暗雨視点 インビジブル-4
「あ、ゲーム内で話すのは初めてだから私のプレイヤーネーム知らないよね…………。」
そう話すのは、高校の先輩だった勾月 由理という、現在大学一年生の女性だった。つまり、去年は同じ高校に在籍していたという事になる。
「ここでの私の名前は『ヤマト』だから、気軽にヤマト先輩と呼んでね、ティア。でも、ティアはソロでやっていくつもりなのよね………」
「はい………ですが、フレンド登録はしておきましょう。おなじお菓子研究同好会だったので、また談義をしたいんですよ。」
「分かったわ。………にしても、ティアがデイブラックさんの妹だったなんて………それも、ご寵愛されている方の。」
そう言うヤマト先輩と私の関係は『お菓子研究同好会』という同好会に所属していたという関係だ。もっとも、部員は私とヤマト先輩だけで、ヤマト先輩が卒業した後に廃部になった。
……………まぁ、部室も無い部活というか同好会だったので仕方のないことだったのだけど。活動内容も休日にケーキバイキングやらでお菓子について談義するというだけだったし。
しかし、私もヤマト先輩も太ることは無かった。これはヤマト先輩がやっていた『脂肪が全て胸の方に行くにはどうすべきか』という物のために運動もかかさなかった事が良かったのだろう。太りたくは無いので食べた分だけの運動はキッチリと続けているのだけど。
「ヤマト先輩、フレンド登録しておきましょう。お互い、良い店があったら教えあう…………一年前と同じ様にしてみましょう。」
「そうね………。VROの中なら私もティアも時間の都合がつくからね………。最近、お菓子会社を存続させるためにと婿探しが忙しくなっているから、息抜きには丁度良いわ。」
「大変ですね………婿探しも。特に金に目の眩んだ人が来ることが。」
ヤマト先輩の家の会社は、それなりに大手のお菓子メーカーであるので婿に求める条件も色々とある。ヤマト先輩が社長になるにせよ、後継ぎとなる子供は作っておかないといけないし。
「ホント……………ティアが男だったなら何回もアタックしてでもプロポーズしようと思いましたのに………」
「……ハハハ………私のクラスにも似たような意見を言う子がいますよ。そこまで男らしい性格ではないと思いますけどね………。」
そう思いながらヤマト先輩とのフレンド登録を終わらせると、ヴァルツとラグナもフレンド登録をしようと言ってきた。ヴァルツは主にデイブラックを引き渡したりなどで、ラグナは私の尻尾を定期的にブラッシングしたいという事からだった。
二人ともフレンド登録を終わらせた後、私達はクエスト消化の作業に戻るのだった。さっきまでの話の間、『ササンペルシャ』のメンバーとティグレに任せっきりだったので、申し訳ないことをしたなぁ………と思いながら。




