夜
耳を澄ませば、ほら
夜の吐息が聞こえてくる
夜の鼓動はおそろしいほど
一定のリズムを刻んでいる
人工の灯りがどれだけ
さむざむしいか
夜は臆病な人間にそっと
ささやく
何もかも飲み込んでしまう
闇を広げて
善も悪も等しく覆いつくす
眠る者にはつかの間の黄泉を
眠れぬ者には畏れと快楽を
もたらす
夜は生きている
人々は夜の訪れとともに闇に
飲み込まれ、内部まで墜ちてゆく
朝の薄い光に夜は溶かされ
消えてゆく
朝によって救われた人々は
なに食わぬ顔であくびを一つした