綺麗なお姉さんは好きですか?
「ふーん、だからそいつ追い出そうってワケね」
さすがお姉様、話が早い。
綺麗なお姉さんは好きですか?大好きです!
銀色の長い髪に、白い肌。紫の着物を上品に着こなした彼女は、雪女だ。もとい、お姉さん。小さい頃は、よく可愛がってもらったっけ。遠くに住んでるけど、近くに来る用事があると言うので会いに行ったのだ。
「でもさ、あんたがこうやって外に出るきっかけになってんなら、いいと思うけど・・・別に害ないんでしょ?」
とんでもない!あいつが方々にあることないこと言いふらすせいで、道ゆく妖から意味ありげに微笑まれるこっちの身にもなってくれ。
こないだはこっそり油揚げ食べてるの見つかって怒られるし・・・ってお姉さん?笑い事じゃないよ!
「ごめんね。想像したら、つい。・・・そうねぇ。じゃあ、こっちから追い出すんじゃなくて彼から出て行ってもらえばいいんじゃないの?」
出て行ってもらう?無理無理。出て行ってくれるなら、とっくの昔に出て行ってくれてるもの。
「竹取物語って知ってる?」
「うん。人間の世界のお伽話でしょ?」
千年くらい前に流行ってた。
確か、竹から産まれたかぐや姫が月に帰るまでの話だったはず。確か縁談全部断った挙句何か偉い人からの求婚までおじゃんにして、どんだけ理想が高えんだよ、と誰かが話してるのを聞いた。・・・読んだことないけど。
「そう。簡単な話よ。嫌われちゃえばいいじゃない。だから、かぐや姫みたいに無理難題を吹っかけて『ああ、こいつ無理だ』で思わせたらいいのよ」
「・・・例えばどんな?」
「現実にないもの・・・何でもいいわ。とにかく、絶対手に入らないものを持ってくるように言ってみなさい」
「そんなに上手く行くかな」
「持ってきたら結婚でも何でもしてやると最後に付けたしてやるといいわ。・・・まぁ、どうせ無理なんだから」
オホホ、と口に手を当て高笑いをするその姿はどこからどう見ても悪役だ。
お姉さんにお礼を言って、帰路についた。
絶対手に入らないものか。何がいいだろう。・・・どうせなら、自分の欲しいものにしようか。もしも。あり得ないけど、もし本当に持ってきてしまったら。その時は---。