〜序章〜
ぼちぼち更新出来るように頑張ります
俺には一つだけ自慢できるものがあった。
昔から何一つまともに続けられるものが無かったのだが、これだけは十年経った今でもやっている。と言っても特殊な事ではないし他の奴から見れば大した事無いのだろうけど。
小学校に入学したばかりの時、ある一冊の本に出会った。どこにでもありそうな児童書だったと思う。内容は正直あまり憶えていないが、当時の俺には全く理解できていなかっただろうなと親父から聞いている。
それまでは全くと言っていいほど本に興味がなかったと言っていたし、絵本すら手を出さなかったらしい。そんな俺が小学校に入った途端本を読みだしたことに驚きを隠せなかったみたいだ。
親父が言うには、それからというもの手当たり次第本を読み漁っていて、わからない言葉は辞書をひいて理解しようと努力し、時には教えを乞うたみたいだ。
そんな俺の読書マシーンと化した姿を見て、親父は次から次へと本を提供したそうだ。ジャンルは様々たったようで、とくに中学生に上がる頃まではSFものを好んで読んでいたらしい。
…いたらしいというのは、その辺りまでの記憶が曖昧になっているんだよ。本を読み過ぎたせいなのか、はたまた別の理由なのか、何の本を読んだのかいまいち浮かんでこないし、ただ沢山本を読んできたって事しか憶えてない。
それからというもの、親父は俺の記憶障害らしきものを心配してか、本の冊数を制限することにした。その時の俺はとくに読書制限されたことに反発などはしなかったみたいだが。だからここ数年、以前まで月に二十冊ほど読んでいたものを四、五冊に減らしたおかげで、記憶に穴が開いたという事も無く平穏に読書ライフを満喫している。
そんなわけで俺は今日も今日とて己に染み付いた読書を欠かすことなく、今月三冊目となる文庫本を片手に学園までの長い坂道を登っている。
清水川学園高等部二年、宮園創士。
俺の自慢は、長年続けている読書だ。