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第8話『一軍昇格へ——チェックされるものとは? 』

 もののけ野球団の一軍昇格、その条件とは

 裏にあるシリアスな事情はともかくも、試合はほぼ互角の展開だった。球速も技術も比べ物にならないハイレベルと聞いていたんだよな。でもいい試合ができてる、もしかしたら俺たち行けるんじゃね⁉、そんな気がしたよ。そして9回表、点差は2点。追い込まれる。得点圏の走者を返さないと×(ばつ)ゲームだ。

 打順が回ってきた。ここは強打一択だろう。ああ心臓がバクバクする。

 相手投手の球は速い、そして雪屋の影響があるグラウンドの風は読みにくい、だけどいいコースが来た! 打った瞬間、バットの感触が脳に直撃した。

 「いけ!」

 でも、何だかもうひと伸びがない、左翼手に捕球、される? 

 案に相違して打球は左翼手の頭を超える ――同点。観客席から歓声が上がる。

 チームメイトたちが駆け寄り、肩を叩く。

 「さすが真田、元甲子園の★(ホシ)だべ!」

 「まだまだ、俺も負けられねえ」

 やった。そんな手ごたえを感じる。が、同点のままチェンジ。裏であっさり点をもぎ取られ、試合終了。勝利には至らなかった。


 試合後、天狗山監督はにやりと笑った。

 「真田、人間の采配で、チームをまとめられるようになったな。いい試合だったじゃないか。だがな、残念ながら、この試合で一軍昇格候補に挙がったものはいなかったそうだ。」

 褒められた、と思ったところでストンと落ちる。なんでだ、監督今褒めてくれたろう? なんで⁇ 意識せず、膝から力が抜けた。気が付くと床にへたり込んでいた。

 「監督~、なして~、今いい試合だったって言ったべ?」

 「相手、一軍だべよ。球速も技術も比べものにならねぇ、って言ってたべよ。それなのにいい試合できたんだぞ。」

 「んだ、俺らはともかく、采配した真田はや」

 「候補にあがらねばおがしがべよ。」

 仲間たちが監督に食い下がる声が遠く聞こえる。

 俺は甘いのかもしれない、だけど、評価してもらえると思ったんだよ、上の人たちにも。これが試練で、これがよく聞くプロの洗礼ってやつなのか? それとも、この程度でそう思うのさえ、甘々なのか…

 「いや、お前だぢ、一軍が何なのか分がって言ってるのが?」

 監督が語ったのは、俺たちが気付いていなかった、高い壁の話だった。


 一軍、それは多くの観客の前でプレーする者たち。試合中継のカメラも入る。観客には野球好きな妖怪ももちろんいる。しかし、その大多数は人間だ。人間の中には妖怪を化け物としか思わない者が一定割合いる。そこまででなくとも、妖怪の通力はチートでフェアプレーとは相容れない、と一般的には思われている。二軍戦は副オーナー饒速視にぎはやみ氏 率いる幻術部隊に守られてはいるが、カメラや中継の電波にまで幻術は及ばないこともある。正体を見破られれば、好意的に見てもらえるとは限らない。

妖怪を選手として抱えるのはズルだと決めつけられるかもしれない。下手をすればチーム全体までも、球界から追われる可能性も考えられる。

 そう、一軍に上がる、ということは『人間の選手としてプレーしなければならない』ということなのだ。

 人種の壁だって超えるのは難しい。まして種族の壁はどんなに高いんだろう。

 考えてみれば、俺も入寮するまでは妖怪のプロ野球選手がいるなどとは想像もしなかった。入寮して、妖怪のチームメイトと出会って最初の感想が、『ええ? 妖怪だらけのプロ野球チームってどうなんだよ。』だったんだよな、思い出してみれば。

 野球を好きになって、プロに入ろうと思って、でも、学校のクラブ活動でプレーしたこともない、棒切れと手袋とビニールボールで野球ごっこをしたこともない、右も左もわからなくて、やたらめったら自由で、身体能力だけは抜きんでていて… みんなはそんな妖怪たちなんだよなぁ。しかも、俊足もすごいジャンプ力も、魔球かと思うような球のキレやなんかも天然で妖怪の通力を使ってるような気がしないでもない。

 …… 一軍昇格候補入り、とは 特訓と、練習試合とオープン戦でようやく形になり始めたばかりの妖怪選手たちにはもしかしたら、とてつもない壁であるのかもしれないのだった。

                           to be continued


 もののけプロ野球選手の存在意義、とは? みんなこれから大丈夫かな?

して、大成は?

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