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さよなら引きこもりライフ

今日も平和だ。


鳥居の上に腰をおろし、見渡す限りの広葉樹の森を眺める。一面秋の色で染まった世界。この世界に季節は一つしかない。もっと言えば、朝とか昼とか時間の概念はないし、そもそも私以外は住んでない。


---私は妖狐だ。

読んで字の如く、狐の妖怪のこと。


妖怪と言う名に相応しく、1000年はゆうに生きているが外の世界へ出ることはほとんどない。


「最近は夜闇が薄くなったからじゃ」ともっともらしい言い訳までして。


いや、別に嘘ではないけど。

正直そんなのどうでもいい。


だって、外に出るのは面倒だ。

それに何だか最近、怖いこともいっぱい起きてるみたいだし。

あれだ。何だっけ、えっと、触らぬ神に祟りなし?


誰かが言ってた。私の状態を今風の言葉に直すと「ひきこもり」というやつらしい。


引きこもり。いいじゃないか。

誰にも迷惑かけないし。え?むしろ妖怪の仕事は人間を怖がらせることじゃないかって?

古い古い。何て言うんだっけ、あれ。そうだ、ほら機械とかいうやつ。鉄の塊走らせたり、空っぽの箱から音が出たり何だりするあれだよ。妖怪よりそっちの方が怖い。鉄の塊が動くとか正気の沙汰じゃないね。

ちなみに、人間の世界では仕事をしていないヤツのことを「ニート」と呼ぶらしい。


人間は大変だなぁ。

ある一定の枠内にはまらないヤツは、社会不適合者として糾弾される。

まぁ、それは人間も妖怪も変わりはない。なので私はこんな生活をしているわけで。

そんなことはどうでもいい。

差し当たり、今の平和な生活が続けられれば問題ないから。


しかし。

そんな『平和』はある日突然、崩れさった---。


「俺と結婚して下さい」


太陽の色をした髪に、夕陽を写し取った瞳。おおよそ、この国の人間とは思えない目鼻立ちがはっきりした容姿。


1000年生きてきた私から見ても綺麗だと思う。あんまり人間に会ったことないけど。


「・・・・・・は?」


幻聴が聴こえた気がした。そして、その手に持っているものはなんだ?薔薇の花束?うわっ、頼むからこっちに近づけるのはやめてくれ。そんなに近づけなくても見えるから!


・・・ちっ、油揚げなら考えてやったのに。

いやいやいや。そうじゃなくて、そもそも何でここに人間がいるの?


「な、ななななぜ、にん・げ・・」


盛大に噛んだ。

そりゃそうだ。千年間、誰とも話さず過ごしてきたんだ。今さら、すらすらと言葉が出るはずもない。

突然の襲来に緊張もあいまって、声も小さくなってしまう。


「面白い仕掛けですね。表にある神社の石を動かしたらこの世界に入れるなんて」


ちょっと待て。

外にあるのは、石じゃなくて岩だ。

ほら、よく神社とかに置いてある苔とか生えてて縄が巻いてある偉そうな岩。邪魔なんだよね、無駄に重いし場所とるし。いっそのこと、漬物石にでもした方がいいと思う。

違う違う。・・・なぜ動かせる?最低でも300kgはあるぞ、あれ。

・・・え?なにそれこわい。


「俺は、イリスといいます。貴女は何と仰るんですか?」


イリス?またハイカラな名前付けやがる。くそう、羨ましいのぅ。・・・は?私の名前?誰が教えるものかそんなもの。ふっ、あまりにも古風過ぎて絶滅危惧種に指定されてますが何か?



何と呼べばいいか分からない、と困った顔をするので仕方なく狐と呼べと言ってやった。

その紅い瞳が悪いんだ。何でそんな悲しそうな目で見てくるの。椛よりも夕陽よりも紅いその色を、綺麗だなんて思ったのは秘密だ。


イリスと名乗った男は魔法使いなのだという。魔法使い?ナニソレ美味しいの?

あれか?陰陽師やら唐の方術士と似たようなものか。私を倒すと躍起になっていたあいつらは引きこもりを始めてからというものさっぱりやって来ない。

さ、寂しくなんかないんだからね!いや、違うか。


・・・で、何の話してましたっけ?


「どうか俺のお嫁さんになってもらえませんか?」


ぞわりと冷たいものが背中を流れ落ちた。汗?いや違う。人一人分の体温が薄い和服の生地を通して伝わってくる。つまり。それが『何』であるかは、考えたくなかった。


「わ、私に触るななぁあああ!」


渾身の力で『それ』を引っぺがした。


--ー私の快適引きこもりライフを取り戻す為の戦いが始まった。




勢いでやってしまいました。

文章力?ナニソレ美味しいの?

気づかれたことでも感想でも、何かございましたらご自由にどうぞ!

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