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河原町
五条大橋と聞けば何を思い浮かべるだろう。
「弁慶と牛若丸!」
その声に皆が注目する。
「学校で習ったかえ?」
一番年長の芸子が、細い櫛の先で頭をかきながら聞く。
「いえ!書物です」
丁稚奉公の晃が嬉々として答えると、芸子たちは、「書物?書物だって!」と大笑いした。
京都御所では、新たに丁稚奉公を雇うことにした。
晃は花と同じ十二歳。
今日のお座敷は出家もなく、気楽な宴であり、芸子たちは準備もそこそこに、新しい丁稚奉公の晃見たさに部屋に集まっていた。
すると突然表から祭りはやしが聞こえてきた。
「ちょっと!やだやだ。八坂がこんなところまでやってきたよ」
芸子の言葉に、皆が窓に集まる。
「八坂が神様立てるって噂だけど」
「何よそれ」
やんややんやと芸子たちが騒いでいると、「お前たち!!いい加減におし!!」と、女将が怒鳴った。
「晃はとっくにお座敷だよ!!」
「あら?」と、部屋を見ると、どこにも晃はいない。
「そろそろ年貢の納め時、みんな、ちったーちった」
先ほどの一番年長の芸子が言うと、他の芸子たちはどたどたと階段を降りて行った。
「あらやだ。足の爪が伸びてるよ。醜いのは顔だけにおしってね」
京都御所から下って三十分、河原町の花街が、まだまだ女たちの笑い声であふれていた頃・・・。




