第6話『スランプと挫折――そして仲間との絆が生まれる』
夢に至る道は楽ばっかりじゃないらしい。
練習試合とはいえ、初勝利をあげて、チームメイトとの繋がりも少し見えたような気がした。だが、勝利の喜びは長くは続かなかった。翌週からは連敗続き。徐々に指示を信じて動いてくれるようになった仲間ともちょっとちぐはぐになってしまう。ヒットが出ない俺の打撃フォームは乱れ、選球眼も鈍って四球も選べない。焦れば更に守備の判断も鈍る。
「監督~」
と助けを求めて視線を送ればさり気なくスルーされる。横顔に「おれに聞こうとするな」と書いてあるように見えるくらいだ。二軍監督を務めてはいても、ルールを覚えるのが精いっぱいで、試合の采配はおぼつかないらしい、って座敷から聞いた噂は本当だったみたいだ。
あああ~
子どもの頃から野球をして、あの采配は、俺だったら… なんて考えるのって人間だけなのか~
誰だよ、妖怪との混成チームなんて考えたの… →【それはオーナーです】
いや、オーナーって誰…
皿田には
「おめ、人間ってやっぱり弱えんでねが?」
と軽口を叩かれるし、座敷は見ていて悲しくなるほどしょげている。
「俺……何やってんだろう」
こんなんじゃダメだ、どうしよう… ベンチで膝を抱え、ため息をつく俺の肩に、雪屋がそっと手を置いた。
「焦ることないわ。あなたは人間なの。だからこそできるっていうこともあるはずよ」
その言葉に、胸の奥が少し温かくなった。
それでも連敗は続く。このままオープン戦が始まり、公式戦になってしまうんじゃないかと不安が膨れ上がる。
「このまんまじゃ、あんまりげぇ情けねぇ。」
皿田のぼやきに、皆が顔を見合わせる。
「よしやるべ。妖怪の底力を見せてやるべぇ。」
「そうだ、そうだ、やるべし。」
そして次の日から、特訓が始まった。
皿田と水上投球の練習、座敷と俊足バントの連携、雪屋との風の読み方と加減。ランナーがいると想定しての連係プレーにバックホーム。大入道キャッチャーは壁のように構えて、俺の返球をがっちりと受け止めてくれる。
「ガンガン行ぐべ。ここでならなんぼ失敗してもいい。大事なのは、試合で生かすことだべ」
座敷の言葉に、俺は思わず笑った。ああ、そうだよな。──やっと笑う余裕が戻ってきた。
汗と泥でぐちゃぐちゃになりながらも、少しずつチームとして動き出す。勝利をつかむために。他のチームにはない、人間と妖怪のハーモニーが、少しずつ形を作っていく感覚を覚えた。よーし、次こそやってやるぞ。
そしてある夜、特訓の後、俺は寮の屋上で星を見上げた。
「……このチームで、やっていけるかもな」
人間としての自分が、妖怪チームで通用する――小さな確信。みんなが成長すれば、饒速視さまの幻術なしで堂々と闘えるようになる。みんなと一緒に一軍を目指そう、と改めて思えた。
その夜、俺は入団してから初めて、本当に「野球が楽しい」と思った。そう思えることさえ忘れていた日々に苦笑しながら。
――これから、どんな試練が待っていようと。俺はこのチームで成長する。人間だって、妖怪だって野球に向かう情熱があれば、上を目指して戦えるんだ。
to be continued
禍福は糾える縄の如し と言うよ。次はいいことあるかな。




