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あたしを正しくしたい義姉と、されたくないあたし  ~スパダリと結婚させたんだから放っておいて!~  作者: マンムート


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1/1

1 あたし、いきなり襲われました!



では、はじまりはじまり。


 美容院の開店準備ですっかり遅くなってしまった!



 スバルは、夜道が危ないから送ると言ってくれたけど、彼女も、いや、彼女の方こそ、金策だの宣伝だの開店準備だので走り回っている。


 だから、ここで余計な負担を増やしたくなかったんだけど。




 送ってもらえばよかった!



 

 ひとっこひとりいない夜道を歩きながら、連日連夜の徹夜で思わず


「ふわぁ……」


 とあくびをしたら。


 後ろから突然


「〇〇だな!」


 という怒鳴り声がした。


 どっかで聞き覚えのある名前だけどあたしじゃないなぁ、と思って無視。


 こんなイケメンボイスの知り合いいないしね。



「〇〇だな! 調べはついてるんだ!」 


 ともう一度声を掛けられれば、人違いでも空耳でもないとイヤでもわかる。


 〇〇は随分前に捨てた名前だった。



 あたしは振り返ることなく駆け出した!



 どこの誰かは知らないが、その名を連呼する奴はあたしにとってはロクでなし!


 全財産賭けたっていい! あんまりないけど!


 過去からの亡霊。亡霊はえんがちょ!



「待て! くそ! 追え!」


 走りだして気づいた。



 まずい。



 これが遥か昔にあたしが生まれ育った、くねくね曲がった狭い街路に三流娼館がびっしり立ち並ぶ場所だったら、追っ手をまくこともできる。


 だけど、この街は。つーかこの国は。


「ええい! なんでこんなにだだっぴろくて、路地とかないかな!」


 そりゃね。


 だだっぴろい平坦な大陸に、いちから新しく開けたばかりで、どの町もおおざっぱってだけなんだけど!


 道も広くて見通しもよすぎ!



 あたしはまくのを諦めて大通りを目指した。



 騒ぎが起こっても、並ぶ窓はひとつも開かない。


 ほそーく開けてこっちを見てる人は何人もいたけど、誰も助けちゃくれない。



 関わりたくないよね。こんなの。


 最近は治安がよくなったけど、去年くらいは夜歩く人間は襲われてもしょーがない感じだった。


 みんなそれを覚えてるってわけ。



 油断してたあたしのバカ!




 足音が大きくなってくる。


 しかも複数。


 声の主は、複数の部下を引き連れているらしい。


 いきなり走り出したことで僅かに稼いだリードが、一気に減っていく。



 だけど、運はあたしを見捨ててなかった!



 追いつかれる寸前。


 あたしは大通りに飛び出した。


 これで運を使い果たしていませんように――使い果たしてなかった!



 馬の蹄が石畳を叩く、ぱっかぱっかという音がする。



「保安官さん! 助けて!」



 夜の街を騎馬で巡回している騎馬保安官とその部下の警邏さん達がいた!


 あたしの必死の形相に、彼らは足をとめてくれた。


 しかもこの保安官さんは顔見知り。


 ずっと前からひいきにしてくれてるご婦人の旦那さんだ!



「どうした髪結いお嬢さん!?」


「追われてるんです!」


 部下の人が彼に


「この方は?」


「ほら、今度、開店する美容院だかの髪結いさんだよ。うちのカミさんがすごくほめちぎってる」



 あたしは彼らの背後へ飛び込んだ。


 背後から叫び声があがった。



「平民の衛兵ども! 無礼だぞ馬から降りてひざまづけ! さっさと、その女を引き渡せ!」



 保安官さん達は一瞬ぽかんとした。


 何を言われたか判らなかったんだろう。


 なぜなら――追っ手の言葉は、この国の言葉じゃないからだ。



 あの国から来た人間って、この町であたししかいない。


 しかも、あたしはあの国の言葉でしゃべったことないから、誰も聞いたことすらいんだよね。




 騎馬保安官さんは、


「追いはぎども! 武器を捨てろ!」


 だが、追っ手には通じていないようだった。



 追っ手の頭らしき男は、物憂げな溜息をつき、


「言葉が判らないのか……哀れな。それであれば仕方がない」


 男は剣を抜いた。


 その部下達も一斉に抜刀する。


 月光が、白刃をきらめかせた。


「死にたくなければ、そのアバズレを引き渡せ」



 保安官さんは、口元を引き締めると凛と叫ぶ、


「! 構えろ!」


 腰のピストルを引き抜いて構えた。

 

 日頃はワイロとか平気で貰う、ちょっとアレなひとたちだけど、頼もしすぎる!


「威嚇!」


 保安官さんたちは、上空に向かって発砲した。


 静まり返った町に、銃声が轟いた。



 追っ手の男は憐れみさえ帯びた声で、 


「愚かな平民ども、その程度で我ら武人が退くと思っているとはな……銃など一発撃てば終わりだというのに」



 いや、この新しい国には貴族とかいないですから!


 いるのは、金持ちと普通レベルの人と、貧乏人だけです。


 身分はないけど、平等ではないのよね。




「貴様ら愚かなだけでなく運がなかったな! かかれ! 女は命さえあればいい!」



 男とその配下たちが剣を抜いて一斉迫って来た。


 保安官さんたちには、凶悪な強盗団が襲い掛かってきたようにしか見えなかったろう。



 そして、新参者だけの国で、まだ安定しているとは言えない治安。


 その治安を守る者たちの対応は、



「撃て!」


 保安官さんと警邏さん達が発砲した。


 発砲の閃光で辺りは明るくなり。


「笑止!」


 甲高い金属音が連鎖する。火花が飛び散る。


 迫ってくる男たちは、銃弾を剣で弾いた。


 す、すごい手練れ揃い!


 だけど至近距離から連射される銃弾しかも複数を、弾き続けるほどではなかったらしい。


 げ、とか、ぐふ、という声と共に、血しぶきが舞い、突っ込んで来た男たちは、見えない拳に殴られたように吹き飛ばされて倒れていく。


 だけど、頭らしき男だけは、


「剣を盾となし! 盾を剣となす!」


 と叫んで、ひとり銃弾を弾き続けて保安官さんの目の前まで迫って来た。


 至近距離。


 発砲の閃光が男の顔を浮かび上がらせる。


「!」


 顔に何か――


 馬上から閃光がほとばしった。


 保安官さんがショットガンを発砲。


 超至近距離で、拡散しきっていない散弾の塊では、どんな手練れでも弾くことはできない。


 頭らしき男の胸のあたりに、巨大な血の花が咲き、頭くらいの穴をあけた。


 口からも血を吐きだしながら、男は放物線を描いて石畳へ叩きつけられ。


 どう、と倒れたところへ、さらに銃弾が降り注ぐ!


「ば、ばかな……あんな小型の銃で二発以上だと……あ……りえない……」


 追っ手の頭は、息絶えた。


 音が消え、濃厚な火薬のにおいと血の匂いが鼻をつく。



 夜、人けの途絶えた町で。


 ごく普通の女を追い回し、保安官と警邏達にいきなり剣を抜いて来たのだから、こうなっても仕方がない。



 まぁ、あたしもそれを知ってて、いちかばちかで大通りへ逃げ込んだんだけど。



 それにしても誰だろう。


 遥か昔、もうすでに7年前、逃げ出した生まれ故郷の言葉を話していたのは。





 なんか、いやーな、予感がする。




たくさんある作品の中から、拾って読んでくださってありがとうございました。


誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂けたこと幸いでございます。


完結までよろしくお願い致します


少しでも心に残るものがあったり、何かを感じていただけたなら、


評価や感想をいただけるととても励みになります。


別の物語も書いておりますので、もしよろしければ、そちらも覗いてみてください。


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