるのよ……。スタートダッシュ出来なかった事は残念だけどね………」
父さんの会社も考えたなぁ………。スポンサーになって貰う代わりにVROを贈るけど、令息や令嬢が稼動一日目からやると課金の力で一気に進んじゃうからと、スタートを一日遅らせるなんてね…………。いや、このクラスは無課金勢みたいなガチ勢が多いんだけどね。




